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闇という中に潜むモノ

 月の姿は新月に近い為、その光は弱い。そして、空は曇っている。現実より明るい月を持つ夜のこの世界は、夜らしい暗さを見せていた。

 暗さの中にある光は目立つ。その光はよく見ると微かに揺れている。

 光は周りを照らす。照らされる中には、人影が二つあった。正面に光を受け、背後に影が伸びている。その影はテーブルに座った姿から出来ている。

「テーブルに座るのってお行儀悪いよね」

 後ろめたさを感じない明るい声で台詞が並ぶ。

「そうだね。でも、私は好きだな今のこの状況」

 隣の人影に微笑みを浮かべながら応える。

「今回は結構暗いね……。ちょっと怖いかも」

「ならば、もっと近くに寄ると良い」

「うん」

 腰を浮かして並んで座る距離を縮める。その動作は少し震えている感じがあった。そして、肩と肩が軽く触れあう。

「ふわりと揺れた空気の流れ……君の良い匂いが心地良い」

「そ、そうなの」

「そうなのだよ!」

 魔術師は力強くそう言うと、なぜかうつむいた。

「どうかしたの? ……え?」

 俯いた魔術師の表情をうかがおうと覗いた使い魔は、戸惑いをまとった声を出した。

何夜なんよか前、現実の私は歌を聴きながら自分の心を深く探っていた。……”深く”と”探る”……漢字が似てて、並ぶと読み難いかな?」

「えっと、大丈夫だと思うよ」

 魔術師の声の震え方に意識が向いている中、問いに答える。

「そうか。大丈夫か! ……深く探っていて、久しぶりに見つけたというか辿り着いたというか……。自分の心のかくのようなモノを意識したんだ。そうしたら、涙が流れた」

「大丈夫なの?」

「核のようなモノ……ソレを言葉で表すなら”孤独と哀しみと寂しさと自由と安らぎ”……そんな感じのモノ。私の感覚では、ソレは至福しふくと感じる」

「至福なんだ……。寂しいのに?」

 魔術師が言葉で表した中の一つが、特に疑問感じさせたので聞いてみた。

「ただ寂しいという訳でもない。心の深いところ……闇という中にひそむモノ……。一時期は、いつも側にあったな」

「安らぎ……ソレの側に戻りたい?」

「それも悪くはない……ないけれど、君と一緒にいる方がいいな!」

 右手で顔を覆い、涙を拭きながら魔術師は言う。

「……」

 使い魔は魔術師の台詞が本当なのか、その表情から読み取ろうと静かに見つめる。

「そんなに見つめられると照れる。……ソレを意識するほど君を愛しく思う。ぬぅ、少し意識しすぎたかな……君を抱き締めて離したくないという欲が強く出て来た!?」

 そう言うと座ったまま体を倒し、使い魔の両膝の裏に右手を回して、その両足を抱え上げてテーブルの上に乗せる。

「わぁ! ……急にこんなことするから……ビックリしちゃって」

 使い魔は、魔術師の太ももの上に曲げた両膝が来る位置に座って、両腕を魔術師の首に回している。

「至近距離で見つめ合ってしまうね」

「そうだね」

「見つめ合うのは照れるので抱き締めてしまおう」

 魔術師は使い魔の背中に回した左手に力を込めて自分の方へ抱き寄せた。腰を横に曲げた格好で抱き締められ、少し体勢がキツイかなと使い魔は感じていた。

「これくらいは大丈夫な程度に体は柔らかいから平気だよ」

「照れ照れかと思ったけれど冷静もあったのだね」

 魔術師は地の文が並べた使い魔の心理描写を意識しながら言う。

「ちょっとだけね。……あなたの体、温かい」

 抱き締められ、少し寒さを感じていた使い魔は力を抜いて魔術師に体をゆだねた。

「少し寒いね。毛布を掛けよう……。……この間、熱を出してしまって、それから横になって休みたい病が悪化したんだ。ということで、並んで横になって毛布を掛けるパターンに付き合ってもらえるかな?」

「……あなたは変態だし、エッチなこと考えてそうだけど……。温かそうだし……いいよ」

「よし! ではでは……この好都合な格好からのお姫様抱っこで――――」

 台詞の通りに使い魔を抱っこして、テーブルとストーブの間の少し広いスペースに優しく連れ去る。

「窓の所のコップに入った蝋燭ろうそくはテーブルに移した方がいいかも?」

「そうだね。何かの拍子に倒れたら大変だ。テーブルの真ん中に置こう」

 魔術師はコップに入った蝋燭をテーブルへ移動させ、大き目のダンボールへ向かう。

「毛布はこっちにあるよ?」

「良い感じの大き目のクッションを敷いてその上に横になった方が、背中が楽だと思ってね」

 目的の物を見つけて、使い魔の側へ戻る。

「二つ並べるんだね。なんだかお布団見たい」

「ふっふっふ」

 怪しげな笑い声を出しながら、大き目のクッションを良い感じにセットする。

「背中……良い感じだね」

「うむ。そうであろう! 更に毛布を二枚重ねで温かさ倍増!」

 使い魔の隣に横になりつつ、器用に毛布を二枚重ねて二人で一緒に掛けた。

「温かい!」

「重ねると、結構温かさが増すからね。油断すると眠ってしまいそうだ……」

 魔術師は自分の寝相の悪さを考慮して、テーブルを押してスペースを更に広げた。

「眠っちゃいそうなんだ……」

「まぁ、多少テーブルにぶつかっても蝋燭の火は大丈夫だろうけど……。眠っちゃいそうより、襲っちゃいそうの方がいいかな?」

 テーブルの上の蝋燭に意識を向けつつ、使い魔の台詞をしっかり聞いていいた。

「襲うの?」

「さて? どうしようかな」

 左手を動かして隣で横になっている使い魔の右手を探す。

「捕まっちゃった」

 見つけた使い魔の右手の指に、自分の指を絡ませて捕まえる。

「心の核のようなモノ……ソレを知るからこそ、君との心の触れ合う感覚がより心地良い。そして、ソレに対して至福を感じられるからこそ、より自分を信じられるのかもしれない」

「心の触れ合い……。良いね!! でも、あなたは変態だから、こういう触れ合いも…………。なんでもない」

 使い魔は魔術師の左腕を抱き締めて、少し意識しつつ胸を当てて台詞を並べようとするが、恥ずかしさで言い切れなかった。

「変態じゃなくても、その柔らかさは心地良いと思うに違いない! まぁ、変態なら尚更だけどね!」

 左手を微妙に動かして柔らかさを堪能たんのうする。

「なんだか温かくて眠っちゃいそう」

「ふむ、このまま一緒に眠ってしまうのもいいかもね。……大き目のクッションで頭の高さは、そこそこいいけれど、枕代わりに中くらいのクッションを使おう」

「腕枕欲しいけど、こうして抱き締めてるのも良いし……」

 本格的に眠くなって来ているので、目を閉じたまま思ったことをそのまま言ってしまう。

「それは残念ですな!」

 魔術師は近くにあった中くらいのクッションを二人で並んで枕に出来る位置にセットしながら、微妙に不自然な感じに左腕を動かす。

「ちょっと襲われちゃったかも」

「気のせい、気のせい。これくらいじゃ襲った内には入らないよ」

「そうかなぁ~?」

 眠気も手伝って、使い魔の表情には自然と甘えた色が浮かんでいる。

「蝋燭の火が燃え尽きたら真っ暗になってしまいそうだ。……とりあず、今回も文章並べを手伝ってくれてありがとう!」

「どういたしまして! ……わたしの方が早く寝ちゃっても、変なことしちゃダメだからね」

「寝相が悪くて変なことしてしまった場合はお許しを……」

「……ワザとじゃなければね!」

「何だかよく眠れそうだ」

 魔術師は左腕の状況をイメージしながら目を閉じて眠りに向かう。

「おやすみ」

「うん。おやすみ」

 その後、しばらくすると二人の寝息が聞こえ始めた。

 と、いう感じに今回を終わりにしよう。

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