サンドイッチ
朝食を済ませると、新しいズボンとシャツに着替える。
山賊から村人にジョブチェンじしたような気分だ。
「あの、リコ様本当にこちらでなくてよろしいのでしょうか?」
メイがシンプルなワンピースを持ち上げて尋ねる。
「あら?似合わない?」
メイが困った顔をしている。女性はスカート、ズボンは男性が履くものという常識が嫌というほど浸透しているようだ。
村人も農業もするだろうけれどスカートをはいていたし。動きにくくて不便そうということで簡単にズボンが広がらないには他の感情が動いているんだろうな。……日本でも、学校の女子の制服にズボンがやっと少し導入され始めたところだ。……とはいえ、戦時中とかは上がセーラー服したがモンペなんてスタイルもあったわけだし、やっぱり動きやすくないと非常に困る状況になればもっと柔軟にズボンも女性に広がるのかもしれない。
眉を顰めるようとも準備してくれたのはありがたい。
「リコ様が昨日メモに書いた物は一通り準備していつでもビビカに運んでもらえるように荷造りしてあるますが、いかがいたしますか?」
「ありがとう。全部持って行くわ。ビビカ~出発しましょう!」
イザートはすでに朝食後すぐに領地へと戻って行った。アイサナ村の人たちに食べてもらおうと料理長に頼んで作ってもらった軽食を「俺も弁当で持ってく!」と3人前はありそうな量を持って。
よほど気に入ったんだなぁ。アイサナ村の人も美味しいと思ってくれるといいんだけど。
アイサナ村に降り立つ。今日はわざと目立つように村の上空、低い位置をビビカに何度か旋回してもらってから着地してもらった。
村人たちがなんだなんだと顔を上げて見上げていた。
「食事をお持ちいたしました~」
こちらの様子を遠巻きに見ていた村人に大声を張り上げて声をかける。
料理長に頼んで作ってもらった大量のサンドイッチの入った籐籠をビビカが器用に口先でつまんで私が広げた布の上に下ろしてくれた。かごが10個。村人は100人程度だけれど、200人分はあるだろうか。足りなくて取り合いになってしまわないように十分な量を準備した。
ミーニャちゃんがまず初めにかけてきた。
「食事って食べ物?食べていいの?」
次に、子供たちがワーッと駆け寄ってくる。大人たちはお互いの顔を見ながら、どうすればいいのか図りかねている。
助からないと嘆いていたおばあさんが足を踏み出したことで、大人たちも距離を詰めてきた。
私と接することで水聖女に悪感情を抱かせるかもしれないと怯えているのか、単に私が気に入らないのか。
「ねぇー、食べていい?」
「もちろん。だけど、後でお仕事手伝ってくれる?」
「うん、いいよー!」
みーにゃちゃんが私の袖を引いた。
「俺も、手伝う。だから食べていい?」
他の男の子もサンドイッチから視線を外さずに私に尋ねてきた。
「ふざけんなっ!」
痩せてはいるけれど、上背がある男性が村人の集団から飛び出して、床に並べた籠の一つを足で蹴った。
籠は1mほど飛んで倒れ、中に入れてあったサンドイッチが飛び出して地面に転がった。
「な、何をするの!ひどい!」
男は怒りのこもった目を私に向ける。
「ひどいのはどっちだ!食料の支援をしてくれるかと思えば、食べたきゃ働けだ?」
は?
「そうだ!おかなを空かせている子供たちがかわいそうだとは思わないのか!」
何を言っているんだろう。
「今までいろいろな侯爵様が村に食料を届けてくださったが、そんなことを言ったのはお前が初めてだ!」
「ああ、そうだ!働かないと食料を渡さないだと?俺たちはな、干ばつで作物が全滅してるんだぞ!」
「食料が無ければ、このまま死ぬんだ!何も言わずに食べ物をくれるのが筋だろうが!」
村人たちの言葉に首をかしげる。