いつものスープ
夕食の席で。
「リコ、聞いたぞ。今日はすごいご馳走が出るんだとな」
聞いた?誰に?
夕食は初日からずっと、私とイザートは近くに座っている。遠く離れた席では会話がしにくいからだ。
ただ、侍女たちの給仕の練習のため、時には向かい合わせだったり、時には隣同士だったりといろいろだ。
「すごいご馳走?誰が言っていたのですか?」
イザートが今日の夕飯はカレーだという子供みたいな目をしている。そうか。イザートは食事を楽しみにするタイプだったのか。
会った時にパンを口に詰め込まれた記憶がよみがえる。お腹が膨れれば満足で、適当にパンでもかじっておけばいいみたいなタイプかと思っていた。
「セスだ!セスが言っていたんだ。リコ様が考案なさったスープを試食させていただきましたが、素晴らしいお味でしたと」
セスさんが?そんなことを言うタイプには見えないんだけど。
「侍女たちも口をそろえて、あれは美味しかった。また飲みたいと噂しているのが聞こえたから、よほど美味いのだろう」
そうか。料理長は早速作って、いろいろな人に試食してもらってるんだ。そうだよね。人によって口に合うか合わないかはいろいろだから、多くの人に試食してもらうのは大切だ。
そして、夕食が始まる。
サラダにコンソメスープとパン、メインは肉料理でそれからデザートが出てきて、食後の飲み物だ。
いつも通り、美味しかった。
いつも料理長さんをはじめ料理人の皆さんありがとうございます。
「ごちそうさまでした」
と、手を合わせるとイザートが給仕をしている侍女に尋ねた。
「まさか、これでおしまいか?」
ちょっと声が震えている気がする。
「はい。足りないようでしたらお代わりをお持ちいたしますが、何がよろしいでしょうか」
給仕をする侍女たちの顔はいつもの通りだ。化粧は落としている。化粧の匂いで料理の香りを邪魔しないようにするのは当然らしい。
「いや……料理長を、呼んでくれないか?」
え?イザートが料理長を呼ぶなんて初めてのことじゃない?
料理長が硬い表情で現れた。
……侯爵様が使用人を呼ぶ理由など、2つしかない。褒めるか、叱るか。
「料理長、今日の夕飯だが、いつも通り美味しかった」
褒める方か。
「ありがとうございます」
「いや、だから、いつも通り、だったよな?」
「はぁ……」
何が言いたいんだろうね。イザートは。
料理長の気の抜けた返事に、イザートが私を見た。
「リコ、今日の料理、いつも通りだったよな?」
「そうですね。私もいつも通り美味しくいただきましたけれど?」
何が、言いたい?
「ほら、料理長、やっぱりリコだって、いつも通りだって言っているじゃないか!リコの考えたスープは?みんなが試食して美味しいって言ってたスープは?」
イザートが料理長の肩をつかんで揺さぶった。
……そういえば、確かにスープはいつものコンソメスープだったな。
だいぶ前に書いた話だから細かいところ頭から抜けてて、更新しながら読んでるんだけど……
え?こんな食いしん坊シーンあったんだ……いつものあれじゃないか……ってなってる
いつものあれ←!




