寝不足
村人たちが活発に動き出した。それを見届けると、スコップとバケツを持って、昨日ダウジングでつけた印の場所に向かう。
私が付けた印と、エドが付けた印がある。
「うーん、どっちにしようかな」
「やぁ!」
声をかけられた振り返ると、ちょうど考えていた人物、エドが現れた。
今日もさわやかな笑顔で、太陽が似合う人だなぁ。
「何が、どっちにしようなの?」
「あー、うん。どっちを掘ろうかと」
私の印と、エドの印を交互に指さす。
エドは、んーと何かを考えるように空を仰ぐ。
「んー、手伝っちゃ駄目だから手伝えないけど、別に掘るわけじゃなきゃいいのかなぁ……」
ん?手伝う?何が?
「あー、そうだ、これは独り言、独り言。昨日家に帰ってダウジング試したんだよねぇ」
独り言?めっちゃ私に聞こえてますけど……。
「ぐるんぐるん回るところを試しに掘ったら、本当に水が出たんだよ」
「え?昨日、あれから帰って井戸を掘ったの?1人で?そんなに早く掘れないよね?まさか、徹夜?無理しちゃ駄目だよ、もしかしてそれを私に教えに来てくれたの?それには感謝するけれど、でも、本当に無理しちゃ駄目だから。帰って寝たほうが」
慌てて青年の顔を覗き込む。
寝不足なら目の下にクマとかできてたりするだろうと。
「あー、いや、あー、その……えっと、もしかして、僕の心配してくれてる?」
ずっと空を見上げていたエドが私の顔を見下ろした。
きょとんとした表情をしているエドの顔に疲れや寝不足は見られない。
「よかった、寝不足の顔してない」
ほっとして息を吐きだす。あ、質問を無視する形になっちゃった。慌ててエドの顔を見上げると、エドのほっぺが少し赤らんでいる。
「ね、寝不足でも平気だから。それに、眠い時は寝るよ、僕は」
あー。うん。20代のころは、結構寝なくても平気っていう感じも分からなくはないけれど、そのつけは歳をとってからやってくるというから。……分かっていても、充分寝る時間が取れない生活をするしかなかった。眠る時間が無いのは辛いことだって肌に感じてる。
「よかった。ちゃんと寝るのは大事だからね」
つい、辛かったことを思い出して心配しておせっかいにも声をかけてしまう。
エドの頬がさらに赤くなって、そっぽを向いてしまった。
子供扱いされたように感じたのかな。失敗失敗。そうだよね。子供扱いされたくないよね。
「リコに教えに来たわけでもないから……こっちも、水が出るのか気になって見に来ただけ。ダウジングの結果が知りたいだけ」
ああ、なるほど。
家に帰ってやって見たら水が出たって言ってた。ダウジングは本当かもしれないと、こっちも出るか確かめに来たのか。
「じゃぁ、エドの印の方を掘るね!」
ちょうどいい。決めるに決められなかったから、いいきっかけになった。
まずはどれくらいの大きさに掘るか、円を地面に書き、スコップで掘り始める。
「1人で掘るの?」
エドがスコップで土をかきだすのに邪魔にならない場所にしゃがみ込んで話かけてきた。




