贈り物はよく考えて贈れ!
久々に魔王らしいことをしようと地上へと足を運んだ。
そもそもその思いつきが間違いだったのだ。
煌びやかな室内にうんざりしながらも、逃げ惑う着飾った人間達に自然と笑みが零れる。
「貴方達の言葉では”今日は”かな?国王?」
「…何の用だ」
権力ある者が必死になる姿は実に滑稽だった。
「用など決まっているではないか。私も祝福しに来たのだよ。未来の国を継ぐ者の誕生を」
「くッ、貴様を呼んだ覚えなど無い!」
「おお、怖い。そんな大声では腹の子に響く。王妃も大変だな」
一歩、また一歩と魔王は玉座の二人に近づく。
正しくは王妃に宿っている新しい命に。兵に囲まれようが、槍を構えられようがお構い無しに歩みを進め魔王は笑みを浮かべた。
「受け取れ。私からの”祝福”だ」
ある大陸にとても大きな国がありました。
その国はとても豊かで美しく平和な所です。
しかしある日、国の真ん中に大きな時計塔が建てられました。
民に時間を知らせるでも為ではなく、はたまた都の新しいシンボルでもありません。
その時計塔はひとりの王女を守る為の大きな鳥籠でした。
王女は産まれる前に魔王に恐ろしい呪いをかけられ時計塔から出ることも許されないのです。
王女は独り淋しくその時計塔の中で魔王にかけられた呪いと共に長い時を過ごしました。
十数年が経ち、王女の呪いが解ける時が来ました。
塔の頂上にはこの時計塔の主の王女が住んでいます。
現れた魔王に王女は言いました。
「コレが俺に”強さ”を与えた魔王か」
王女は地面からおどろおどろしく出てくる筈だった魔王の頭を踏みつけました。
「え?ちょ、まッ」
「貴様のお陰で俺がどれほど苦労した事か…」
死神をも凍らす冷たい双眼を向けて軽やかに詠います。
「死んで詫びろ」
その笑顔はとても爽やかで美しいものでした。
…そう、十六年も魔王に呪われ、窮屈な塔に閉じ込められた王女様はそれはそれは立派にグレてしまったのでした。