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■加護なしハズレ闇侯爵の聖女になりまして~ご飯に釣られて皇帝選定会に出ています~  作者: 富士とまと


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信用

「執事の仕事をご存知ですか?」

 執事の仕事?

 それも昔、本で読んだことがある。

 執事は、家事使用人の最上級職で、使用人の統括する。時には主人の従者や秘書といった役割を兼ねることもあるけれど。

 つまりは、主人の補佐ってことだよね。

「従僕時代、私を育て上げてくれた先輩執事の言葉があるんです」

 ああ、そうだ。本に書いてあったよ。従僕として働いて出世して執事になるみたいなこと。特別に執事の学校があるような世界や世襲制で執事を子に引き継ぐような世界もあるみたいだけれど。

「執事は、ご主人様を支えるのが仕事だ。そして、使用人を守るのが責務だ……と」

 セスさんが、白い手袋をはめた手を、前で丁寧に合わせて、頭を深々と下げた。

「使用人を守ろうとするあまり、リコ様に対して失礼を働いたことをお許しください」

 使用人を守るために……そうか。中には理不尽なことを使用人に強いる主人もいるのだろう。

 雇い主ということで、何でも許されると思うような愚かな者が。

 そういう貴族などと使用人の間にたち、使用人たちを守ろうとするのが執事。

 いや、使用人にひどいことをする主人であれば、噂が広がり社会的な立場も悪くなるだろうから、回り廻れば、主人をも守ることにつながるはずだ。

 セスさんは、初日に侍女を私からかばう様な事をしたことを言っているのだろう。

 侍女からの報告を信じて、私が必要以上に重い処罰をしないようにと先立っての行動。

「いいえ。ありがとう。私もイザートも使用人との距離感がよくわからなくて、我儘を言い過ぎて困らせてしまうことがあるかもしれません。それをちゃんと止めてくれる人がいるのはとても心強いです」

 私の言葉にも、セスさんは頭を下げたまま上げようとしない。

「確かに、イザートはここに来ることに不満げだったし、連れてきた私はとてもみすぼらしい服装で、嫌がらせのために連れてきたのかと思われるような状態でした。……ですから、使用人たちが嫌がらせを受ける前に、くぎを刺そうとしたんですよね。自分が逆に執事として立場が悪くなる可能性があったにも関わらず……」

 山賊のように見えるとイザートは言った。

 きっと、他の人にとっても、そういう「普通じゃない」「異常な」「危険かもしれない存在」に見えたに違いない。

 人は見た目じゃないという言葉もあるけれど、やっぱりある程度は見た目なのだと思う。それは容姿の話ではなく、服装や立ち振る舞いや、纏っているオーラや空気も含めた見た目のことだ。

 異世界から来た私は、纏っている空気もこの世界のものと違う何かがあったのかもしれない。それを感じ取っていたとしたら。

 ……と、考えても仕方がない。取りあえず、私に言えることは……。

「セスさん、私は執事としてあなたを信用します」

 イザートが、セスさんに頼んだことのいくつか忘れられると言っていた。それはなぜなのかは分からないけれど。もしかしたらうっかりさんなだけなのかもしれないし、使用人にとって到底受け入れられないことだったのかもしれないし。

 はっと、セスさんが顔を上げた。

「信用を……してくださるのですか?」

 許す許さないの話ではなく、信用を勝ち得るとは思っていなかったのだろう。本当に驚いた表情をしている。


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