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魔導書の翻訳

 前回のこの文章並べで感情のスイッチを見つけた。そのスイッチを入れると目から水が出る。

 湧いてくる感情をそのままにするのか、抑えるのか……と、この感情のスイッチは似ているけれど違うように思う。

 目から水が出るスイッチは他にもあるけれど、前回見つけたのはたぶん出てくる水の意味が違う。嬉しさからの……水。

 事実、真実……記憶、思い出……その時間には存在しない言葉だけど。……それに対して言われたこともないけれど……それでも、嬉しいと思うことが出来る!

 今の自分から視る過去の自分を、少しは楽にしてあげることが出来た!! さほど必要があることではなかったけれど。自分ひとりでは……たぶん出来ないことだった。

 人との繋がりか……。これは成長なのか、変わったのか。まぁ、どっちでもいいか!!


 空の月は欠けて行き、新月に近づいて行く。

 月の光は屋敷の窓から入り、部屋の中を照らしている。そこには人影が一つあり、動き回っている。その動きは右手に持った何かで軽く叩いている。その他にも右手に持ったものを横に振ったりもしている。

 しばらくの間、あちこちでその動作を繰り返して、最後に窓辺まどべにあるテーブルの上を右手で持った物でその動作をして終わりにした。

 窓から入る月の光に照らされた顔は使い魔だった。そして手に持っているのは埃叩ほこりたたき。

「少し早く来て掃除をしてたんだよ。次は床のき掃除をするね!」

 この部屋には姿を持って自分で意思で動く存在は、今は使い魔しかいない。独り言……という扱いになりそうだけれど、このお話では地の文もキャラの一人として数えられている。

 使い魔はいつの間にか右手にほうき、左手にチリトリを装備している。

「掃除道具はあの角にあるロッカー? みたいなのに入ってたよ」

 地の文が描写するべきところを使い魔が台詞で言う。

「だって、いつの間にかって描写をするから……つい」

 使い魔は自分が地の文の仕事を奪ってしまったと思い、すまなさそうな声で言った。地の文としては、ただ描写を短くしてしまっただけなのだが……。

「……まずはソファーの下から掃除しよう。後回しにすると忘れそうだから!」

 使い魔が一人で動かすには、このソファーは大きくて重い。床とソファーのせま隙間すきまに箒を入れて、まっているほこりを取り除く。

「ちょっと暗くてよく見えない……。これくらいで終わりにしよう」

 ソファーの下を、ある程度掃除してから見える範囲の床を掃き掃除する。しばらく床を掃く動作と、ごみをチリトリに入れる作業を繰り返した。

「この部屋は意外と広いから時間が掛かるね」

 またしても、使い魔は地の文の描写を微妙に補足ほそくする。

「わたしは、しゃべらない方がいい?」

 地の文の文章を並べるのは、一人語りの感じだと現状は意外と難しい。ので、使い魔の独り言がある方がやり易かったりもする。

「そうなんだ!」

 使い魔は一人で喜んでいる。使い魔は独り言が多い。

「地の文さんがいるし……」

 使い魔はしっかりと地の文を認めている。

 チリトリの中のごみを、掃除用具のロッカーの横にあるゴミ箱に捨てて、窓辺のテーブルのところへ向かう。

 テーブルに置いてある大き目のコップの中に火の点いていない蝋燭ろうそくが入っている。使い魔は火を灯したいけれど、火をつける道具を持っていない。

「あの人が来るのを待とう」

 窓辺にあるテーブルに備え付けられている椅子の片方……いつも自分が座るほうへ座って、魔術師が来るのを待つ。

「お掃除したらちょっと疲れたかも……」

 テーブルに突っ伏して目をつぶった使い魔は、しばらくすると眠ってしまった。


 使い魔はゆっくりと眠りから覚めて行く。

 最初は目を閉じたまま雨音を聞いていた。ゆっくりと目を薄く開けると自分の左前方の明かりに気付く。そして、その明かりがテーブルではなく窓辺に置かれている大き目のコップに入った蝋燭ろうそくの明かりだと認識した。

 使い魔は一度目を閉じてから上体を起こして座りなおす。その拍子ひょうしに肩に掛けられていた薄手の毛布がズレ落ちた。と、同時にボンヤリと開けた目で、テーブルを挟んだ前に座っている魔術師を見た。

「やぁ、こんばんは。よく眠っていたね」

「……うん、寝てた。あぁ、えっと、こんばんは」

 ズレ落ちた薄手の毛布を自分の両肩に掛け直して、しっかり目を開いて魔術師を見た。

「早めに来て掃除をしてくれたんだね。ありがとう! 綺麗になった」

「……なんとなくだよ」

 窓際に置いてある大き目のコップに入った蝋燭の位置が窓枠のはし、魔術師の方に置かれている理由について、使い魔は寝起きで頭が上手く回らないまま考えていた。その考えの途中で、自分に掛けられている薄手の毛布を改めて認識した。

「この毛布……掛けてくれたんだね。ありがとう」

「雨も降っていて肌寒いからね。それと蝋燭は、君の眠りをさまたげないようにと思ってだよ」

「そうだったんだ」

 使い魔は自分が眠っている間の魔術師の行動が知りたくなり、地の文を含む文章を読み直したけれど、どこにもそれが無いことに首をかしげた。

「今回、私はここに来てから特に何もしていないよ。蝋燭に火をつけて、君に毛布を掛けて……この魔導書を視ていただけだし」

 魔術師は手に持っている魔導書を少し上にあげる仕草をした。

「……そうなんだ」

 まだしっかり起きていない感じの使い魔は、魔導書にあまり興味を抱かず、自分が眠っている間にどういう風に蝋燭に火をつけて、どんな感じに毛布を掛けてくれたのかが知りたかった……と思っていた。

「そ、そうだったのか。……最初はソファーに運んで毛布を掛けようとしたけど、起こさずに……というのは難しそうだったから、そのまま毛布を掛けた感じだよ。蝋燭の火は……まぁ、普通につけて……君の眠っている横顔をちょっと見たり……ちょっとだけね!」

「寝顔見られた……恥ずかしい」

 少し照れたような表情をしながら、一応満足した使い魔は微笑んだ。

「機嫌は直してくれたかな?」

「?? わたし機嫌悪くないよ?」

「そうか! どちらにしても良かった!」

 なんとなく安心した魔術師は、窓枠に置かれている大き目のコップに入った蝋燭を、テーブルの中央に置いた。

「……眠っているわたしにイタズラしたいとか思わなかった?」

「顔に落書きとか?」

「そうじゃなくて……」

 使い魔は何か意味を込めた視線を魔術師に向ける。

「……寝顔はバッチリ見せてもらったさ!」

「…………さっき、ちょっとだけって言ってなかったっけ?」

「ちょっとだけどバッチリということだよ」

 魔術師は両方の口角を上げた笑みを浮かべながら言った。

「ふーん。わたしよだれは垂れてなかったよね?」

「ふっふっふ! さて、どうかな」

 使い魔は無意識に自分の口元を右手で隠した。

「……垂れてたの?」

「残念ながら……………垂れていなかった」

 あえて少し長い沈黙を作り、使い魔を不安にさせた。

「そ、そうだよね! 全然不安になんてなってないからね!」

「そうか。まぁ、なんていうか……うん、可愛い寝顔だった」

「……………………」

 少し長い沈黙の中、何度か何かを言いかけたけれど結局、使い魔は何も言わなかった。

「そういえば、雨の降り方が少し強くなったね」

「うん」

「今の月の感じはどんなだろう。今は蝋燭の明かりしかないからわからないね」

「うん」

「……雨が止んだね?」

「まだ降ってるよ」

「そうだね」

 今の使い魔に何を言っても『うん』しか答えないかも、と思った魔術師だったけれど、使い魔はちゃんと話を聞いていた。

「ちゃんと聞いてるから大丈夫だよ! ……そういえばその魔導書……えっと、日本語に翻訳ほんやくしてたの?」

 使い魔は以前のお話に出てきた魔導書のことを思い出したながら尋ねた。

「まぁ、そんなところかな。とりあえず……たましいについて」

「魂……。この漢字はかたまりって漢字に似てるね!」

「確かに! でも、今のところ魂と塊について関連することは見当たらない……」

「そっか、残念」

 使い魔は交差させた両手で、肩に掛かっている薄手の毛布をそれぞれ引っ張って、残念さを体でも表現した。そして、魔術師は寒くないか今更ながら気付き、心配になった。

「大丈夫、私は寒くない!」

 地の文を読んだ魔術師は平気さをアピールする為に力強く言う。しかし……。

「でも、わたしだけ毛布にっていうのもなんだか……。ねぇ、ソファーの方に移動しない? 並んで座ればこの毛布で一緒に掛けれるし……」

「そうだね……」

 使い魔は使い魔でナニカの気を出して台詞を言い、魔術師は魔術師で何かドキドキしていた。

 二人は並んでソファーに座り、一枚の毛布を一緒に掛けた。

「……えっと、魂について日本語に翻訳してみて」

「おう! ……と、思ったけれど、現実の私が外が明るくなり始めているのに気付いたようだ。3000文字も超えているし、今回はこれで終わりにしよう」

「……わたしのせい?」

「いや、現実の世界が明るくなってきているからだよ」

「……じゃあ、次の時はこの状況で始められる?」

「……いいよ。次回は今の状況の続きからにしよう。日本語に翻訳した魂について文章を並べるところから……」

「うん!」

「では、今回はこの辺で……。文章並べを手伝ってくれてありがとう!」

「どういたしまして!」

 という感じに今回を終わりにしよう。

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