風鈴
ちりん……ちりん……風鈴の音さえ耳障りでうるさく感じる。
部屋の温度計は38度を指してる。
窓を閉めてエアコンを入れた。
お盆には帰ろうかな、とは思う。
でも、今年は北海道も40度を記録した。
3年前、じいちゃんが死んでからは戻っていない。
親不孝だと思うが、どうしようもない。
窓の外で微かに鳴っている風鈴の音に、責められている気がした。
8月が始まり、ばあちゃんが入院したと連絡がきて、お盆に長い休みを取った。
会社の上司には「正気か」と言われた。
千歳空港には、お袋が迎えに来てくれた。
実家までは此処から車で三時間、ただただ田舎の、のどかな風景が続いていく。
帰る途中、ばあちゃんの見舞いに行き、思ったよりも元気な姿を見て安心した。
実家に戻ると時間の止まったような自分の部屋で、
何故だか持って帰ってきた風鈴を、昔と同じ場所につるした。
――翌日
畑仕事を終えた両親が病院へ出かけた後、幼馴染の恵子がスイカを持ってきた。
家族が居ないのをいいことに、久しぶりに彼女を部屋に上げた。
中学生で付き合い、高2の時に初めて彼女を抱いてからは、毎日のように抱いてきた。
遊ぶ場所も何もない田舎である。
他にやることがなかった。
エアコンのない部屋がむせ返るように熱い。
生暖かい風が吹いて、風鈴が湿った音でなった。
「昔、おじいちゃんが縁日で買ってくれた風鈴、まだ持ってたんだ」
そう話す彼女の、少し開いた胸元に汗のしずくが落ちる。
どうしようもない気持ちで彼女の肩に手を伸ばした。
自分が抱かれているのかと思った。
声を押し殺しているが、それほど恵子は激しく求めてきた。
「お父さんさぁ、あんたに帰ってきてほしいべさ」
何故だか、昨日のお袋の言葉を思い出した。
行為の後、ベッドから上目遣いに周りを見ていた恵子が言った。
「この部屋だけは何にも変わらないね」
僕は、彼女の胸元から零れ落ちる汗が、シーツに染みてゆくのを見ていた。
風鈴は湿った音で、ずっと鳴り続けている。
「夕立が来るかもしれないね」
そう言いながら、彼女はシャツのボタンを留めてゆく。
「そうだね」と僕は答えた。
なんだか今の自分も雨に打たれているような気がした。
「僕が呼んだら東京に来る」
「えっ……」
笑って、彼女が言った。
「あんたが、こっちに返ってくるんでしょ」
胸に詰まっていた重たいものが、すとんと落ちた気がした。
ずっと迷っていた……
分かれ道でどちらを選ぶかの答えは、彼女が知っていたようだった。
小説家になろうラジオ大賞、3作目の応募作品です。
R18とR15の境目が分からず、とりあえずR15にしました。
もし、よろしけば、読んでいただけけると嬉しいです。
何卒よろしくお願いします!




