おいしいはありがたい
「というわけで、君、マチルダって言ったっけ?僕のこと知ってるみたいだから、イザートに伝えといて。リコは僕がもらうよって」
エドの言葉に、慌てて口を開く。私が行くところが無いと言ったことで同情だけで雇ってくれると言ってくれるなら簡単に約束できない。
「エド、役に立たなかったら無理して雇ってくれなくてもいいからね?だけど役に立てるように1年頑張って侍女としての知識を身に着けるから」
エドが肩を落とす。え?雇ってくれなくていいなん、て善意を無にしちゃうようなこと言ったから?
マチルダがエドに頭を下げた。
「承知いたしましたエドワード様。1年後に、リコ様が闇聖女を辞した場合、エドワード様が侍女として雇うつもりだとお伝えしておきます」
「ああもうっ!違うって、分かってるよね、リコは分かってないみたいだけれど。いいさ。1年の間に嫌でもわかってもらうつもり」
え?何が分かってないの?
「リコ、ちょっと本気でいろいろやってくるから、しばらく来られないかも。僕のこと忘れないでね」
「ふふ、忘れるわけないよ。あ、ダウジングの結果も教えるね!」
去っていくエドの姿を見送り、穴掘りに戻る。
マチルダは、もうメイにいじわるすることはないだろう。他の侍女と比べて妬む場所から抜け出したんだと思う。
「さぁーて、そろそろお昼にしましょうか」
太陽が頭上高く上がったころ、村の近くへと戻ると、私が持ってきた蒸し器のほかにも誰かが鍋を持ってきたようでジャガイモを大量に調理しているのが見えた。
「あ、リコ様!ゆでたやつも美味しかったですじゃ。じゃがいもはすごい作物ですにゃ」
年寄りが鍋の番をしていた。畑仕事はできないが料理くらいならできると、鍋の番を引き受けてくれたらしい。
「昨日のパンの料理も美味しかったんじゃが、ワシらにはこれもご馳走じゃ。村で栽培するようになれば、好きなだけ食べられるなんて夢のようじゃ」
「喜んでもらえて良かったです。あの、保存食とかでベーコンだとか干し肉だとかは村で食べることはありますか?」
ベーコンも持ってきてはいるけれど、日本だとベーコンはそれほど安い食べ物でないことを思い出したのでまだ出してはいない。
どうやらお腹が膨れるほどの量は無理だけれど、スープにちょこっと入れる程度の干し肉は山で狩りをして手に入れられるらしい。それならば。ベーコンと細かく刻んだベーコンを炒めた。ただそれだけの料理。
「なんともまぁ、ふしぎじゃの。ジャガイモに少しベーコンが混じるだけでこれまた格別なご馳走に変わるんじゃ……ありがたい、ありがたい」
試食したおばあさんがジャガイモベーコンを前に背を丸めて頭を下げる。




