オールドファッション
空いたコマの使い方は人によってさまざまだ。
図書館に食堂、隙間バイトにサークル活動。2コマ空いているもんなら映画も観に行ける。
ただ自分は一号館と二号館にある自販機スペースで時間を過ごすようになっていた。
まず普通の飲み物の自動販売機3つに加えてドーナッツの自販機がある。
そして飲み物もドーナッツも大体は80円で買える。
ミスターなドーナッツよりも20円笑顔が安い。
そしてひとりで使うには広く、ふたりで使うには少し狭いテーブルがある。
図書館は飲食禁止だし、食堂のテーブルは狭い。
なのでここで飲み食いしながら課題をしても誰からも怒られることはないのである。
一号館と二号館では学科が全くと言っていいほど正反対の為、一号館の人間は二号館には行かないし逆もしかり。
安息の地ではある。
ただこの様な僻地の自販機にもちゃんと補充がされているので感謝である。
今日も時間が空いたので狭間のスペースへ。
自販機でコーヒーとオールドファッションを買って、テーブルに向かうと先客がいた。
先客は自分に気がつくとテーブルに広げていた課題をかたずけてくれた。
「よすよす」
「よすよす。今日のドーナッツは何にしたのかい?」
「オールドファッション」
「おお、気が合いますな」
「シンプルイズベストよ」
「だねぇ」
先客は肩を撫でるくらいのミディアムな髪の女性。
自分よりも背丈が2cm高い。
チューバとか拭いてそう。
多分同い年?
「ひとくちちょーだい」
そう言って紙コップに入ったコーヒーを飲まれた。
「にっがぁぁ」
「ブラックですから」
「砂糖もミルクも入れないなんて信じられない」
「ブラックは酸味を感じるものですよ」
「こないだ禿げた教授も同じこと言っていたよ。お揃いだね」
ムカついたので背中の自販機で緑茶を買って混ぜた。
「それ美味しいの?」
「コーヒー単体よりもスッキリするよ」
「ひとくち、おおこれなら飲める飲める」
「自分の飲めよ」
「ごめんごめん、お詫びに一口あげよう」
「同じ味だよ」
最初はここでコーヒーを飲みながら読書をしていた。
けれども彼女と鉢合わせるようになってからドーナッツの消費量が増えた。