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【二部開始】魔王と勇者のカスガイくん~腐男子が転生して推しカプの子どもになりました~  作者: 森原ヘキイ
第二章 カスガイくんは、新居で一緒に暮らしたい

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2-5 パパというものがありながら、ほかのパパと仲良くするなんて!

 玄関ホールの最奥にある扉をユラが蹴り破る――寸前で、ぱかっと自動的に開いたので、そのまま三人仲良く一階内部へと突入した。

 広々とした果てしなく長い廊下を挟んで、左右にいくつもの部屋が並んでいる。ホテルなどでもよく見る光景だが、そのひとつひとつが比べ物にならないくらい大きい。さすがはヴェルサイユ宮殿(仮)だ。手当たり次第にじっくりと拝見したいところだが、すぐに追いかけてきたぬいぐるみたちに行く手を阻まれてしまった。


 けれどマオの展開するスノードームによって、彼らはことごとく自滅していく。ぼとぼとと床に落ちた氷のマスコットを見て「これはいかん!」とでも思ったのか、屋敷にいる何者かは別の妨害策を追加してきた。

 

 なんと、床からにょっきり壁を生やしたり、床にぽっこり落とし穴を作ってきたのである。

 大きな壁で進路を塞がれてしまえば、それ以上は通れない。落とし穴だって、廊下の幅いっぱいに作られてしまえば進みようがない。普通ならそうだ。普通なら。

 

 でも残念! この二人は普通ではなかったのです――!


 どんなに大きな壁も叩き壊して蹴り砕き、どんなに大きな落とし穴も壁走りと跳躍で回避する。常人が相手であれば完封できる罠も、この規格外の魔王と勇者の足は一秒たりとも止めることはできなかった。

(なんだかちょっとかわいそう)と、イリスも思わず同情してしまう。こんなに頑張ってるのに、まったく報われないなんて。

 それでも屋敷の何者かの心は折れない。何度も何度も壁を立て、何度も何度も穴を掘る。そのたびに、ばこっと壊され、ひょいっと避けられても。なんて殊勝な努力家なのだろう。頑張れ、この屋敷の何者かさん!

 

(と、うっかり応援してしまったけど――それより)

 

 いともたやすく道を切り開いて廊下を爆進するユラの背中に、イリスはマオの腕の中から呼びかける。「ママ、そんなに壁を壊して大丈夫ですか? 手や足は痛くないですか?」

 

 この屋敷に来ることを散々渋っていたユラだが、いざ探索をすると腹を決めてしまえばご覧の通り。自分の役割を最大限こなそうと、先陣を切って壁を破壊している。ユラが強くて頑丈なことは知っているが、それでもその細身の体型を見ていると、ついつい心配になってしまった。


「うん、大丈夫だよ。ありがとう、イリス。なんかね、見た目はちゃんと壁なんだけど、材質はめちゃくちゃちぎれやすいマシュマロみたいなんだよ。だからちょっと力を入れだけで簡単に壊れちゃうんだ」

 しかも手触りがすべすべで気持ちいいんだよ! と、ちょっと頬を上気させながらニコニコしているウチのママがかわいすぎてつらい。


「マシュマロといえば、落とし穴の底も同じようなクッションで敷き詰められていたな。落ちたら最後、柔らかい素材で全身を隙間なく包み込まれ、そこから脱出しようという意思を根こそぎ奪われるだろう」

「そ、それは人を駄目にする恐ろしいトラップです!」


 マオの台詞を確認するために振り返ったイリスだったが、不思議なことに壊れた壁の残骸は跡形もなく消え失せ、床に空いた穴も何事もなかったかのように綺麗に塞がっていた。壁や落とし穴を作ることも、それを一瞬で元通りにすることも、この屋敷にいる精霊とやらの魔法がなせる業なのだろうか。


「いったい、どんな人が妨害してきてるんでしょう? 遺跡で見たスライムやゴーレムみたいな存在なんですか?」

「守護獣や守護者は遺跡にしかいないし、そこから出ることもないよ。……ああでも確かに、存在の在り方が似ているといえば似ているかも。守護者も精霊も、何か大きな使命や目的があって生まれてくるから」

「精霊って――あ、その前に第三総括さんのこと聞いてもいいですか? ママにこのお屋敷をくれた人なんですよね?」

 

 イリスの脳裏に、口ひげを生やしたお金持ちの男性の姿がぼややんと浮かぶ。ユラに何でも好きなものをプレゼントしてくれる年上の紳士。それはまさしく『パ』から始まる関係性だったりするのではないのか。

 

「い、いけません! パパというものがありながら、ほかのパパと仲良くするなんて!」

「ごめんちょっとよくわからないけど、第三総括っていうのは、この辺り一帯を見守っている魔物のことだよ。管轄内の魔物のことをほとんどすべて把握しているし、魔物に関するトラブルの解決のために動いてくれたりするんだ。まあ、総括の人柄によっては積極的だったり消極的だったりと色々あるけど」


 両サイドから息を合わせてタックルしてきた犬と猫のぬいぐるみを二体まとめて抱きしめるようにキャッチしたユラが、それを落とし穴にポイっと落としつつ「ちなみに第三総括は前者ね」と補足する。


「なるほど!」

 

 ちょっと規模の大きい町内会長のようなものだろうか、とイリスは大きく頷く。とりあえずユラとはいたって健全な関係を築いていそうだ。よかった。

 

「で、話を戻すと。その第三総括が言うには、ここには大体二百五十年くらい前から精霊が住んでいるらしい」

「精霊とは、人や物の強い想いによって生まれる生命体だ。誕生のきっかけとなった思念に従い、それをそのまま己の存在意義としている」

「個体差もあるけど、一般的に精霊にはそんなに凶暴なイメージはないんだよね。彼らが誰かを敵に回してまで動くようなときは、それなりの理由があるはずなんだ」

「お屋敷の精霊さんが、ここまで必死に妨害をしてくる理由ですか」


 しかも、ぬいぐるみだとかマシュマロ壁だとか、ちょっとソフトタッチで。侵入者といえども傷つけたくはないという優しさを背後に忍ばせながら、いっそ健気なほど屋敷を守ろうとする理由とは。

 

「ボクとっても気になります! パパ、ママ! 頑張ってその精霊さんを探し出しましょう!」

「わかった」

「あれ? 目的変わっちゃった? 屋敷の中を見たら帰るって言わなかったっけ? ねえ、イリス――え、魔王さま急に速足になるじゃん。待って待って、二人とも。あれ、聞こえてない? ひょっとして俺、ミュートになってる?」

 

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