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ロマンス的な

 空は雨が上がり、月の姿も見える。その姿は満月に近づいていた。

 雨によって作られた水溜りに月の姿が映っている。そこに風が吹いて水面みなもが揺れると、月の姿も揺らいだ。しかし、空にある月は揺らがずにそこにある。

 屋敷の部屋の中に作られたお座敷ざしきには、一つの人影がコタツに沈みながら眠っていた。このコタツは電源が無いので暖房器具としての機能を発揮してはいなかった。

 窓から月の光が差し込むお座敷に何者かの気配が現れた。その気配は姿を現さないまま、お座敷の中の様子をうかがう。

 まず最初に注意を向けたのは、コタツに沈んで眠っている人影にだった。

 沈んでいる人影はうつ伏せで、顔を横に向けている。気配はしゃがむ雰囲気を出した。人影の顔を見ているらしい。

 しばらく魔術師の横顔を見てから、周りに注意を向けた。

 このお座敷で暖房器具として広範囲に影響を与える存在、ストーブも眠っている。その姿を見て、使い魔は今回が意外と寒くないことを実感した。

「……意外と寒くないけど、油断すると風邪引いちゃうよ」

 姿を現した使い魔は、眠っている魔術師に話しかけた。

「…………」

 本当に眠っている魔術師は返事をしない。使い魔自身も返事を期待して話しかけた訳ではなかった。

「ストーブを点けるほどの寒さじゃなさそうだけど、ちょっと寒いよね」

 そう台詞を並べると、使い魔もコタツに沈んでいった。コタツの中で毛布を掛けている魔術師の隣に沈む。魔術師によって温められている毛布の温度を感じつつ、自らも暖房器具になる。

「ストーブが点いてないからだからね。ちょっと寒いから、背中をあなたにくっ付けて温まるだけだから」

 うつ伏せで眠っている魔術師に、自分の背中を少し、くっ付けるように横になる。眠る魔術師の左手が自分のお尻に触れそうな位置にあると気づいたが、そのままで温まる。

「眠ってるし、大丈夫」

 窓を背にする向きで視線の先のお座敷の壁……衝立ついたてを見て台詞を並べる。

「もし仮に触られてもそれは事故だし、わたしは怒らない」

 ひょっとしたら使い魔は事故を期待しているのかもしれない。

「そんなことない! この人は変態だから、わたしもそれなりに合わせてるだけだもん!!」

 使い魔は地の文に対して言い訳? をした。その声は少し大きかったので、隣で眠っていた魔術師は目を覚ました。

「…………おっと、左手が柔らかいものに!? ってしてもいいのかな?」

「意図的にしたら……ダメだよ?」

 目を覚ました魔術師は、地の文を少し読んでから台詞を並べた。それに対して使い魔はそう答える。

「そうか……。事故を装ってサスペンス的に左手に幸せを手に入れてみたいものだ」

「……ロマンス的なのも良いかもしれないよ?」

「ほう! ロマンス的なら意図的も許されそうだ!!」

「…………」

 使い魔は静かに事の成り行きに身を任せようとする。

「しかし、この格好からロマンス的な展開にするにはどうしたものか……。とりあえず、左手が幸せを手に入れるのは少し待ってもらうか……」

 魔術師の台詞を聞いて、使い魔は少し残念そうな表情をした。そして、少し思ったことを聞く。

「わたしのを……その、触ると幸せになれるの?」

「もちろん!!」

 魔術師はうつ伏せで横になったまま、顔を使い魔の方へ向けて躊躇ためらわず言った。

「変態だね」

 使い魔は背中を向けたまま明るく言う。

「否定は出来ないな。……君は、私にとって幸せの宝箱だから問題なけどね! 一人で君が喜んでくれるかな? と考えるだけで箱から幸せがあふれて幸せが広がってしまうよ!!」

「そうなの?」

「本当さ!! ……ロマンス的な感じになったかな?」

「……最後の確認は必要ないかな。そこは減点」

「くっ、照れると余計なことを付け足してしまう癖が出てしまったか」

 魔術師は仰向けの姿勢で顔を絨毯じゅうたんうずめた。

「少しロマンスな感じがしたから……特別だよ」

 使い魔はそのままの姿勢のまま、左手で魔術師の左手を取り、自分の腰の当たりに運んで触れさせる。

「ここにも幸せがあったか!」

 魔術師の左手は幸せを手に入れたらしい。絨毯に顔を埋めながらその感触を記憶に刻み込む。

「刻み込むっていうのはちょっと恥ずかしい」

「ふっ、もう遅い! でも、何度でも手に入れたいと思ってしまうな! ……更なる幸せを見つけたぞ!!」

「え?」

 更なる幸せと言う台詞に、使い魔は少し戸惑う。

「君の着ているワンピースの下にある布の感触を左手は感知した!」

「……ばか!」

 使い魔は少し怒ったふりをしながら、横になった姿勢から座る姿勢に体勢を変えた。

「もっと手の触覚を鍛えねば……」

 うつ伏せのまま、妙なことをつぶやく魔術師を見てから、窓の外へ視線を向けた。

「それほど寒くないけど、眠る時は暖かくした方がいいよ?」

「そうだね。……頭痛がしていて、少し眠れば治るかなって感じで眠っていたんだ」

「大丈夫?」

 使い魔は心配そうに聞く。

「うん。もう大丈夫! 治ったよ。君の幸せのおかげだな」

「……」

 使い魔は照れてしまい、顔を横に向けて隠した。魔術師は、まだ絨毯に顔を埋めているけど。

「頭痛は現実の私の体が、雨に濡れて微妙に冷えたり、少し疲れたりしたからだろう。まぁ、あっちも枕を抱きながら少し眠ったら頭痛は治ったけど」

「現実の方も、風邪を引かないようにね」

「大丈夫だろう。馬鹿だし」

「それでも気を付けてね」

「……馬鹿ということを否定されなかった」

「ごめん」

「なんてね。ちょっと言ってみただけ! ……今回、痛い感じが強くなってるかな」

「わたしは、楽しいけどね!」

「そうか。だけど、これ以上痛くならないように、この辺りで今回を終わりにしよう」

「今回は少し短めだね」

「うむ、文字数が3000に届いていない」

 二人は文字数を見ながら台詞を並べた。

「でも、ロマンスな感じも嬉しかった」

「変態にロマンスが許されるのか心配だったが……。まぁ、今回も文章並べを手伝ってくれてありがとう!」

「どういたしまして! わたしも、なんとなく幸せを感じたかも……」

「幸せを感じてくれたら嬉しいよ」

 魔術師は一度仰向けになって少しコタツから出ると、そのまま上体を起こして、使い魔の隣に座る状況を作りながら言う。

「ふふっ!」

 それに対して笑顔を向ける使い魔に、魔術師も笑顔で返す。

 そして、しばらく話をしてから二人は帰って行った。

 という感じに今回を終わりにしよう。

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