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ep.26 影の声
『そろそろ、僕が主役になってもいいんじゃない?』
目の前にいる男から話しかけられた。
『いい加減、僕に代わったら?』
やはり声は男の方から聞こえる。だが、その声の主はこの男ではない。ここには俺とこいつ以外には誰もいないはずだ。
主が不明の声はずっと俺に話しかけている。こんな場所から早く帰りたい。俺はさっさと仕事を終わらせることにした。
目の前には怯える顔をした男。何かを悟っているようにも見える。かまわず、俺は男を崖の下に突き落とした。
『あーあ、僕としたことが。最期の最期で声を届ける人間を間違えちゃった。』
海の底の方からそんな声が聞こえた。




