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【二部開始】魔王と勇者のカスガイくん~腐男子が転生して推しカプの子どもになりました~  作者: 森原ヘキイ
第一部 第一章 カスガイくんは、魔王と勇者の子どもになりたい

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1-11 もっとサクサク話を進めてもらっていいですかね

 熱帯魚が泳いでいる。真っ白な天井を背景に、鮮やかな色彩がいくつも揺らめいている。綺麗だなあとぼんやり眺めていた亮太だが、意識がだんだんとはっきりしていくにつれて、その光景の異常さにじわじわと気づいてしまった。

 部屋の中を、魚が泳いでいる。

 部屋の、中を――?


「魚が!?」

「正式名称をフレッシュフィッシュという。空気を清浄にする魚だ」

「うひゃ!」


 起き抜けに聞くと心臓に悪いほどの美声が、亮太の右手側から聞こえてきた。思わずすっとんきょうな声を上げながら首をめぐらせれば、起き抜けに見ると眼球に悪いほどの美丈夫が視界に入り込んでくる。


「便宜上、魚とは言ったが生物ではない。空気を浄化する過程をイメージとして分かりやすく具現化した映像だ」

「……ま、魔王、さま?」

「ああ。気分はどうだ?」


 これは一体どういう状況だろう。いつの間にか自分は大きすぎるベッドに寝ていて、すぐ傍にはロミットがついてくれている。真っ白で清潔感のある部屋の中を、大佐いわくフレッシュフィッシュなる幻の魚たちがのんびりと泳いでいる。なんとも現実味のない、ふわふわとした光景だった。


「大丈夫、みたいです」


 直前の記憶を手繰り寄せながら、亮太はよいしょと上半身を起こす。大好きだと伝えた後の赤面ジュリオが死ぬほどかわいかったということだけははっきりと、それはもうはっきりと覚えているが、その後のことがわからない。夢の中では意味不明な場面転換が起こるので、今が本当にあのシーンの続きであるのかどうかも判断がつかなかった。


「えっと……」と、ロミットに時系列を確認しようとしたところで、その顔の良さに愕然とする。初めて会ったときは青い目に釘付けになってしまったうえに、なんだかんだずっと抱っこしてもらっていたので、全体像をまじまじと観察する機会はなかった。改めて見ると、やっぱりとんでもないほどの造形美である。

 ところどころでワイルドに跳ねながら、襟足へとくびれるように流れる黒髪。適度に厚みがあるが決して筋肉質というわけでもない、しなやかな豹を思わせる体躯。すっと通った高い鼻筋を中心とした、黄金比も裸足で逃げ出すくらい左右対称に整った顔面。

 そしてやっぱりここでも、目が。どこまでも澄んだ、二つの瞳が。静かな青いブラックホールのように、亮太の視線をゆるゆると吸い込んでいく。


「とてつもなくきれいです……」

「? ありがとう?」

「ああ、よかった。気が付いたんだね」


 不思議そうに首を傾げた大佐の背後で、部屋を仕切るために閉ざされていたカーテンが音を立てて開かれた。ひょこっと顔を覗かせたのはジュリオだ。亮太を見て安心したように微笑むと、椅子に座っている大佐の横をすり抜けてベッドの端に腰掛ける。そのまま上体をひねって、こちらに片手を伸ばしてきた。


「鼻血を出して倒れちゃったから心配したよ。ちょっとのぼせちゃったのかな。もう平気? 熱っぽいとか気持ち悪いとかない?」


 額を確かめてくる手つきと、温度の低い指が気持ちよくて、亮太はうっとりと目を細める。推しに心配してもらえる喜び、プライスレス。


「ぜんぜん何ともないです、元気です。ご迷惑をおかけしました」


 どうやら今が、あの遺跡でゴーレムと戦闘した直後であることは間違いなさそうだ。自分の中から赤い液体が噴出したこともうっすらと覚えているが、なるほどあれは鼻から血を出していたのかと恥ずかしくなる。でもそれくらい推しがかわいかったんだから仕方ない。あのときのジュリオの表情を思い出すとまた熱が上がりそうだったので、慌ててぺこりと頭を下げた。


「心配はしたけど迷惑はしてないかな。むしろ俺たちに振りまわされて、君のほうが大変だったね。勝手にこんなところにまで連れてきちゃったけど、大丈夫だったかな?」


 そう問いかけられて、改めて周囲を確認する。保健室や病院といった場所に共通する、静かで穏やかな雰囲気。目が覚めるまでは水晶でできた遺跡にいた身としては、アドベンチャー映画から医療ドラマにワープしたかのようで、正直なかなか気持ちが追いつかない。


「ここはどこですか?」

「ここは俺と魔王さまの職場だよ。その中にある救護室だね」

「職場の救護室?」

「救護室というのは、公共施設などに設置されている、怪我をした人や体調の悪い人を治療したり手当てをしたりする場所だ。そのための設備や医療用具も備えられていて、このフレッシュフィッシュも――」

「いやいや、さすがにそこまでの説明はいらないでしょうよ。もっとサクサク話を進めてもらっていいですかね」

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