91/91
ep.91 壊れた携帯電話
二人だけとなった実家で、父と向き合った。ダイニングには暗い沈黙が流れている。テーブルに置かれた綺麗に逆パカされた電話が、なんとも間抜けに見えた。
「病院からの電話に焦ってしまって」
先に口を開いたのは父だ。
「スマフォはボタン無いから、次もケー電がいいなあ」
今朝、末期癌を患っていた母が亡くなった。今はスマホの買い替えなんてどうでもいい。だけどーー
「その独特な略し方、母さんと一緒だね」
どうでもいいことを話さないと、自分も父も壊れてしまいそうだった。
某小説道場の課題で書いたものを、加筆修正しました。
お題:スマホ




