4・ケイ素生命体もどき侵略宇宙人『シリコ先生』登場
○ 学校の校舎内(深夜)長期休校期間
ライトを手に暗い校舎内を探索する、ヨシツネ、ヨシナカ、トモエの三人。
少しビビり気味のヨシナカとトモエ。
ヨシナカ「本当なのか? 数日前に夜の学校の上空に巨大な人魂なんて?」
トモエ「見た人の話だと、数回旋回してパァッと消えたんだって」
一人だけ楽しそうなヨシツネ。
ヨシツネ「その後に、校内で起こりはじめた、不思議なコトの正体を暴きに行こう!」
✕ ✕ ✕
○ 理科準備室
そっと扉を開けて室内をライトで照らすヨシツネ。
ヨシツネ「この理科準備室では、ガラス窓に映る揺れる白い幽霊の影が目撃されて」
金属人間の人体模型や銀色の骨格標本が、ライトの明りの中に浮かび上がる。
悲鳴を発するトモエ。
トモエ「ひっ!」
ヨシツネ「大丈夫、金属人類の人体模型だよ……夜中に校庭を走り回ったりはしないから」
夜風が室内を吹き抜け、何か白いモノが揺れる。
トモエ「で、でたぁ!」
ヨシツネが部屋の明かりを点けると、ハンガーに掛かった、白いYシャツや女性の下着が風で揺れていた。
洗濯物の近くにはランドリーカゴがあった。
ヨシツネ「こんなことだろうと思った」
干してある洗濯物の女性下着に触るヨシツネ。
ヨシツネ「少し湿っている……洗濯したばかりだ」
ヨシナカ「あっ今、向こうの校舎の通路で動くライトの明りが?」
ヨシツネ「行ってみよう」
トモエ「ち、ちょっと待ってぇ……置いて行かないでぇ」
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○ 隣の校舎、通路
窓から覗く二つのロボット眼に、腰を抜かすトモエ。
トモエ「ぎゃあぁぁぁ!」
ヨシツネ「なんだ、ベンケイじゃないの。どうしたの、こんな夜の学校に来て? ベンケイも、怪異探索?」
ベンケイ「アクシロウさんから、連絡があって……夜の校舎に異界の怪獣を出現させるって」
ヨシツネ「望むところ、異界の怪獣って?」
ベンケイ「詳しいことは、シリコン星人に聞いてくれってさ」
ヨシツネ「シリコン星人? まぁいい、こっちは怪異探索を続けるだけだから」
✕ ✕ ✕
階段の手前で、何かヌルッとしたモノを踏んで転倒するトモエ。
トモエ「きゃあ?」
ヨシナカ「どうした? あっ、こぼれたカップ麺の汁と麺が? これ、銀ノ星の金属カップ麺じゃないな?」
しゃがみ込んで、床の金属片が入っていない、麺を触るヨシツネ。
ヨシツネ「まだ、少し温かい……カップ麺を床にこぼした、人物は近くにいる」
トモエ(泣き声)「もう、帰りたい」
トイレの方向で水の流れる音と、ラジオ番組の笑い声。
トモエ「今度は何? 待ってみんな、置いて行かないでぇ」
✕ ✕ ✕
○ 女子トイレ
明かりが点いているトイレの中から、聞こえてくるラジオ番組の笑い声。
ヨシツネたちが、トイレの入口に近づくとトイレの中から口にハンカチを咥えて。
スマホからラジオ番組を流している、背中に甲羅と頭に皿のカッパのような。
下着姿の女性が出てくる。
トモエ「でたぁぁぁぁぁぁ! カッパぁぁ……きゅうぅ」
気絶するトモエ。
意識を失ったトモエに駆け寄って介抱する、謎のカッパ女。
謎のカッパ女「驚かせてごめんなさい……あたし、新任したばかりのこの学校の保健医だから、保健室に運んで」
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○ 保健室
簡易なベッドに寝かされているトモエ。
下着姿の上に白衣コートのカッパ女。
謎のカッパ女「説明しよう。あたしはアクシロウさんの友だちの、悪の科学者さんの助手もやっている。シリコン星人の『シリコ・ダマ』よ、よろしくね」
ヨシツネ「こちらも、よろしくシリコ先生……こちらからも、いろいろと質問させてください」
シリコ先生「いいわよ、なんでも聞いてちょうだい……宇宙から呼び寄せたシリコン怪獣が到着するまでは、答えてあげる」
ヨシツネ「本当に宇宙人なんですか?」
シリコ先生「ふふふ、やっぱり、その質問から入ってきたか……ぶっちゃけて言うと、これはみんなには内緒だけれど、シリコン星人もどき」
ヨシツネ「違うんですか?」
シリコ先生「本当は悪の科学者さんが作った人間の表面にシリコンを、コーティングしたニセ宇宙人なの……背中の甲羅と、頭の皿もシリコンで包まれているのよ……触ってみる」
ヨシツネとヨシナカが、シリコのシリコンでコーティングされた顔を触る。
ヨシナカ「本当だプヨプヨしている……シリコンだ」
シリコ先生「本当は悪の科学者さんは、あたしの口にカッパのクチバシもつけたかった、みたいなんだけれどね」
ヨシツネ「ニセモノの宇宙人を演出しているってコトなんですね……どうして学校に?」
シリコ先生「まだ、住む場所が決まっていなくて……二~三日中には悪の科学者さんとアクシロウさんがアパートを、手配してくれていて決まるから」
ヨシツネ「スマホから流れていた、ラジオ番組は?」
シリコ先生「一人で学校にいると寂しいから、それにあたしが投稿したメールが番組で読まれるかも知れないから」
ヨシツネ「最後にもう一つだけ質問、どうして悪の科学者さんは人間にシリコンコーティングをしてまで、シリコン星人を作ったんですか?」
シリコ先生「夢だったって言っていた。ケイ素系の生命体が宇宙に存在する可能性は少ないから、だったらニセモノでも自分で作りたかったんだって……おしゃべりは、ここまで……シリコン怪獣が夜空から下降してきた、あの子たち弱いから、あまりいじめないでね」
成層圏から降りてきた、ネオンのように輝き点滅する多数のクラゲのような生物が合体して、巨大な空中クラゲ生物に変わる。
シリコ先生「あの子たちも、あたしと同じようにシリコン加工された生物……さあ、闘ってアクシロウさんのマンガのネタになって」
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数分後──ベンケイに軽くやられて、夜空に逃げていくシリコン怪獣『シリー』
ヨシナカ(M)「いろいろと、ツッコミどころ満載だけれど……こうして、町内の平和が今夜も守られた」
ヨシツネ(M)「がんばれヨシツネ、強いぞヨシツネ」
ベンケイ(M)「ベンケイも忘れずに」