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バックの中身は

 罪には罰が下されると聞いたことがある。あの頃の時間が、つみに対するばつだとするなら重ねたつみの重さはどれ位だったのだろう? あの頃に視えていたソノ時間は永遠だった。永遠の時間を使って償っても許されない?

 償いのカタチは、アノ地獄にて感じるまま思うままに一人で考え苦しむこと……。

 現実でソノつみは咎められるどころか必要なものだけど、ソノつみを抱えられる量は人それぞれだ。現実でソノ罪の名を言ったところで、多くの人は悪いことじゃないと言うだろう。現実でソレが罪とは、ほぼ呼ばれない。

 しかし違う世界では、確かにつみなのだ。もし、あの頃より前にソノつみを懺悔ざんげすることが出来たなら……ばつは下されなかったのだろうか。

 でも、それがつみであることに気付いていなかった。当たり前だと思うことだったので、ソノつみの重さで心が潰れそうなことにも気付けなかった。

 現実ではない世界でのつみ……今の自分もソノつみを重ねていたことを悪いことだと思わない、これからも重ねるだろう。

 幸い、今の我が世界は海……浮力が働き、ソノつみを重ねても昔ほど自由は奪われない。もし、一人だったとしても……。

 ソノつみを重ねつつも自由であれる。それなりの遊び心を片手にしながら……。あの頃よりは確かに強くなった。

 必要とあらばソノつみを遠慮なく重ねよう……ソノつみの名は”真面目”という。


 そこには丸テーブル一つとパイプ椅子が二つあり、少し離れたところに大き目のバックが置かれている。辺りに人の姿をした影はどこにもなかった。

 秋から冬に変わりつつある冷たい風が、退屈そうに描写されたそれ等を撫でた。

 いつもは誰よりも先にいる使い魔が今回はまだ来ていない。退屈そうな風が今度は少し強く吹きパイプ椅子を揺らして音を出す。人の姿がない景色の中、風で物が揺れる描写は寂しさを演出できただろうか。

 今回、三度目の冷たい風は寂しそうに吹く。それに呼ばれたわけでは無いけれど、景色が揺らぎ魔術師が現れた。

 辺りを見回し使い魔の姿がないことに首をかしげ、目を閉じて気配を探る。

「……珍しいな、まだ来ていないのか」

 ちらりと地の文に目を通し、大き目のバックを持って丸テーブルの席に向かう。このバックが登場したのは前々回だった。しかし、前回は活躍の場がなかった。それを回避する為に話題に出やすいであろう場所に移動させる。

「とりあえず、使い魔が来るまでは私一人で喋ることにする」

 なんとなく、会話は交互という感じにしていたけれど、相手がいないと力不足で文章を並べるのに時間がかかりすぎる。そのため、わざわざ魔術師はそう宣言した。

「さすがに前々回だと時間がだいぶ経っている。傷みやすい食べ物系は、このバックからは取り出せないことにしよう」

 このバックに何が入っているのかは、まだ決まっていない。そのため、何が入っていてもおかしくは無い。もちろん制限はあるけれど。

「前々回、青いカーディガンをプレゼントとして出した。置きっぱなしにしたバックに他のプレゼントが入っているというのも、間が抜けている感じがするのでプレゼントは取り出せない」

 バックから最初に取り出したのは、魔術師が使い魔にプレゼントした青いカーディガンが入っている包装された箱だった。

 すでにされている設定では、バックの中には5つ何かが入っている。

「5つか……意外と多いな。どうするかな…………よし! ティーセットにしよう」

 バックの中に入っているのはティーセットに決まった。いや、ティーセットだった。ガラス製のティーサーバー、白いカップが2つ、スプーン、紅茶の茶葉の入った缶。以上の5つが入っていた。

「前々回、これを出さなかったのは、お湯を忘れたから」

 という設定になった。前回、魔術師は遅れて来た。急いでいてお湯を持って来るのを忘れたのだ。今回は……。

「都合よく持ってました! では、さすがに……ダメかな。ん?」

 バックの中身をいくつかテーブルに並べていると、使い魔の気配が現れたことに気付いた。

「…………夜の静寂 足元に影は無く 空を見上げれば月は雲の向こう 空に手を伸ばすと雲は流れ月が出る 月の光で影を見つけ振り向くと君はいた……」

 呪文を唱え終わり、椅子に座ったまま振り返るとそこには青いカーディガンを羽織った使い魔がいた。

「えっと、こんばんは?」

「……ああ、こんばんは。今夜の月は満月を過ぎて、欠けていく月が出てるね」

「うん! 綺麗な月だね! あれ? 紅茶?」

「ああ、大き目のバックで持ってきたのを出したんだよ」

 魔術師はバックの中から全部取り出し、5つ全てをテーブルに並べる。

「ここは冷たい風が吹いて、最近寒いよね。温かい飲み物は嬉しい!!」

「だよな! だが、すまねぇ……お湯を忘れちまった」

「……なんだか、口調が変わってるよ?」

「……」

「…………」

 使い魔は自分が来る前の文章を読み、設定を確認した。

「まぁ、そういうことなんだよ」

「あなたも来る前まで中身を決めてなかったってことだね! 気にしないで。次を期待してるから!! わたしも紅茶に合う何かお菓子を持ってくるよ」

「すまんな。紅茶の入れ方を少し勉強しておこう」

「あ! そういえば前から思ってたんだけどね……」

 喋りながら使い魔も椅子に座った。

「なんだい?」

「何回か前から、わたし達とは違う感じの文章が最初のところに並んでるよね? あれは何か意味があるの?」

「どう思う?」

「う~ん……意味はある気がする。けど、わたし達のお話に関係があるかは、よく分からない。いくつか読んでみたけど」

「ひょっとして、来るのが遅かったのは読んでたから?」

「そんなところかな」

「そうか」

「うん」

「……同じ人間が並べている文章だし、このお話と一緒に並べられている文章。無関係というわけでは無いよ」

「そうだよね、やっぱり。今回のは、真面目という”つみ”について文章が並んでいるけど、この人は本当に真面目なのかな?」

「意外と真面目だと思うよ」

「そうかなぁ? 真面目ならもっと文章を並べる練習をすればいいのに」

「そ、それは、私に言ってる?」

「……なんだか、ややこしいね」

「まぁ、ここはそんな世界だしね……でも、ここ以外でも少し練習はしてるんだよ」

「わたしも、それは知ってる。時々、呼び出されてる気もするし」

「頑張ってはいるんだよ」

「そう……かもね」

「真面目にも色々あるものだよ」

「そうだね! ところで眠い? 地の文さんがさっきから見えないけど?」

「うん。眠い……今回もこの辺で終わりにする」

「なんだか最近、お決まりだね」

「確かにそうだね。今回もありがとう! いい練習になった」

「今回、遅れてごめんね」

「気にすることじゃないさ」

「……んふ」

 使い魔は安心したような笑顔をして姿と気配を消した。そして魔術師も、大き目のバックを持って眠りにつくように現実に戻り、地の文も眠りにつく。

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