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「馬鹿にしない方がいい。彼女は山賊の頭目の娘だ。怒らせて寝首をかかれても知らないぞ」

 にやついた顔をしていた女性が顔色を変える。青い顔になると、髪の毛も青だから、なんだかちょっと青白すぎて幽霊見たいだなぁ。

 と、失礼なことを考えている場合じゃない。

 山賊の頭目の娘って何なのよっ。

「なっ。エンジュナに何かしたら、私が許さないからなっ」

 ハーレーが、怒りのオーラを纏う。

 いや、何?長い薄い青い髪の毛がまるで静電気を帯びたようにふわりと広がっている。

 オーラとかそんな目に見えない何かじゃなくて、髪を動かすような何かがハーレーの体から出ている?

「あはははっ、冗談だ。リコは山賊の娘なんかじゃない」

 イザートがハーレーの怒りの言葉を笑い飛ばすと、青くなっていたエンジュナが目を吊り上げて私を睨み付ける。

 もう、イザートが変な冗談をいうから、私がにらまれたじゃない。

「リコを馬鹿にするようなことがあれば、俺が許さない」

 あっ。イザートは私が馬鹿にされたと思って怒ってくれたのか。なし崩し的に連れてこられて、イザートがどんな人なのか全然分からないけれど、悪い人ではないのかもしれない。

「ふふふふ。冗談でしたの。そのような格好をしているものだから、信じてしまいましたわ」

 エンジュナが小首をかわいらしく傾げながら、私に勝ち誇った目を向ける。

「あなたを選んだ侯爵様にまで山賊だと言われるなんてかわいそうですわね。それとも……」

 声を潜めて、私の耳元でエンジュナが囁いた。

「同情を買って、闇侯爵様に取り入ったのかしら?将来の皇帝妃にでもなれると思った?」

 同情?空腹だった私に同情してくれたのかな?

「残念ね。闇侯爵は皇帝に選ばれることは天地がひっくり返ってもないと、ゴミ溜め出身のあなたはご存知ないのかしら?」

 くっと笑ってエンジュナが美しい水色のふわふわの髪をゆらしてハーレーの元に戻る。

「で、何の用だ?ハーレ」

「選定会、1回戦の対戦カードが決まったんでね。教えに来てやったのですよ」

「それは、親切にどうも」

 ハーレーは、1枚のノートサイズの板をポンッとイザートに投げつけると満足げに去って行った。

「わざわざ到着を待って届け物をしてくれるなんて、ハーレさんって親切な人なんですね?」

 渡された板に書き込まれた文字を見ながらイザートはくっと笑った。

「アイツが親切なものか。1回戦は、闇侯爵対水侯爵。勝負の場所は、日照りが続くアイサナ村だとよ」

 ん?勝負が日照り?

 イザートが文字が書かれている板切れを私に向ける。

「あ!」

 読める。文字が、日本語じゃないにも関わらず、言葉として認識できる。

「俺様腹減った。早く中に入ろう」

 ぽんっと何かが頭の上に乗った。

「はいはい、ビビカ。そうだな。俺も腹減ったし。リコもペコペコだろ?そろそろお腹がまた鳴るんじゃないか?」

 にっとイザートがおかしそうに笑う。

「そんなにいつもお腹を鳴らしたりしませんっ!パンを2つ食べたからしばらくは大丈夫」

「しばらくね。くっくっく、だったら、まず風呂入って着替えたほうがいいか。って、風呂って分かるか?山賊風にいえば水浴びか」

「なっ。風呂くらい知ってますっていうか、風呂にはいれるの?嬉しい!でも着替えはもってないんだけど……っていうか、私の頭の上に乗っているのはもしかしてビビカなの?」

 ああ、もう、情報が多すぎて追いつかない。

 風呂、風呂にはいれる、それがまず大事な情報の一つ。

 着替えをどうするか。

 ご飯が食べられる。

 頭の上に乗ったのは何か。ビビカって言ってたし、確かにビビカの声がした。でも、サイズが、頭の上に乗るようなサイズじゃなかったよ?

「そう、俺様は聖獣ビビカだ」

「そっか!聖獣だもんね。だから大きくなったり小さくなったりできるの?すごいね、聖獣ってすごい!」

「だろう、俺様すごい!」

 頭の上からパタパタと羽を動かして私の目の前に飛んできた。

 かっ……かわいいっ。

 サイズは猫!姿は黒いドラゴン。そのまま大きさだけ小さくなったんじゃなくて、なぜかデフォルメされてる!


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