表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、 転生して路傍の石になっちゃいました。 ~石から始まる、底辺騎士爵の娘の受動的英雄譚。なぜか放っておいてもらえません~  作者: 大童好嬉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/34

第4話 新たな出会い

その後も、いろいろなことがあった。


盗賊に捕らわれ、奴隷として使役されていた子どもとの出会い。


その子――イシッコとの出会いは、私にとって決して忘れられない出来事となった。


やがて、その盗賊団は辺境軍の討伐隊によって討伐される。

そして盗賊たちが溜め込んでいた物資や金品は、戦利品として回収され、討伐に参加した辺境軍の兵士たちへ、正当な褒賞として分け与えられることになった。その戦利品になぜか私(石)も混じっていた。


イシッコがなぜそこにいたのか。

盗賊団がどんな連中だったのか。

そして、私がその場にどう関わったのか――。

そのあたりの経緯は、いずれ改めて語ることになるだろう。



今はただ、討伐を終えた辺境軍の兵士たちが集まり、褒賞が下される、その場に立ち会っている。

それが、現在の状況だった。

そして、箱の中の私(石)。


――うん。

どう考えても、私(石)が相変わらず一番、粗末だ。

そもそも私(石)は宝石なのか?

周囲には、金貨がぎらぎらと積まれ、銀貨がじゃらりと音を立てる。

箱の中には赤い宝石、青い宝石、透明な宝石、緑、紫、そしてよく分からないが高そうな宝石が、所狭しと転がっている。


その中央あたりに、ぽつんと私(石)。

灰色。

グレー。

光らない。

映えない。

……せめて、もうちょっと透明感とかあればよかったのに。

現実の私は、箱の中で最も地味な存在だった。


やがて声が響く。

「盗賊の戦利品は、討伐に参加した者に分配する」

ああ、なるほど。

私なんて、まず選ばれないだろうな。

誰が好き好んで、光らない石を選ぶというのか。

まず、今回の討伐隊の隊長が箱に手を突っ込み、ごそっと、大きな赤い宝石や青、緑、透明な宝石と金貨を掴み取る。


さすが隊長。遠慮がない。

次に名前が呼ばれる。

「宝石大二個、金貨十枚」

いかにも強そうな男が、青と緑の宝石と金貨を受け取って去っていく。

名前。

配分。

歓声とため息。


それが何度か繰り返された後、隊長が箱を指さして言った。

「残りはお前たちだ。順番に来い」

「この箱から、好きな宝石一つと、銀貨五枚を持っていけ」

兵士たちが、ぞろぞろと列を作る。


箱の中を覗き込み、目を光らせる。

もう大きな宝石は残っていない。

だが、中くらいのものや、小ぶりで輝きの良いものは、まだいくつもある。

ちなみに、体積だけなら、私(石)が一番大きい。

……全然うれしくないけど。


やがて、列の中ほどの一人が、箱を覗き込んだ。

目が釣り上がり、いかにも欲深そうな顔をした男だ。

――ああ、嫌な予感がする。


男は一瞬、きらきらした宝石に手を伸ばしかけ、なぜか、私(石)をむんずと掴んだ。

……え?

正直、驚いた。

まさか、私を選ぶ人間が現れるとは思っていなかった。

ほんの一瞬だけ、少し嬉しいとすら思ってしまう。

だが次の瞬間。

「……やっぱやめた」

男は私をぽいっと箱に戻し、別の青い宝石を掴んで、さっさと去っていった。


……うん。

知ってた。

私は内心で、そっと息を吐く。

まあ、あんな目の人に選ばれても、なんとなく落ち着かなかっただろうし。

――なんて、ちょっと負け惜しみだけど。


次の兵士が、箱に顔を突っ込む。

今度は、これといった特徴のない、驚くほど地味で、茶色の髪、茶色の目。

どこにでもいそうで、大人しそうな男だった。

華もない。

迫力もない。

野心も見えない。

その男は、しばらく箱の中を眺めたあと、なぜか私(石)を手に取った。

――はいはい。

どうせ、また戻されるんだろう。

そう思っていると、男は私を、

すり……

すり……

と、指で撫で始めた。


「……とても、すべすべだな」

……!

そこか。

そこを評価するのか。

私の、唯一と言っていい長所。

光らない代わりに、やたら手触りがいいという点。

……なんだろう。


少しだけ、くすぐったいような、落ち着かないような。

でも、嫌じゃない。

男はしみじみと頷き、隊長に言った。

「わたしは、これにします」

隊長は怪訝そうな顔をした。

「そんな、何の変哲もない石でいいのか?」

男は即答した。

「はい。これがいいです」

そう言って、銀貨五枚を受け取り、私をポケットに入れて、自分の隊列へ戻っていった。


こうして私は、金でも宝石でもないのに、何の特徴もない男のポケットに収まった。

布越しに伝わる体温。

規則正しい鼓動。


……ああ。

なんだか、安心する。

この時点で、誰も気づいていなかった。


これが、私とこの男、そしてその家族、そして――この世界が、少しずつ狂い始める第一歩だということに。

神ですら、まだ、それに気づいていなかったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ