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ビシソワーズ

「なんで、なんで俺だけ飲ませてもらえないの?何か俺、皆に嫌われるようなことした?いや、してたとしても、食べ物で嫌がらせするなんて」

 イザートが泣きそうな顔になっている。ちょ、それでいいのかな。

 セスさんがギッとイザートを睨み付けた。

「我々使用人が嫌がらせをしているという根も葉もない思い込みはやめていただきましょう」

 イザートがハッとして椅子に腰かけ直した。

「す、すまん。そんなことは思っていない……」

「料理長は、私たちが試食して美味しいと言っているのに、首をかしげておりました」

 セスさんの料理長も口を開いた。

「はい。ジャガイモでも作れるということだったので、ジャガイモで試作してみたのですが……。皆が美味しいと言ってくれましたが、カボチャのスープに比べて何か一味足りない感じがして。もう少し改良の余地があると思いまして。中途半端な料理を侯爵様にお出しするわけには参りませんので……」

 料理長の言葉にイザートがさらにシュンと肩を落とした。

「そうか、すまなかった。おいしいものを俺に食べさせたいという気持ちで研究してくれてたのに」

 そうか。カボチャのスープを出せば、私がさっき飲んだから同じものを何度も出すのは駄目だと別のもので作ろうとしてくれたのかな。ジャガイモかぁ。

 ん?ジャガイモの冷製スープ……ジャガイモのポタージュ……でなくて、何と言ったかな……。

「ビシソワーズ!そう、ビシソワーズよ、料理長!」

「なんですかな?ビシソワーズというのは?」

「分量とかはその、実際作ったことがないのでよくわからないのですが……」

 作ったことはないけれど、雑誌に載っていたレシピを見たことがある。

「ジャガイモと、ポロネギ……なければ玉ねぎと、生クリームにバターを使うの。それから、ビシソワーズに使うのは、コンソメスープじゃなっくて」

 なんとなく、洋食系って、コンソメの元だとかブイヨンだとか使えばできるものだと思っていたので、ビシソワーズの作り方を見た時には驚いた。なんせ、使うのはコンソメじゃない。

「鶏ガラスープを使うとできるんです」

 そう、鶏ガラスープ。中華のイメージが強かったので、ビシソワーズという単語に鶏ガラスープがあまりにミスマッチでよく覚えている。

「鶏ガラスープとは?」

 あれ?ない?

「鶏の骨を使って作るスープですが」

「ああ、豚骨スープや牛骨スープのようなものですか。鶏骨スープ……は確かに聞いたことがないですが、作ってみましょう!」

 ん?そういえば、同じ骨を使うのに、鶏ガラスープは鶏骨スープって言わないんだ。骨が小さいから?この世界にはなかったってこと?

「ああ、リコ様の話を聞いていると、新しい料理がいくらでも作れそうな気がします」

 料理長がワクワクとした顔をする。その隣で、イザートがギラギラと目を輝かせていた。


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