天使な魔王の彼女と腹黒な聖女の私と
テスト期間の鬱憤をはらすために書きました…!
少し反省してます…。
好き勝手に書いたので、お暇な方、それでもよろしければ読んでみてくださると嬉しいです。
ある日、私は異世界に召喚された。
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その日は、どこにでもある普通の日だった。
私、木之下 志帆は、親友である超絶美少女の桐谷 梨杏と、悪友である斉藤 太一と共に下校中だった。
梨杏は幼稚園のときからの親友で、可愛い・優しい・天然と見事に3拍子揃った癒し系女子。周りにはよく`天使´とか`聖女´とかって言われてるらしい。
太一は、中学のとき知り合ってすぐに意気投合、高校2年生である今現在に至るまでずっと同じクラスという腐れ縁でもある悪友だ。ちなみに、こちらの容姿は平均よりちょっといいくらい。周り曰く、爆弾(私)処理係。
そして私、木之下 志帆は普通の高校2年生。人と違う点があるとすれば、偶に、ごくまれに、周りから`悪魔´とか`魔王´とか言われる程度だろう。
そんな私たち三人は、たいてい行動を共にするメンバーだ。
以前はよく、「なんで天使と悪魔とが一緒にいるんだ。」なんてことを聞いたけれど、少ししめておいたので、それ以来は静かで平和だ。
この三人でいるときは、私がいるので梨杏に近寄ってくる奴も来ないし、何より気楽に話すことが出来る。
他の人といるときは、毒をはかないようにするのが大変なんだよね。
ちなみに、梨杏とよく一緒にいることでやっかみを受けそうな太一だが、そこは私とも同じくらいの時間一緒にいて弄られている、ということで免れている。最近では逆に憐れみもされているらしい。理由はどうであれ、無事で何よりだ。
そんなわけで、私たちはその日も平和に、私が太一をいじり、それを梨杏が止めるといういつものパターンをしながら徒歩で帰っていた。
すると急に、地面に円と変な文字が浮かび上がった。
しかも二つ。
片方の上には私が、もう片方の上には梨杏がいる。何だろうと疑問に思っていると、いきなりその文字が光りだして、吸い込まれていく。
見ると、梨杏も同じ状況だった。
梨杏が危ない!と思い慌てて手を伸ばすが、届かない。咄嗟に太一に目配せをして、梨杏を助けるように目で言う。
すると、太一が慌てて私たちの方へ向かってきた。
よし、そのまま梨杏を助けるんだ!と思っていると、あろうことか、太一は私の方に手を伸ばしてくる。
私の手が掴まれ、何やってんの!?と思った瞬間、私の意識はなくなった。
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そこから先は、よく物語にありがちな王道パターンだった。
ある王国の姫様曰く、「魔王が現れるとのお告げがあった。その魔王を倒してきてほしい。」とのこと。
――それも、私が聖女として。
さすがにこれには笑わずにはいられなかった…。なんかの間違いで一緒に来てしまった太一も爆笑してた。というか、これこそ間違いだろう。普段`魔王´と呼ばれていた私が魔王の討伐って…!隣にいた梨杏と間違えて喚びだしちゃったんじゃないの…!?
でもまぁ、そんな面白そうなことをやらないはずもなく。
王様に多額の慰謝料と報酬を約束させた後、私は他の仲間――勇者(笑)に魔術師(笑)らと共に旅に出た。ついでに太一も連れて。雑用係としてだけどね。
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旅を始めて約1ヶ月。
私たちは、大勢の騎士や王様・姫様を連れたっていた。
向かい側には、大勢の魔物や魔族、そしてただ1人黒いマントを被った人影がみえる。恐らく、あれが魔王だろう。
ぴんと緊張の糸がはりつめている。
そんな中、突然魔王と思わしき人影が動いた。
一斉にその場にいる全員が緊張する中、その人影は勢いよく私に抱きついてきた。
「志帆ちゃーーーーーーーーん!会いたかったよー、寂しかったよー!」と彼女、梨杏は泣き声で叫んでいた。
周囲が唖然とする中、私は彼女の頭をぽん、と軽くはたいて、
「打ち合わせと違うじゃない、梨杏。ひとしきり戦うはずだったでしょ?もう、皆展開についていけずに呆然としてるじゃない。」と文句を言う。
「だって、寂しかったんだもん…。」としおらしく嘆く梨杏。その姿は、とても恐しい魔王なんかには見えない。
まぁ、とっても簡単にねたばらしをしてしまうと、私と太一がこの世界に呼び出されたあの日、彼女もまた呼び出されていたのだ。
しかも、魔王として。
私がこのことを知ったのは約1週間前。
俺は四天王だー、とか痛々しいことを言って襲いかかってきた奴をボコボコにして、情報を吐かせているときに、偶然梨杏のことを知ったのだ。
ちょうど旅にも飽きてきていたし、私は梨杏への手紙をすぐにかいて届けさせた。内容は、一芝居うたないか、というもの。
そして、最終決戦っぽい舞台を整えて、今にいたる。
本当は、一度戦ってから和平案を出すつもりだったんだけどね。
「え、ええと、志帆殿?これはいったいどういう…?」と困ったように勇者(笑)が聞いてくる。
梨杏のほうも、今の状況を尋ねられているようだ。
私たち二人の他に平然としているのは太一くらいのものである。代わりに呆れた顔でこちらを見てくるが。
「彼女――魔王は、私のとっても優しい親友なんだよ。」というと、驚いた顔をしてからすぐに、「うん、あり得る。だってこの人だもんな…。」とぶつぶつ呟きながら後ろへ下がっていった。
ずっと周りが混乱してるのも面倒だし、そろそろ仕上げをしようかな…、と梨杏に目配せをする。
彼女は、息を小さく吸ってから、
「皆さん、聞いてください!私、魔王は人間の皆さんに和平を申し込みます!もうこんな争いは止めませんか?」
しん…と静まった戦場で、彼女の声が反響している。
次の瞬間、両側から戦いの終結を喜ぶ歓声が上がった。
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その後日、各側の重役たちが集まり、会議を開いていた。条約をきちんと決めるためのものだ。公正を期すため、会議の内容は全てリアルタイムで世界中に流れている。
「…して、そちらの条件は何だ?」
とまず口を開いたのは王様だった。
「私たちから提案する条件は、互いに暴力沙汰は禁止すること。これだけです。」
「それに関してはこちらも同じだ。」
というふうにいたって平穏に会議は進み、条約は結ばれた。
すると、会議の終わりにいきなり王様の息子である皇子が立ち上がって、「魔王よ、もしよければ、私と結婚していただけませんか…?友好のしるしともなりましょう。」と梨杏にいい始めた。
あんなやつに大切なあの子をやれるか!と思って止めようとすると、そらよりも先に梨杏が、「申し訳ありませんが、私にはもう…。」と答えた。
うんうん、それでよし。と思っていると、梨杏がこちらへと近付いてくる。
彼女は太一の前で止まって、恥ずかしそうに顔を赤らめてから言った。
「太一君、私は、君のことがずっと好きでした。だから、その…、付き合ってくれませんか…?」
その瞬間、周りの全てがフリーズした。
いち早く復活したのは、本人の太一で、やや困った表情で、
「…えっと、何というか、ごめん。嬉しいんだけど、無理…です。」こんなにも可愛い子からの告白を断るなんて…と、そんな太一の答えを聞いた瞬間、またもやフリーズし、人々は呆気に取られた。
「やっぱり、志帆ちゃんじゃないと駄目なの…?」と梨杏が涙目で聞く。「うん、あいつを止められるのは俺だけだし…。」と頷く太一。
ちょ、なんでそこに私の名前がでてくるかな!?
案の定、周りの視線が私に集まってくる。
「……魔王様を振るなんて…!やっぱり人間なんぞは敵だ!」という梨杏の側近の声。
「志帆殿から太一をとってしまっては、彼女の暴走を止められなくなるのだぞ!爆弾のストッパーを奪おうとするなんて、やはりそなたらは敵か!」という勇者らの声。
…そんなに私は危険人物扱いされていたのか…。
騒ぎが大きくなり、最終的には、
「やはり認められん!戦争だ!!」
………こうして、当人たちの制止をも振り切って、理由が最も愚かな戦いが始まった。ただし、梨杏の必至の懇願の結果、和平条約だけは守られて、武力ではなくチェスなどの頭脳戦による地味な戦いで、傍から見ていればただの異文化交流ではあったが。
まぁ、ある意味平和が訪れたのである。
めでたし、めでたし。