ep.68 アップルパイ
ep.64の2人です
32にもなって私は非常に困ってる。いろんな意味でとても困ってる。
目の前には「バレンタインのお返しに」と渡された手作りの美味しそうなアップルパイが鎮座している。
この状況の元凶である幼馴染は、目を合わせようとしない。数年ぶりに帰国して、急に呼び出して、なんだこの状況は。
「バレンタイン、お前に何か送った記憶はないが?」
「10年前に煮干しチョコくれただろ」
「あれのお返しには、既にマカロンを貰ってるが」
「……」
「いつ帰国した?」
「昨日」
「お前が作ったのか?」
「おう」
「私が1人で食うのか?」
「食ってほしい」
先月、帰国したこいつに渡したチョコレートのお返しがこれか……。
嬉しい。嬉しいが、これを渡す意味を、こいつはわかっているのだろうか?
「……食うの嫌か?」
「嫌ではないが、その……」
「円周率にかけて、パイには『無限の愛』って意味があるらしい」
なんだ知ってるじゃないか。
「『2人の関係が円満に続く』という意味もな」
続きを聞くのが恥ずかしくて、私も彼から視線を外した。
「俺と結婚して」
「……国際結婚?」
「俺の国籍は日本のままだが?」
だって、ずっと海外赴任してるじゃないか。日本に帰ってこないじゃないか。
「待たせて悪かった。来月から日本配属だから。もう海外には行かないから。……たぶん」
「たぶんかよ」
相手はバツの悪い顔をするが、私は悪くない。だって10年以上も待たされた。
「こんなに食えないから、一緒に食べよ。それからこれからのこと一緒に考えよう。親への挨拶とか必要だろ?」
そう言うと、彼がようやくこっちを見てくれた。
お題:3/14は何の日?
A. ホワイトデー、円周率、国際結婚の日




