ep.65 漱石の名言
「先輩も新聞読むんですね」
大学の図書館でなんとなく新聞のページをめくっていると、同じ言語サークルの後輩に話しかけられた。彼の手には夏目漱石全集が持たれている。
「うん、このコラム好きなんだよね。そっちは?」
「僕は、授業の資料を探しにきてて。どうせなら、好きな作家の作品をテーマにしたいなと思って」
「ふーん、そうなんだ」
後輩は断りもなく隣に座ってきた。正直困る。
「この会社、漱石も契約社員として勤務していた会社ですね」
「そうなんだ、よく知ってるね」
「好きな人のことはとことん調べたくなるんですよね」
「わかる」
相手と共通点があると親近感がわく。逆に、共通点が少ないと仲良くなるのに時間がかかる。ちょうど今の彼と僕のように。
気まずい感じになりたくなくて、今彼と共有しているものを話題に出した。
「今日のこのコラムは母国語について書いてあったよ。言語の対立ってあるんだなと思って。日本にいると実感しづらいけどさ」
「日本にも、アイヌ語や沖縄語、与那国語とかありますよ。先輩、無知すぎません?」
突然のディスに返答に詰まる。この子の余計な一言が多いところが苦手なんだよな。
なめられてるのかな? そう思ったら、チクリと反撃したくなった。
「そうなんだ。ところで、智に働けば角が立つって言葉、知ってる?」
お題:2/21は何の日?
A. 漱石の日、日刊新聞創刊の日、国際母語デー




