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■加護なしハズレ闇侯爵の聖女になりまして~ご飯に釣られて皇帝選定会に出ています~  作者: 富士とまと


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守られ……?

「侯爵と聖女、俺たちは二人で一つだ。家族みたいな、いや家族以上の関係だからな。いつも、俺がいることを思い出してくれ」

 家族以上……。

 涙が落ちる。また、家族を思い出して泣いていると思われただろうか。

 いや、間違いじゃない。家族のことを思い出している。

 高校を卒業して働きながら、母親の介護と不登校の妹の面倒と、生活費を稼ぎながら明日の心配をしながらの日々。

 助けて、助けてと、誰かに弱音を吐きたくても吐き出せなかったあの時。

 一人で抱え込むなと……あの時欲しかった言葉。あの時、ずっと、ずっと欲しかった言葉を、なぜイザートは私にくれるの……。

「あああああっ」

 声を上げてみっともなく泣いてしまった。

 イザートの胸に顔をうずめて。止められない。涙が、止まらない。

「リコ……」

 ふわりと、イザートが覆いかぶさる。優しく抱きしめられている。

 温かい……。

「俺がいる。俺が、守ってやる……」

 ぎゅっとイザートの腕に力が入った。

 守る?私を?イザートは、誰に守られるの?ハズレ侯爵と蔑まれて傷ついたりはしていないの?

 領地運営で何か事件が起きて、領民が不幸になってしまって、ひどく落ち込んだりしないの?

 そんな時は、イザートは誰に心を守ってもらっているの?

「イザートも背負い過ぎないで。私のことを背負わないでいい。守ってもらおうと思ってないよ。ねぇ、イザート、支え合おう。家族とか家族以上の存在ってそういうものでしょう?ね?」

 涙が吹っ飛んだ。

 自分でもおかしなもので、私は誰かに甘えるとかがどうにも苦手なようだ。守るなんて言われて、くすぐったくなってしまったし。

 むしろ、守りたいと思ってしまったんだから。……長女だからなのかな。関係ないか。

「あっ、ははは、リコ、確かにそうだな。俺は、もうリコに支えてもらってるな。守るなんておこがましい話だった」

「え?私が、イザートを支えてる?何もしてあげれてないよね?」

 使用人にはいろいろ教えたりもしたけどイザートには特に何も……役に立つようなことしてない。それどころか衣食住すべて面倒見てもらってるし。今だって、胸を貸してもらって……。

 急にイザートの胸に顔をうずめて泣いたことが恥かしくなって顔を伏せる。

 私ったら、なんてことを!

「はっは。使用人の信頼を得られたのはリコのおかげだろ」

 使用人の信頼?

「それに、食べたことのない美味いものが食べられるのは、娯楽の少ない皇選宮でのとびきりの楽しみだ。1年間耐えられるか心配だったが、リコがいてくれるおかげで乗り切れそうだ」

 そうなんだ……。

 ふっと、心が軽くなった。

 贅沢していいのかと、野菜ジュース一つが苦くて飲み込めなくなってしまっていたけれど。これはこれで必要なことなのだと……。

 イザートのためになっている。――まぁ、後で搾りかすレシピは伝えておこう。食材を無駄にしないのも大切なことのはずだ。……いや、これは料理長ではなく侍女に教えたほうがいいのかな?調理場で出たものでおいしいものを作って楽しめるよと。違うか、賄い料理や使用人の領地に応用してもらえばいいんだから、やっぱり料理長に伝えればいいのかな?人参の皮のきんぴらも美味しいんだよって。栄養もあるし。……あ、きんぴらを作ろうにも醤油がないか。じゃぁ、油で揚げて塩をふるのがいいかな。人参の皮チップス。


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[良い点] 貴族としての生き方を模索してる様子 [一言] 「侯爵家の」賄としてはアリかもしれませんが、 産業革命前の生産能力では大量の油を搾る労力が大きいので、 揚げ物の手前の揚げ焼き(ムニエルやシュ…
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