村で作る
マチルダのきちんと整えられた髪に、華美過ぎない隙のない化粧。磨かれた爪に手入れされた手。
そもそも皇帝宮で働き、侯爵邸へ派遣されてくるような侍女というのは、貴族の子女じゃないのだろうか?そうでなくても、それ相応の家の者。土にまみれるような生まれではないと思うんだよね。
「ご迷惑でしたでしょうか」
マチルダの表情は硬い。
それ相応の覚悟のうえでの申し出だということが分かる。
「いいえ、ありがとう。本当は誰かに手伝ってもらいたいなと思っていたの。マチルダ、お願いしてもいいかしら」
「はい」
マチルダの表情が少し緩んだ。
アイサナ村のいつもの場所にビビカが着陸すると、すでに村人たちが集まっていた。
子供たちに、昨日の10人。そしてさらに20名ほどの村人がいる。
「ジャガイモを下ろすのを手伝ってもらえる?」
じゃがいもは重たいから、大人たちがビビカから降ろしてくれた。そのわきで子供たちがそわそわしている。
「聖女様、今日もお手伝いするよ」
ミーニャちゃんが耐えかねたように声を上げた。
「うん、ありがとうね。今日も美味しい物食べようね。でもね、作ってきてないんだ。ミーニャちゃんたちが作ってくれる?」
ミーニャちゃんがえっとびっくりして目をまん丸にした。かわいいな。なんか驚いた猫みたい。
「私が作るの?」
火種を貸してもらえますか?
すぐに持ってきた簡易かまどに薪をくべ、蒸し器をセットする。じゃがいもに火が通るのは時間がかかるので、朝作ったすでに火を通したジャガイモが蒸し器には入れてある。あたため直すのにかかる時間はわずかだ。
「みなさんは、ジャガイモ栽培をしていただいてるので、そのジャガイモの調理の仕方をいくつか覚えてもらおうともってきました」
お湯がしゅんしゅんと沸いて蒸し器から湯気が激しく出始める。
「そちらの洗ってきれいなじゃがいもは料理につかいます。畑に植えるほうは、土がついているものをお願いしますね」
集まった村人たちの何人かが、ジャガイモを畑の方に運び始めた。基本は働き者なのかもしれない。
料理に興味がある者は、蒸し器を凝視している。
「変わった鍋ですね」
「ああ、これは蒸し器なんだけど、ジャガイモをゆでて作ってもいいのよ。もし蒸したい場合は、鍋の中にひっくり返した皿とか入れてその上に蒸したいものを置けばいいわ。鍋に浅く水を入れて、沸騰させるの。沸騰した時に出てくる煙みたいな湯気、あれで調理するのよ」
ちょっと下手くそな説明だけどわかるだろうか。分からなければ聞いてもらえばいいか。
「すぐに味見してもらおうと、今回はすでに蒸してあるものを持ってきたから。もうできたと思うわ」
さらにジャガイモを取り出し4頭分にしてバターと塩を乗せ、村人に差し出す。
「まずは味見分しかないけれど、この後皆でじゃがいもを蒸して作ってね。串をさして柔らかくなっているのを確認して、取り出したらバターと塩を乗せるの。バターは無くて、塩だけでもいいわ。ゆでる場合も、皮が付いたままゆでれば煮崩れも防げるし、取り出して表面の水分が飛んでから同じようにバターや塩を乗せて。はい、熱いから気を付けてね」
子供たちにもじゃがバターを渡す。
ご覧いただきありがとうございます。
小説の中では一つずつ細かく説明しない部分はありますが、主人公は基本もっと説明しています。
どれくらい蒸せばいい、煮えたかどうかの確認方法、その他、青くなったジャガイモの危険性も含み。
*念のため




