働きたいんです!
「新しい自分だ。僕は今呪いから解放されて祝福を受けたんだ。……考え方一つで、こんなにも気持ちが軽くなるなんて……リコのおかげだ。リコ、大好きだ」
ああ、好きっていうのは、そういう。感謝の気持ちというか、ケーキをご馳走してくれた相手に嬉しいありがとう大好きみたいなあれか。
エドは天真爛漫だから、そういう言葉がするっと出てくるのね。勘違いしちゃうわ。私、免疫が無さ過ぎて。
そうだよ。30の平凡な……どころか山賊の娘とか言われるような私を、顔がよくて家柄もいい上に若いエドが女性として私を見るわけないのよね。
「エドワード様っ!リコ様を土まみれにするつもりですかっ!離れてくださいませ!リコ様……ん?あれ?リコ様土をかぶっては……」
エドの体が離れると、頭をマチルダに見せる。
「大丈夫よ。ふふ、でも、ほら、すでに土だらけだから、今更だけどね」
と、穴掘りであちこち土をひっつけた全身を見せる。胸ほどの高さまで掘り進んだので、掘った土を上に上げるのにかなり土もかぶっているのだ。明日からは頭に布を巻いた方がよさそうだ。マスクもあったほうがいいのかな。三角に折った布で口を覆う姿を想像する。
山賊というよりギャング……。
「分かった?リコは特別。僕が触れても平気なんだ。だから、闇侯爵より僕の方がリコを必要としてる」
エドが私の頭に顔を乗せたのかな?後ろからおなかに手を回されているので様子が見えないけれど……。
「リコ……イザートより僕を選んでよ」
エドに触れられる女性は少ないってことよね。私は聖女だからなのか、異世界から来てるからなのかでエドに触れても大丈夫。希少な人間なんだ。ただそれだけで侍女として働いてほしいって思うよね。うん。
でも。
「分かったわ!エド!私を必要としてくれるなら」
エドの手をふりほどいて、エドの顔を見る。
「本当?僕のところに来てくれるの?」
「ええ、私の方こそ、お願いするわ」
「リコ様、本気でいらっしゃいますか……」
うんとマチルダに頷く。
「1年立って、皇帝選定会が終わって、私が闇聖女の仕事を失ったら、エドのお屋敷で働かせてもらえたら私も嬉しい」
私の言葉に、エドの笑顔が固まった。
「え?仕事?働く?1年後……?いや、そうじゃなくて」
「ちょうど、闇侯爵邸で侍女の仕事の勉強もしながら1年過ごしてるから。たくさんいい先生がいるのよ?」
エドがむっとした表情をする。
「何?イザートはリコを侍女扱いしてるの?僕の大切なリコを」
エドの大切なリコ?あは。新しい自分になるために一緒に成長している大切な仲間って意味ね。勘違いしないようにしないと。
「イザート様はリコ様を侍女扱いなどしておりませんし、とてもリコ様を大切にしていらっしゃいます」
エドが首をかしげてマチルダを見た。
「ねぇ、どうして君は闇侯爵の肩を持つようなことを言うの?皇帝宮から派遣されている侍女たちの間では、闇侯爵に肩入れするような人はいないと思っていたんだけれど……」
マチルダがエドの質問にちょっと俯いた。
「そうです。闇侯爵は精霊の加護を持たないハズレ侯爵で、皇帝に絶対になれない存在だと……闇侯爵邸の侍女など人生の終わりのように感じました」
……思い描いていた未来を失った絶望。立ち直るために大変な思いをしなければならないと、妹を見ていたから分かる。




