闇の精霊の力?
「皇帝宮のように時間が止まっているようなんだが、人が入ると動き出す。だから、寿命を延ばしたいと人が入り込んでも無駄し、食べ物までダメになる」
時間停止?冷やす方じゃなかった。小説とかである空間魔法収納魔法みたいな機能が付いた洞窟があるなんて。
「あれ?でも、ネズミとか入り込んだら時間が停止しないなら、食べ物は腐っちゃうよね?」
人間だけが生き物じゃないし、食べ物があれば当然それを狙った生き物が入り込みそうなものだ。
「人以外は時間が完全に停止します。時間が流れないのではなく動きまで止まってしまうので、入り口付近で固まっているネズミはすぐに確保して排除していますよ」
セスさんが補足説明をしてくれた。
人間が中で動きたいときだけ時間停止が解けるのか。なんか、すごく都合がいい洞窟だけれど。
「魔法?結界?」
そのたぐいならば細かく設定できそうだ。
私の言葉にイザートが変な顔をした。
「あ、そうか。迷いの森や、沈む砂のように、そういうもんだと思っていただけだが……」
迷いの森って樹海みたいな磁場がおかしくなるところかな。沈む砂って蟻地獄みたいに砂が落ちていく場所?確かに、それらに関しては魔法だとか思わないよね。そういうもんだと私も思っている。この世界だと同じように洞窟のこともとらえられているだけなのか。当たり前にただそこにあるので、不思議だけれどそういうものとして存在している。
「リコ様は面白い発想をいたしますね。確かに言われてみれば魔法……というよりは、精霊の加護なのかもしれません。闇の精霊の力は未知なるものと言われていますが、洞窟という暗闇に闇の精霊の力が宿っている可能性は否定できませんね」
イザートが真っ青な顔をした。
「おいおい、まさか、まさか、あの洞窟が闇の精霊の大切な場所なんてことはないよな?住処だとか……そこに、食料を運び込んだりしてるから、闇の精霊は怒って闇侯爵に加護を与えていないなんてことは……」
ミミリアが口を開いた。
「精霊様は、愚かな私のような人間とちがって、そんな嫌がらせはしないと思います」
自虐的なことを言いながら精霊をかばった。
「ただいまぁー!ごはんごはーん。あ、これ、俺様の?いただきまぁーす!」
ビビカが勢いよく窓から部屋の中に入ってきた。
いつもの光景だ。
「うわー、なに、これ、切っただけの野菜?俺様聖獣だぞ。羊や牛と一緒にするつもりなの?」
ぷくぅーっとビビカが頬を膨らませた。
「そんなことするなら、もう力を貸してやらないぞ!」
ワイワイと騒ぐビビカに、ぶはっと思わず吹き出してしまった。
精霊様はどうかわからないけれど、聖獣様はどうやら人間っぽいようだ。




