考えて、考えて
井戸を掘る。
そのために必要なもののリストをセスさんに提出。
井戸を掘るために必要な物。スコップやロープなどはすぐに手に入るだろう。動滑車は定滑車があるのだから……いや、伝わらない可能性はある。どういう業者が定める滑車を作っているのか。業者の人を呼んで打ち合わせないと。
鍛冶屋のゴードンさんが作ってくれるなら相談しやすい。仕事を息子たちに任せながら新しい物の開発にも力を入れ、そしてギルドの登録しましょうという提案もしてくれる。自分の手柄にして金儲けしようとすればできるのに、不正を行わない信頼できる業者さんだ。
……滑車なんか鍋とは違ってそこそこ複雑な形だ。滑車が作れるのなら……もしかして……。
思い出せ。思い出すんだ。
読んだはずだ。本を。図解もついていた。もっとじっくり見て覚えておけばよかった。
弁が2つは覚えている。だけれど、具体的にどのような弁がどういう役割でついていたのかまでは覚えていない。
えーっと……。こうしたときに、こうなって……。
手振り身振りでいろいろと理屈を考えてみる。一度仕組みは本で読んでいるから、少しずつ思い出してきた。正確かどうかは分からない。
だけれど、下手くそながら本に書いてあったような図を紙に書いてみる。
ダメでもともとだ。
それから、イザートに確認するのは、土侯爵領の状態だ。
毎年、食料を他の領の支援に回せるくらいに作物が採れるのか。
たしか、支援は無償提供だったはずだ。その分他の侯爵に魔法で助けてもらっているというようなことが本に書いてあったから。
その魔法で助けてもらうための対価としての支援分と、領民たちが食べるための物以上に作物は作っているのか。作れるのか。つまり、貿易のため。他の領地に輸出するため。……輸出入については「特産品」に関して本には書いてあったけれど食料については触れてなかった。各々が領地で調達するのが基本のようだ。ああ、同じ国内なのだから輸出入とはちょっと違うか。それでも領地が一つの国のようなものだと考えると、日本のように食料を輸入に頼りすぎてしまうと、世界的飢饉が起きたり戦争になったりしたらすぐに食料が不足して飢餓が訪れてしまうだろう。基本的な作物を他の領地に頼りすぎてしまっては駄目だ。でも、頻繁に日照りの被害を受ける小さな村一つくらいなら……。
それから、税制についても知りたい。それは本があれば自分で読んで勉強すればいい。
農民は穀物で収めている?お金はどれほど流通しているのだろう。物々交換がまだ盛んな地域があればお金というものに馴染みはないだろうけれど、存在くらいは知っている?お金をもらっても困るような地域はるのだろうか。
ああ、食料不足になればお金をもらっても、買う場所がないのか。買えたとしても価格が不当に吊り上がっている可能性もあるから支援は食料でしたほうがいいのか。
それじゃぁ、農民はお金より穀物が手元にあったほうがいいことになる。
だとしたら私の考えは全くだめだ。
だけれど……現金なら貯められる。
アイサナ村の人が作物を売る。現金を手に入れる。その現金で穀物を買って食べる。
穀物よりも高く売れる作物が作れれば、現金が手元に残る。
税金を現金でも収めることができるのであれば、決められた作物を作る必要もないのでは?
やっぱり駄目だ。お金があっても食料が手に入らないときのためのことも考えないと。
穀物を作らないと。そのうえでお金になりそうな作物を作る。
「あーーーーっ!」
頭をガシガシとかきむしる。
アイサナ村の気候についてももう少し詳しくしりたい。




