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窓に映る蝋燭の火

 恋愛というモノがある。それを説明しようとすることは野暮やぼなことかもしれない。そう思うけれど、考え方の一つを文章に並べてみよう。

 恋愛という言葉を見ると”恋と愛”で出来ている。恋と愛……なんとなく似たものにも視える。でも、恋と愛は違うと聞いたこともある。

 恋とはその対象を”知りたい”と望むことだと思う。

 愛とはその対象を”理解したい”と望むことだと思う。

 好きだから恋をして愛するようになる。あるいは恋をして好きになり愛するのかもしれない。はたまた愛したいから恋をして好きになるのか?

 恋で重要なのは”知る”ことよりも”知りたい”と思う気持ちかもしれない。あれこれ詮索するよりも、自然と視せてくれる些細ささいなところから知ることに、大切なナニカがある気もする。

 恋と愛の間には”わかりたい”と望む思いがある気がする。知り、解ろうと思う先にことわりを得る。

 対象の心をことわりを持って(わかってあげられる。それが愛しているなのだろうか……一つの愛のカタチではありそうだ。

 難しく考えすぎだ……好きだから知りたいし理解したいで、オーケーだろう! もっと考えを煮詰める必要があるな……。

 なんだか学生の頃に意味もよく解らず受けていた倫理の授業内容が少し頭をよぎった……フィロソフィア……?


 空の月は細く、その光も少し弱い。もうしばらくすると、新月になるだろう。現実の月よりも明るいこの世界の月も、新月では現実の世界と変らない。

 下の窓枠のほぼ中央に、火の点いた蝋燭ろうそくが立てられている。カーテンは左右に開かれ、それぞれキチンと束ねられている。窓は閉められているが、蝋燭ろうそくと窓ガラスの距離は危なくない程度ある。

 ソファーの向きをいつもと逆にして、窓から外が見える方向に置き直されている。そのソファーには二つの人影があった。魔術師と使い魔は並んで座って窓の外ではなく、蝋燭ろうそくの火と、窓に映る蝋燭ろうそくの火を見ていた。

「と、いう始まり方に今回はしてみたけど……ここに来るまでにいくつか気になる所があった」

「気になる所? ソファーの向き?」

 視線を窓側から魔術師に移した使い魔は、地の文から文章を拾い上げて問いかけた。

「……ほう! 君はそこが気になったか……理由は簡単だよ」

「ただの模様替え?」

「まぁ、そんな所だよ。なんとなくそう思い付いてね……ソファーの向きが変ってた」

「ふーん、なんとなく……つまらない理由だね。でも、窓に映ってる蝋燭ろうそくの火は綺麗」

 窓ガラスには、蝋燭ろうそくの火の他にも、部屋の風景が映っている。そこには魔術師と使い魔の姿もあった。

「本当は……君と窓に映る蝋燭ろうそくの火をを見たかったからだけどね」

 照れくさそうに頭を掻く魔術師をジッと見つめる。

「…………」

「……あの、何か気に障りましたか?」

 真面目な顔をした視線にたじろいで、少し弱気な声で言う。

「今のも魔術なのかなって思って……。本心なのか魔術……呪文なのか考えてたの。どっち?」

「ふむ………………」

 使い魔が問うと、魔術師は腕を組んで考え始めた。

「……」

 使い魔は少し口を尖らせて答えを待つ。

「……思ったことを文字で並べた感じだけど……呪文といえば呪文だね。自分の心の内をコトバで呪文を唱えて君に伝えた……という感じだし」

 使い魔の目を見ながら真面目な顔で答えた。

「……なんとなく解ったよ! でもね、そういう時は”もちろん本心だよ”って答えも…………」

 使い魔は少し自分のセリフが恥かしくなり、途中で沈黙した。

「なるほど参考にしよう! でも、私は魔術師……文章に別の意味をわざわざ隠したりもする。時間が経てば隠された意味を永遠に取り出せなくなったりもするけどね」

「どうしてそんなことをするの?」

「照れ隠しだったり、遊び心だったり……かな。それに、文章は読み手によって受け取り方も違うし……文章に限ったことでもないけど」

「……今回のどこかにも隠された意味があるの?」

「特には無いよ」

「そうなんだ……ちょっと探しちゃった」

「すまんな!」

 魔術師は笑顔で謝った。それにつられて使い魔も笑顔になった。

「そういうのをミスリードって言うんだったっけ?」

「う~ん、どうだろうね」

 再び窓に映る蝋燭ろうそくの火に視線が向けられた。

「あ! そういえば、気になる所って?」

「え? 気になる所……あ、ああ~。……あれだ、ひらがなで文章が続いていると句読点を上手に打たないと読み難いよね」

「まぁ、そうだね」

「今回は、ろうそくをひらがなで並べていた時、ちょっと読み難い? と思って漢字にしたんだ。最初の頃は漢字だった気もするけど、最近はひらがなだったような……」

 魔術師は少し首を傾げながら、思い出そうとするがよく思い出せないらしい。読み直すべきかもしれない……。

「意外と気を使ってるんだね!」

「まぁ……一応ね。でも蝋燭って結構、難しい漢字だ……手で書けるか微妙……たこって漢字に似てる気もするし……だから、ふりがなも付けた」

「読めるけど、書けないっていうのは多いよね! 難しい漢字だと読み方も合ってるか不安になる時もあるし……」

「うん。変換機能はとても優秀だ……手で書けない漢字も扱えるし! でも、変換ミスもある。”かんじ”と打って、すでに漢字と感じと幹事で変換ミスを何度かしてしまった」

「気を付けて!」

「うむ。推敲すいこう前に気付いてしまったから大丈夫さ!」

推敲すいこうは毎回ちゃんとしてるの?」

「…………う、うん」

「……なるほどね」

「料理で例えると、作る途中の味見はしてるんだよ! ただ、完成したのに満足して、じっくり味わってないような感じで……食べてはいるんだよ!」

「完成してから一応は読み直しているってことだね!」

「そういうこと! 解って貰えたようだ!!」

 魔術師は満足そうにニンマリしてうなづいた。

「…………」

 しかし、使い魔は少し心配そうな顔をしている。

「どうしたの?」

「上達を目指すなら……ちゃんとやったほうがいい気がして……」

 遠慮がちに言い難そうに言った使い魔を見て、魔術師はうつむいて目を閉じた。そして一回、上を向いてから言葉を紡いだ。

「確かにそうだ。頑張るよ! 言い難いことを言わせてしまって悪かった。ごめん」

「別に謝らなくても……ただ、そう思っただけで……」

 今度は使い魔がうつむいてしまった。

「まぁ、しっかり推敲すいこうしたつもりでも、誤字脱字はあるから許してくだしゃりましぇ~」

 少し沈んだ空気を変えようと、少し語尾をおちゃらけた。”おちゃらけた”という表現を、最近あまり聞かない……最後に聞いたのはいつだっただろう? と地の文は少し悩んだ。

「ふふ、頑張ってね」

 使い魔は微笑んで答えた。それを見て魔術師も小さく息を吐くように笑った。

「さて、今回は現実の時間で数日をかけているけれど、ようやく3000文字に届きそう……という文字数……でも、そろそろ終わりにしよう」

「……うん」

 少し物足りなそうにうなづく。

「今回もありがとう。文章並べの能力がもっと上達するように頑張るよ!」

「あなたは魔術師だものね!」

「おう! 我が魔術でいずれ世界を征服してやるぜぃ!!」

「征服って……本気?」

「さぁね……。まぁ、心の内をコトバが足りずに伝えられなくて涙を流したくないだけさ」

「?? なんのこと?」

「それも、さぁね」

「……ふ~ん」

「では、また次の時に」

 そう言って手の平を向けたので、使い魔は軽くタッチした。

「うん、また」

 という感じに今回を終わりにする。

 蝋燭ろうそくの火を消し忘れて帰ったので、地の文が風で火を消した。一応、3000文字を超えたようだ。

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