好き?!
「だ、駄目です、リコ様は闇聖女ですから、エドワード様」
マチルダが慌てて私とエドワードの間に体を滑り込ませた。そのとき、エドの指先に触れてしまったようで、エドは慌てて手をひっこめた。
「ああっ」
「ごめん、僕に触れるとたいていの女性は土まみれになる……」
マチルダはなぜか頭に土をかぶっていた。
「嘘、エド……」
エドが悲しそうな顔を私に向けた。
「……ひどいだろ?何かを得る代わりに、何かを失う……これが僕の代償」
「エド……大丈夫なの?女性に触れられないっていうこと?お母さんは?土をかぶってもあなたを抱きしめてくれる人はいるの?」
精霊だとか魔法だとかがある世界だ。そういう体質なのか病気なのかもしくは呪いなのか分からないけれど……。
「は?母上?……あ、うん。家族は大丈夫だ。母も妹も祖母も……そうだ、僕の乳母も平気だ」
ほっと息を吐きだす。
「よかったわ」
「は?よかった?皆、かわいそうだって言うよ?」
まぁ、正直かわいそうはかわいそうだけれど……。でも。
「大切な人とは触れ合えるんでしょう?だったら逆にエドを守る祝福かもしれないわ。下心や悪意のある女性からエドを守る祝福」
エドがはっと、大きく息を吐きだし、目を手で覆った。
「祝福っ、誰もそんなこと僕に言ったりしなかった」
「マチルダなら分かるんじゃない?女って、触られたくない男性たくさんいるじゃない?痴漢だとかセクハラだとかから逃れられるなら逆に嬉しいわよね?」
マチルダが頭の土を手で払いながら頷いた。
「セクハラとは何のことか分かりませんが、確かにそうですわね。雇われた先で逆らえないのをいいことに主人に手籠めにされてしまう心配がいらないとなれば、安心して働けます」
手籠め……!セクハラとかそんなレベルの話じゃなかった!そうなんだ。例えば住み込みの仕事を見つけたとしても、そういうこともあるのか……。大丈夫かな、私。この世界のことを甘く見過ぎてるかもしれない。そういえば、よく女だと危険だから男装するみたいなシーンが本に出てくるよね。
「ははは、そうか!全くそんな視点はなかったけれど、確かにそうだな!僕も好きでもない女に夜這いされる心配がない!舞踏会で面倒なダンスもせずに済む!祝福、そうか、祝福!リコっ!」
エドが掘っている穴に飛び込んだ。
すでに胸の高さくらいまで穴を掘り進めているため、飛び降りるには高いけれどまったくものともせず私の目の前に飛び降りた。
体が弱いんじゃないのかな?と、エドの顔を見ると、エドの頬は紅潮してほんのりと色づいている。
「リコ……好きだよ、リコ」
エドの腕が伸びて私を胸に抱きしめた。
す、す、す、好きぃ?




