2-目覚め
「ここはどこだ?」
カミルは、まったく知らない空間で目が覚めた。
薬湯のような、でも心が和らぐ香りに包まれて、目が覚めた部屋は、きらきらと朝日が入る気持ちの良い空間だった。布団もふかふかで温かく、太陽の香りと、ハーブのにおいがする。
「傷が、ふさがっている・・・」
確かにあの日、自分は一撃を腹に受けたはずだ。即死はしなかったものの、確実に死に至る傷を負わされて、何とか近くの森に逃げ込んだまでは覚えている。
なのにこの傷の治り方はなんだ。もう何か月も前の傷のように完全にふさがり、わずかに盛り上がっているだけだ。
「若干引き連れるが、剣は触れる程度には回復している、、だがこんなことはあり得るのか?」そう考えを巡らしていると、階下で物音がしていることに気づいた。
「・・・。」
階下に降りると、一人の女性が目に入った。
台所で、ぐるぐる鍋をかき混ぜている。彼女の隣に置かれているスツールには、毛の長い猫が寄り添うように座っており、ぐるぐるとかき回すおたまを面白そうに眺めている。
「今日は玉ねぎを入れていないから、あなたも食べれるわよ」
突如彼女が言葉を発したことに驚き、また自分に声をかけられたのだと焦った。しかし、返事をしたのは隣にいた猫のほうで、
「にゃ~~ん」と、嬉しそうに答えた。
「・・・あぁ、目覚めたのね」
そんな一人と一匹に見入っていた自分に、彼女が気づいた。どうでもよさそうな、でも顔色を観察しているような、不思議なまなざしがこちらに向けられ、なぜか刺客に囲まれたあの日以上に、鼓動が早まった気がした。何も答えられないでいると、彼女は不思議そうに首を傾げ、
「どうしたの?記憶喪失にでもなったのかしら?」そう言った。
「・・・助けてくれたのですか」
精一杯で答えた言葉を耳にすると、彼女は
「まぁ、私は3割、女神さまが7割ね」と、少しだけ微笑んだ。その微笑みに、また鼓動が反応しているのが分かった。




