修羅場に巻き込まれると居たたまれない!
何やかんやで魔王抹殺を断念したアリーシャは今、敬われるべき国王である父とその支えであるべき母に悩まされていた。
「私の部屋でドメスティックバイオレンスは止めてくださいッ!!」
聞く耳持たず、と言うか聞こえていないようだ。
ほぼアルフォンスの断末魔(途中悦んでいるような声も聞こえた…)で阻止の声はかき消されている。
だがその空気を崩す勇敢な男が立ち上がった。
「この雌狐!!アルを虐めるのは止めろぅ!!」
命知らずな黒い物体、魔王がエキドゥナの足にしがみつき必死に親友を踏みにじらせまいと叫ぶ。
仮にも王様の筈な二人の男にエキドゥナは容赦なく蹴りをいれる。
…随分と金属光沢があるヒールで。
「余計な事をするな!魔王!…と言うかいつの間に回復したんだ?」
「アルの娘、貴様も手伝え!!」
「…………(割と長い間)…………国王、貴方の勇姿は忘れません」
「それでこそわたくしの娘です、アリーシャ」
そんな中部屋の扉がけたたましく叩かれた。
アリーシャの執務室(時計塔)に入れるのは両親を除いて軍直轄の部下と上層の宮廷魔導師だけ…。
部下は軍事強化の為に半数を遠征に行かせている最中なため考えられるのは後者になるが部屋の主は仮にも王女、前もっての通達が義務付けられている。
普段との違いに少々怪訝に思いながらもアリーシャは扉を開いた。