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私、 転生して路傍の石になっちゃいました。 ~石から始まる、底辺騎士爵の娘の受動的英雄譚。なぜか放っておいてもらえません~  作者: 大童好嬉


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第2話 人間とはじめての遭遇

次の瞬間。

――ガンッ。

何か金属っぽいもので、私の屈強なボディが叩かれた。


屈強とは言っても、石だから当然だ。硬さだけは自信がある。だが、金属で叩かれると欠ける可能性はある。

そして、急に明るくなった。

眩しい、という感覚に近いものが走る。決して『貧しい』ではない。

同時に、世界に上下が生まれた。


目の前にいたのは――屈強な男だった。

筋肉。

日焼けした肌。

分厚い手。

うん、これは人間だ。間違いない。


影が落ちる。

人生(石生?)で初めて、「見られている」という感覚を意識した。

「……ただの石か?」

声だ。

言葉だ。

なぜか意味も分かる。


そして同時に、胸の奥――

いや、胸なんてないんだけど、とにかく中心あたりが、わずかにざわついた。

返事がしたい、と思った。

「違います、元人間です」とか。

「石ですが意識あります」とか。

せめて、「踏まないでください」とか。


でも無理だ。

口がない。

喉もない。

息もない。

あるのは、石としての沈黙だけ。

影は去り、足音も遠ざかる。

世界が、また静かになる。


その静寂の中で、私は悟った。

誰かに見られている間だけ、

私は――ほんの少しだけ、存在している。

……石の分際で、ちょっと哲学的すぎない?

その男は、私をひょいと持ち上げる。

「……なんだ、これは」

おお。

声だ。

しかも、言葉の意味が分かる。


「すべすべしてるけど……宝石、ではないな」

なるほど。

すべすべ評価、いただきました。

……すべすべ、か。

なんとなく、少しだけ引っかかる。


悪い気はしないけど、妙にしっくりくるあたりが、なんというか――らしい。

「まあ、気になるし……とりあえず採掘しとくか」

そう言って、男は私を箱のようなものに放り込んだ。


――おーい、扱い雑!

いや、文句を言える立場じゃない。石だしな。

それに。

人間がいる世界だ。

私が転生した先は、少なくとも人の文明が存在する場所らしい。

それだけで、妙にほっとする。


しかも、今の言葉が理解できたということは――

たぶん、私には

『言語翻訳・自動理解・世界適応』

みたいな、転生特典がある………のかな? 日本語っていうわけじゃないだろうし。

まあ、どちらにしろ、しゃべれないけどね。なんせ、石だから。

なお、男が軽々と片手で持ち上げたところを見るに、私はそこまで重くないらしい。

この情報は重要だ。今後の希望につながる。


箱の中を見渡す。

――きらきら。

――ごろごろ。

明らかに煌びやかな石。

いかにも硬そうな金属系の塊。

いかにも「価値あります」顔の連中がいる。


正直、岩と石の違いは私にもよく分からない。

でもまあ、たぶん他の人間も厳密には気にしてないだろう。雰囲気だ、雰囲気。

その中で。

私は、どう見ても地味だった。


煌びやかな宝石のような反射した石に映る私の姿。

灰色。グレー。K50。

DIC533くらいかな?

特に光らない。

尖ってもいないし、割れてもいない。


――ああ。

私、

「なんの変哲もない、ちょっと気になるだけの石」

なんだな。

そう理解した瞬間、妙に納得してしまった。


そして、他の煌びやかな石たちと一緒に、どこかへ運ばれていく。

箱が揺れる。

馬車か何かだろう。


こうして私は、自分では一歩も動けないまま、世界に連れていかれることになった。

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