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俺のアレが硬すぎる件

作者: 原雷火
掲載日:2026/08/31

 地平線の向こうまで続く草原は昔のWindowsのデスクトップのようだった。


 俺は白いベンチに座っている。


 空は青い。


 ふと隣を見ると――


「やあ。君、なろうとか読む派?」


 全身紫系のスーツに身を包んだ、前髪メッシュの青年が微笑んでいた。


「まあ、多少は」

「なら話早いね~! 君、死んだんだ」

「ま?」


 軽い!


「本当に俺、死んだのか?」


 記憶をたぐると、俺は……巨大な餃子が降ってきて、押しつぶされたのが最後の記憶だった。


「死因って餃子?」

「あーね。神様で餃子パーティーしてた余波」

「マジかよ」

「マジッス。だからゴメンってことで、君の元に降臨したって展開」


 この期に及んで嘘も無いか。


 青年は続ける。


「いやー神様の手違いってやつ?」

「餃子降らせたのかよ」

「余興じゃん? 神々の戯れじゃん」

「じゃあ補填してくれるんだろ? 生き返らせろや現世に」


 ホスト風の青年は言う。


「あーね、戸籍とかさ。もう死んだことになってるんで」


 どうやら現世に戻るのは絶望的らしい。


「ってことは、異世界に転生ッスか?」

「いーねー! わかってんじゃん」


 受け入れるしかあるまい。


「つまり、あんた神?」

「俗に言うそれ! マジ飲み込み良くて助かるぅ」


 こんなホスト系Vチューバーみたいな神様、正直イヤすぎる。


「じゃあ俺、ファンタジー系に転生するってこと?」

「そういうこと! じゃあお待ちかねのガチャタイム!」


 ホスト神はトランプを取り出してシャッフルした。


「はい、これからめくってくんで、ストップって言ってね」

「ストップ」

「まだ一枚もめくってないんですけどー」


 どのみち、チート能力が備わるんだろう。


「ま、いっか。はい。じゃあ一枚目ね。手に取って裏返して」


 言われるまま、トランプの一枚目をめくると……。


「ヒュー! UR確定演出じゃん!」


 カードから七色の光があふれ出した。


「まじかよ」

「君持ってるね~!」


 光が止む。カードには「硬くなる」とだけ書いてあった。


「なにこれ?」

「あーね、君は『硬くなれる』んだよ」

「どれくらい?」

「エウティタのZガンダムの楯くらい。つまり無限に」

「乗った!」


 こうして俺は、硬くなるスキルを手にして異世界へと旅立った。




 で、気がつけば森の中。なろうあるあるだ。いや、平均値より酷い。

 全裸なのだ。森の中で。家も無い。帰る場所も不明。

 普通さ、異能を持たせつつ貴族のエケティエンに転生とかじゃん?


 ひどくね?


「うーむ、硬くなるかぁ」


 どうやら俺の意思に合わせて、硬くなれるらしい。しらんけど。


 つい、ホスト神の言葉に乗せられてしまったが、硬くなったとて。である。


「ひゃーっはっはは! 人間がこんなところでなにやってんだぁ?」


 うわあ、ナイフを手にしたゴブリンが四体。FF3かな?


「神に送り込まれたんだよ」

「神だぁ? ばっかじゃねぇの?」


 ゴブリンたちはナイフに舌なめずりする。


 が、襲ってはこなかった。


「つーかさ、こいつ全裸じゃん」

「追い剥ぎできねぇタイプ?」

「金持ってなさそぉ」

「殺す価値なし」


 ゴブリン達は俺に背を向け、森の奥へと帰っていった。


 それが――


 俺のプライドをしこたま傷つけた。


 三年後――


 俺はすっかり硬くなることが上手くなった。


 まず、身体の部分部位を自由自在に硬くできるようになったのである。


 ただし、この能力は衣類を着ていると無効化されるため、基本、全裸だった。


 とても恥ずかしい。死にたい。


 本来であれば顔を隠したいところだが、隠した部分は硬くすることができず実質無防備になってしまうため、俺は顔出しOK全裸マンになったのである。


 ベヒーモスだのバハムートだの、全部硬くした拳でぶん殴った。


 別にするつもりはなかったんだが、生け贄にされた女の子とかも助けた。


 だってさぁ、日本人として生きてきたんだから、知り合っちまったら放っておけないじゃん。


 神も多分、俺がお人好しなのを見越してこのファンタジー世界に送り込んだんだよね。


 で、全裸で魔物や魔族をぶん殴り続けた。


 ホスト神が言った通り、俺、マジでガッチガチです。


 アダマンチウムとかビブラニウムとか、そっち系すら越えて、概念的硬さだったわけ。


 300メート上空から突き落とされても、硬くなったら地面にめり込むだけで済んだ。


 関節部分だけ柔軟性を残しておけば自由自在に動けるし、やばいと思ったら全身硬くなれば、地獄の業火も絶対零度もシャットアウト。


 いや、マジで硬いぞ俺。


 で、呪詛とか即死系に関してだけど、これも神の加護なのか無効。


 矢ってさ、舐められ気味だけどマジで刺さると痛いじゃ済まないんだよね。


 硬くなれば弾けました。


 で、この硬さなんだけど、靱性もあるもんだから、硬すぎて砕ける(ダイヤモンドパーン!)みたいなこともなく、誰も俺を傷つけられない。


 魔王相手にマウントポジションでぶん殴り続けた結果――


「わかった! もう無理! 負けでいいです!」


 こうして俺は王国の危機を救い、魔王を撤退させて勇者になった。


 全国どこでも全裸でいることを認められた。


 マジで恥ずかしい。けど、国のお墨付きだ。


 魔王倒しちゃったもんで、もうやることもないんだけど、人間とはおろかで他国との戦争になればかり出される。


 全裸将軍として、敵国を屈服させ続けた。


 王女とも婚姻である。


 俺の硬くなる能力は夜伽でも大活躍だった。


 正直、王女だけでは収まらず、後宮ができあがる始末。


 うーん、気持ち良いんだけど、俺の股間の硬直化を解きほぐすほどの美女はまだいない。


 正直、硬くなるだけの能力なんてハズレだと思っていたのだが……。


 とりあえず、今は王国中の美女に囲まれて、幸せいっぱいだった。


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― 新着の感想 ―
ぜんらマンか……マントは衣服に入りますか?   そういやZガンダムの盾ってビームサーベルで先っちょ切られてなかったっけ。
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