メイク技術
「何でも直せちゃうポーションとかないんだ」
失った足が元に戻るようなそういうすごいのまで想像していたので、ちょっとがっかり。
「ありますよ」
メイがけろりと言った。
「光侯爵様が10日間魔法をささげ続けてやっと1本だけ作り出せる作る希少な万能ポーションも医務室にはあります」
あるんだ。というか、10日で1本しかつくれないのね。本にポーションの作り方書いてあったけれど、一度にたくさん作れるってあったから一人ずつ癒すよりも早いっていうのは、こういう打撲とか効果を限定したポーションのことだったのかな?
「いただきます」
10センチほどの小さな瓶の蓋を開け、中身を飲み干す。
味は青汁風味。飲んだ瞬間、まるで強いお酒を飲んだかのように、喉が熱を持ち、それが体全体に広がる。そして、頬の痛みが無くなった。
「ポーションすごっ!」
薬みたいなものなんて思ったけど、全然薬と違う。本気で魔法だ。こんな一瞬で治るものなんて地球には存在しないよ!鎮痛剤だって1時間くらいしないと効いてこないだもん。
空になったポーションの瓶を感動の目で眺める。
こんな奇跡みたいなポーションを作り出せるんなんて、やっぱり光侯爵もすごいなぁ……。神のような力で間違いない。正直なところ、どの侯爵もすごいんだから、皇帝の選び方はその力を見せつけるような選び方ってどうなんだろうね。もうすごい力があることは事実として分かってるんだもん。……最終的に選ぶのって精霊王?というか、精霊はなぜ人に力を貸してくれるんだろうか?魔力を糧にってあったから、侯爵の魔力のため?聖女の歌を聴きたいから?聖獣もなぜ力を貸してくれるのかなぁ?
ばぁーんとドアが開いた。
「リコ!料理長が呼んでるぞ~」
パタパタと小さな羽で飛びながらビビカがやってきた。
ふへへ。どうでもいいか。かわいいは正義。
両手を広げて待つと、なんと!ビビカは最近頭じゃなくて胸元に飛んできてくれるようになりました!
むぎゅしてもいいんだよ!むぎゅっがゆるされるんだよ!
「はぁい。じゃぁ、メイ、ちょっと行ってくるわね。そうそう、メイの化粧をしたのは誰かしら?ふっくらとした唇が上手に表現されていると思うわ。唇の形にも流行があるでしょう。もしふっくらが流行っていれば、唇の外側に大胆に出して大きく描けば大丈夫。薄いのが流行っていればファンデーションで唇塗りつぶして小さく描くの。唇は3色使うといいわよ。縁取りは少し濃い目のものでしっかりと。メインの色が中間色ね。そして、少し薄目の色を真ん中にちょんっと置くと艶めいてふっくら見えるわ。マーサの頬紅の入れ方も素敵ね。頬の一番高いところに丸く入れる、入れすぎないことが大切。若い子はそれで十分。年を取って顔の輪郭が下がってくれば上がって見えるように斜めに入れてあげるといいわよ!」
と、簡単にアドバイスしてから部屋を出る。
メイとマーサはお互いの顔を眺めながら、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます!引き続き頑張ります!」
「リコ様のメイクの知識には舌を巻きます」
あ、妹の買いあさった本や雑誌からの受け売りですけども。役にたってよかったです。私は全然実践したことがないので口だけな女ですよ。
「リコ様の肌や髪が美しいのはずっと手入れをされていたからなのですね」
へ?
むしろ、髪なんて放置しすぎて。下手にパーマやカラーリングしたことがないから傷んでないだけなのですけれど……。肌は日焼け止めだけ気を付けていた程度で……。褒められるようなことはしていなかっただけに、背中がむずがゆくなる。




