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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第一章
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第七話 釣りなのです~トトキ vs チヌ~

 ―――解き放て(おはよう)片吟の瞳(ペンギンサイト)


 魔眼の発動とともに、私の視界は海中へとダイブしました。


 栄養が豊富そうな、ほどよい濁りのある海水。そこに漂う撒き餌と、それに群がるふぐふぐふぐ。

 ここは私の足元付近です。特に用もないので、さっさと釣りのポイントに向かうのです。


 意識を集中させると、すっ、とワープするみたいに移動しました。


 すると早速、視界の中にはふよふよと漂う小さな楕円形たち。ふぐの群れです。

 その数、約10匹。

 あんなにも釣りまくったのに、まだこんなにも群がっていようとは。

 まったく減った気がしません。


 しかし、狭い範囲にこれだけの数がいる光景は何度見ても圧倒されます。

 それは警戒心の強いチヌも同じなのか、他の魚たちが大量にいる間はやって来ない傾向が強いのです。

 そういう場所は人工的に作られた餌場だという事が、経験的に理解できているのかもしれません。


 なので良くあるパターンとして、それまで釣れていた小魚が釣れなくなったところで、突然チヌが釣れ始めるなんてこともしばしば。


 この説が真実であれ間違いであれ、何にしてもふぐたちを散らさなければマトモな釣りは望めません。


 状況を打開するものを探して、周囲をぐるりと見渡します。

 視界に入るのは揺れる海藻群、ふぐ、黒々とした岩、漂う撒き餌、ふぐ、オキアミ、ふぐ、ふぐ、ふぐ。


 目先をちらつくふぐが、なかなかに鬱陶しいのです。



 何度も視界を遮られつつ、あちらこちらを見渡し続ける私の目に、それは飛び込んできました。

 今居る窪みの右手側、傾斜のある岩場の奥に居たのは、何だかのっぺりとした魚たち。


 ボラです。


 川で見かけることも多いですが、沿岸部にも棲息しています。

 淡水と海水の混じり合う汽水域に多く見られる魚なので、こうして海にもいるわけです。

 もし釣り上げたなら陽毬ちゃんが大喜びするでしょう。


 ボラは泥臭くて不味いとよく言われますが、彼らが泥臭くなるのは文字通り泥を食べるせいなのです。

 正確には、水底に堆積した微生物の死骸等を、泥と一緒に丸ごと飲み込んでしまうのが原因です。


 しかし、今回みたいな岩場に棲息しているボラたちは、岩に張り付いた藻などを食べるので普通に美味しいのです。

 まあ、陽毬ちゃんなら泥臭いボラも美味しく調理出来てしまうのですが、それでも素材がいいに越したことはないのです。

 相乗効果でもっと美味しくなりますから。


 そんなボラさん達の登場にテンションが上がりまくりです。

 美味しいのは勿論ですが、彼らはチヌと似たような環境を好むのです。


 ボラある所にチヌあり!


 正直、今日はチヌを釣る事すら出来ないかもしれないと思い始めていました。

 けれど、釣りの経験が囁きます。チヌが釣れるかもしれないと。


 どうやら、釣り上げるための要素が揃いつつあるようです。


 海中に漂う私は最適解を求めて、さらに深く思索の海に沈んでいきます。



「…」



 まずは要素を一つ一つ、細やかに精査。



「……」



 海流、ボラ、満ち潮、地形、ふぐ、撒き餌、紀州釣り、水温、そしてチヌ。



「………」



 平面的に散らばっていた要素が、階層的に浮かび上がって結びついてゆく。



「…………」



 モノクロな要素が一つの形へと組み上がり、それらは次第に色付いて意味を成す…。



「…………解けた」



 ―――おいで、最適解チヌ


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