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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第二章
20/51

第3話 料理するんだよ!~何が出るかな♪~

 調理場から海辺にドーン!と飛び出した。

 瞬間、夏のあっつい陽射しがズバーン!と刺さってくる。


「あぢぃ」


 さっきまで屋内だったから、余計に暑く感じちゃうんだよね。

 そろそろ九月のくせに、元気過ぎるぞ太陽!!

 ショウビーはどうかな?と思って振り返ると、日傘の下でトロピカルな飲料をちゅーちゅーちゅー。


「うわ、美味そう!」


 いいなー、いいなー、のーみたーいなー。


「ちゃんと、お二人の分も有りますわよ」

 とショウビーが言った瞬間には、もうすでに執事の射程圏内。

 気がつけば、すぐそこに花森がいる。

 なんかの歌詞とか、ホラー映画のキャッチコピーっぽい。


 なんにせよ、トロピカルジュースを二つ持った花森さんが、気配も違和感もなく隣に参上!

 片方のジュースを、すっ、とわたしの手の中に納めてくる。

 ばっちりその瞬間を見てたはずなのに、いつの間にか給仕されていた!みたいな感じの自然なサービスなんだよね。

 いっそ忍者になるか、黒子な感じのバスケやるかすればいいと思います、まる。


 んで、集中しまくってるトトッキーにも、そっとトロピカルジュースをちゅーちゅーさせる花森さん。

 あの様子だと、飲まされたことにも気が付いてないかも。

 マジで半端ないんだよ!


 そして、気が付いたら影も形もない花森さん。

 うん。花森さん、マジ花森。

 あのワザが使えれば『食材自身が切られたことに気付かない』的なことも可能じゃなかろうか?!

 となれば、刺身の踊り食いとか、味の落ちない生野菜とか、屠殺したてホヤホヤなのに死後硬直しない柔らか牛肉とか、そんな夢いっぱいのワンダラーランドが広がっちゃうんだよ!!!!


 なんて言ってたら、海のほうから鋭い気配が!

 なにかの魚が針に掛かったのかな?

 目線を向けると案の定、トトッキーが釣り竿を右に左にブンブンしながら、いーとー巻き巻きしてる。


 うーん、あの釣り竿のしなった感じ…なんかいいね。

 うん決めた。後でお皿の上に再現してみるんだよ。


 なんて思ってたら、もう釣り上げたみたい。

 頼むから美味しい魚が来い!

 祈るようにトッキーの右手を凝視。 おっ、アジだ。

 いくつもの料理が頭の中に、ぱっ!と点灯する。


「ナイスだ、ときとき!」


 アジ。なかなか良い物なんだよ。でも今の季節のアジだと、ちょっとパワー不足かな?

 もうちょい早いタイミング、先月とか先々月のアジがいいなー。

 タイムリープ機能のついた釣り竿、誰か作ってくれ!


 とか言いつつも、メインはチヌだから逆に丁度良かったりするんだけどね。

 サイドのインパクトが強いと、なかなか扱いに困るし。


 投げ渡されたアジを柔らかタッチで、ふわっと受け取って水槽にイン。


 釣れた魚を貯める水槽の前にしゃがみこんで、アジが『すいすい~』っと泳いでる姿をルッキング。

 そうすると、パタパタ振られる尾ビレに『おいでおいで』ってされたみたいに、皿に盛り付けられたアジの料理が、何十個かポポポポーン!って頭に降ってくる。

 でもチヌのメニューは決定してるしなー。

 って思ったタイミングで、いい感じの一皿がズバーン!って落雷みたいに頭を直撃っ!


 一品目が完成だね。まだ実物は作ってないけど。


 さてさて、これを作るとなると、あと一、二匹はチヌ以外が欲しいかな?

 なんて考えてたらトトッチの竿が、ぐんっ!と跳ね上がる!!


「いけ!釣り上げろトトっちゃん!!」


 おおー、なんか鋭い雰囲気が醸されてるぅ!

 大物ですか?大物なんですか!?


 ……おやおや?


 なんかテンションがいきなり大暴落したんだよ?

 それまでとは打って変わって、無造作に『ぺい~ん』って竿を上げるトトッチ。


 も、もしかして、アイツですかぁ??

 もはやアトゥム神のスタ◯ドを使わなくても解っちゃう。

 だって、引き上げられた釣り糸の先に、ふぐ付いてるのが見えてるし。


「oh……フグは、フグだけはあかんのやでぇ」


 がくんと膝から崩れ落ちるわたし。

 まさに、ずど~ん…って感じ。

 え、落ち込み過ぎ?

 だってわたし、ふぐ調理師免許はまだ・・持ってないんだよっ!!!

 今は免許取得を目指して、イザショウん家が経営してるふぐ料理店の大将の下で修業中。

 てか正直もう捌けるんだけど、試験を受ける許しが大将から出ないんだよ!

 あのおっさん、スッゲー最強料理人なんだけど、めちゃんこ頑固だからなぁ。


 そんな無免許状態のわたしの前に、ふぐがプラプラぶら下がってるこの状況。


 ふぐは美味しいって分かってるのに、法律がさばくことを許さない!

 めちゃくちゃ腹立つ!!

 法律に『だが断る!!!』って、言ってやりたい!


 そんな衝動と戦っている間に、ふぐは海の中へリリース。

 視界から消えると、ちょっとはスッキリする。

 これって、かなり不思議なんだよね。状況は何にも変わってないのに、気持ちがコロッと変化しちゃう。

 料理で言うと、キライな食べものをすり潰して、気付かないように工夫する的なやつなんだよ。


 そんな感じで関係無いことを考えて、なんとか気を紛らわせていたんだけどね。


 でも、ふぐ地獄はここからが本番だったんだよ……。

 

 

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