レッツダウジング
「本当に、大丈夫?」
「はぁ、なんともないですけど……?」
青年の両目が見開かれた。
「すごい!そうか、もしかしたら闇聖女……聖女だからなのかな。なんともないってすごい!」
はい?
「リコ、僕の名前はエドワード、エドって呼んで」
「エド?えーっと、なんともないって?」
どういうことだろう。聖女じゃなければ何が起きるっていうのか……?
「うっ、うわぁー!何、何コレ!」
エドが持っていた枝が、くるくると回りだした。
えええ?
「握ってる手を緩めたら、勝手に動き出した。すごい、ダウジングってすごいね、リコ!」
いや、回る?ダウジングってそんなんだったっけ?
「面白い!あ、こっちに移動すると動かない。ってことは、さっきの場所になんかあるってことだよね?」
いや、本当に、勝手に動いて回ったの?……。
ダウジングなんて眉唾なんだけど……。
エドがあちこち歩き回っている。枝は、さっき反応したところ以外では動かないようだ。
「あ、この辺も少しだけ動くよ」
エドの持っている枝が、地面に向けて少しぴよんと動いた。
そうそう、ダウジングってそういう感じ……。
「リコ、面白いね、これ」
エドが一通り歩き回ってから戻ってきた。
「あははは、やっぱりここが一番今のところ反応が強い。リコ、掘るならここにしなよ」
ぐるぐる枝が回っている……。
「えーっと、エド、自分で動かしているわけじゃないよね?」
「ぷっ。何?リコが今度は僕に聞くの?」
そういえばそうだ……。
「返してほしいってこと?」
エドが名残惜しそうに枝に視線を落とす。
「あ、いや……使っていいよ」
しゅんっとした姿が、お預けを食らった犬みたい。
「その辺で拾った枝だから、なんならあげる」
「え?これ、ただの枝なの?特別なアイテムってわけじゃないの?」
今度は目を見開いてくりくりの目で枝をしげしげと眺めている。
枝を取り上げてぽーいと遠くに投げて「取ってこい!」って言ったら、ワンワンって枝に向かって一目散にエドはかけて行きそうとか……。
ちょっと失礼なことを考えてしまった。いや、本当、柴犬みたいだと思い始めたら、柴犬にしか見えなくなってきた。可愛い。
「あ、でも、リコにもらえたと思えば特別かも!」
唐突に、ワンコがにこりとすさまじくさわやかな笑顔を私に向けた。……ちょ、唐突にイケメン青年の姿に戻らないで!
心臓がバクバクするよ。私からもらったから特別とか、口説き文句みたいなこと言わないで。
たぶん、闇聖女からもらったから貴重みたいな意味だよね。ああ、もう。日本にいた時にこんなイケメン青年と会話することなかったから免疫がないのよ。……まぁ、イケメンじゃなくても、異性と会話することなんて仕事の時以外なかったけども……。
「本当に、ただの枝だから、特別でも何でもないよ。あー、それよりも、エドが特別な人なのかもね?ダウジングすごく反応してたもんね。ここ、本当に水脈があるかも」
ちょっと照れ隠しに早口でしゃべると、地面に大きくバツ印をつける。
「ここ、掘ってみるね。あー、でも、勝手に穴を掘ったらダメかな?誰に許可を取ればいいんだろう。この辺の畑の持ち主?村長さん?領主様?」
首をかしげると、エドがふふっと笑った。




