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「と、いうわけで、俺の30歳と、リコの30歳は、別な。俺のが年上、いいな!」

 は?イザートが同じ年?というか、同じ年であることを前面否定の、自分のが年上宣言?この世界って、年上を敬わなければいけないすごく厳しい掟でもあるわけ?

「女は年上の男が好きだろ?」

「は?」

 イザートが私の頭をくしゃりと撫でた。

「ああ、まだ乾いてないのか。風の精霊の加護があればすぐに乾かせてやれるのに……俺は加護なしだからな……」

 少し自虐的な顔をイザートが見せる。

 闇侯爵は、他の5侯爵のように精霊の加護がない。加護なし。ハズレ侯爵だと侍女たちが馬鹿にしていた。

 イザート自身、それを恥ずかしいとか悲しいとか思っているのだろうか。

 普段は気にしないでいても、この場に来てしまえば、嫌でも加護なしだということも馬鹿にされているということも肌で感じざるを得ないだろう。……そりゃ、皇帝になれないと言われているのに、参加はしなくちゃいけないなんて。行きたくないなぁと思っても仕方がないよね。

 ドライヤーがあれば加護なんてなくたってすぐに乾かせるんだよと。言ってあげたかったけれど、ドライヤーに関して説明を求められたら困るので言葉を飲み込む。

「短くすればすぐ乾くよね」

 いつの間にか腰まで伸びた髪の毛の先を一束つかむ。ろくに美容院にも行ってなくて、伸び放題になった髪の毛。

 毛先をつかんだ私の手首を、イザートがつかんだ。

「駄目だ」

「え?駄目って?」

 イザートが私の手首を自分の顔に寄せる。そして、私が手に取った毛の先に唇を当てた。

「こんなに美しい髪を切っては駄目だ」

「う、美しい?」

 思わぬ言葉に息をのむ。

 愛おしそうに私の髪にキスをするイザートがじっと私の目を見た。

「ああ。こんなに見事な黒髪。闇侯爵領は黒髪が多いといっても、ここまで黒くてつややかな髪を持つものはそう多くはない」

 そういうことか。闇侯爵領のイメージカラーは黒のようで。水侯爵も水聖女も青い髪だったから、イメージカラーを持つことに意味があるって話よね?

 黒髪に日本人はあまり意味など持ってなかったから……。でも……私の髪ではなく、単に希少な真っ黒な髪ということで褒めてくれたのだとしても……。

「ありがとう」

 まだ、妹が生まれる前。母はよく言っていた。リコの髪は綺麗ね。まっすぐでつやつや。

 母が、褒めてくれた髪……。

「侍女は何をしているんだ。もっと丁寧に水気を取って乾かして手入れをしてもらえ。リコも皇帝宮で働いていたのなら、侍女の仕事は知っているだろう?」

 山賊の娘から皇帝宮で働いていた設定にイザートの中で変わったらしい。

「その侍女のことなんだけど」

「なんだ?足りないか?それとも元同僚でもいてやりにくいか?何かあればセスに言えば、追加も交代もしてもらえるはずだ。彼が皇帝宮とのつなぎ役で、人事も連絡もしてくれているからな」

 そうか。執事のセスも皇帝宮から派遣されている人なのか。責任者みたいなもの?

「侍女に、風呂の入り方も知らないから教えてあげると言われたわ」

「くっく、山賊にでも思われたか」

 イザートが楽しそうに笑いを漏らす。

ご覧いただきありがとうございます。


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