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定番だけど、それが必要

「ありがとう。じゃぁ、えーっと」

 私と料理長のやり取りを見ていた一番若い調理人を一人手招きする。

「手伝ってもらってもいいかな?」

「は、はい!もちろんです!」

 徳利のような入れ物に入った油。中を覗き込むとたっぷり入っている。この大きさなら、中身は200mlくらいだろうか。1合180ml入る1合徳利と同じくらいのサイズに見えるんだけれど。200mlなら、基本分量の2倍だ。

 ボウルに材料を入れる。かき混ぜるのを若い調理人に頼んだ。

「よくまざったら、次は油。少しずつ少しずつ入れて混ぜるんです。とにかく混ぜる」

 日本では手作りする人は少ない。

 材料は、卵黄と酢と塩と油だけ。家にあるものだけで作れ、特別なスパイスやら普段は使わない食材やらは必要ない。それでもこの混ぜる過程が手間なのと、毎日のようによく使うため手作りする人は少ない。

「あ、色が白っぽくなってきました」

「うんうん。乳化してきたのね」

 油を少しずつ注ぎながら料理人が混ぜているボウルの中をチェックする。

「これは、スープ……と、いうわけではありませんよね?何ですか?」

 料理長の質問に、めいっぱいドヤ顔をした私は声高らかに答えた。

「マヨネーズです!」

 みんな大好きマヨネーズ。

 野菜嫌いも美味しく野菜が食べられる魔法のマヨネーズ。

 ご飯にもパンにも粉もんにも麺にもなんにでも合うマヨネーズ。カップ焼きそばや冷やし中華にマヨネーズは鉄板。

「マヨネーズ?」

 きょとんと首を傾げられてしまった。

 あ、はい、そうですね。知りませんね。

「えーっと、調味料……ソースの1つでしょうか?それともドレッシングに近いのかな?野菜サラダにかけても美味しいですし、エビに絡めて料理にしたり、それから……」

 徳利の中の油が無くなった。

「パンはありますか?あと生で食べられる野菜。何でもいいです。食べやすい大きさにカットしてお願いします」

 すぐに、要求したものが準備された。どうも他の料理人も気になってこちらの様子をうかがっていたようです。

「あまり量がないので、試食も少しになりますが……好きな野菜かパンを手に取って少しマヨネーズを付けて食べてみてください」

 各々が野菜やパンを手に取り、マヨネーズを私の真似をしてちょいっと先につけて口に運んだ。

「こ、これは……」

 まずは料理長が目をむいた。

「僕がこんなに素晴らしい物を作ったのですか?!」

 ボウルの中身を混ぜる手伝いをしてくれた料理人が感動して頬を紅潮させた。

「聖女様、さすが聖女様だ!」

「リコ様、この、マヨネーズは、他にどのように使いのですか?」

 わーっと大興奮だ。そうだよね。マヨネーズ美味しいもん。そりゃ、興奮するよね。

 よかった。この世界の人の舌にも受け入れられそうだ。酸っぱいのが駄目だとかいう人も日本にもいるから。多くの人が苦手だと感じるならば駄目だもんね。

「えーっと、マヨネーズを使った私の知っている料理はまた今度教えますが、今日のところはマヨネーズ本来の味を楽しんでもらうために出してもらえますか?」

 料理長に頼むとうんと頷いた。

「油は貴重ですから、マヨネーズも貴重です。初めて挑戦する料理で失敗して無駄にするよりは何も手を加えずにマヨネーズを味わってもらう方がいいでしょう」

 そうなんだよね。マヨネーズは貴重品。油が高いからそうなるよね。

 でも、だからこそ、アイサナ村を救えるかもしれない。




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