とある猫の日常
ここは某県某所にある由緒ある神社。
そこには一匹の猫が住み着いています。
その猫の名は『うたい』。
『うたい』は今日も自由きままに過ごします。
春、ぽかぽか陽気の気持ちいい昼下がり。
『うたい』は神社の縁の下から出て散歩に出かけます。
車通りの少ない道ですが、危ないのでちゃんと道路の端っこを歩くようです。
側溝の蓋は脚が挟まっちゃうから要注意です。踏まないように避けて歩きます。
歩いていると急に地面に横になり、ゴロゴロ、ゴロゴロと背中を擦り付けます。マーキングです。
しばらく歩くと、またゴロゴロします。ここでもしっかりマーキングするようです。
アスファルトが暖かくて気持ち良いのか、ついゴロゴロしてしまうようです。
道路の脇に生えている草を、おもむろに一口噛じります。おいしいのでしょうか。
いつもの草むらに着きました。シロツメクサやクローバーがいっぱいの草むらです。桜も綺麗に咲いてますね。
草むらをぴょんぴょんと元気に飛び回っているバッタを追いかけまわします。
テンションが上がってきて、桜の木にもすいすいと登りました。器用に枝の間を歩いて桜の花を楽しみます。
お散歩や木登りをいっぱいした後は、神社に戻り賽銭箱の上で、うとうととお昼寝する『うたい』でした。
夏、カンカン照りの炎天下。
神社にあるクスノキからミンミンとたくさんのセミの鳴き声が聞こえてきます。
この暑さで『うたい』はグッタリです。散歩にも行かずに涼しい縁の下でゴロゴロしています。
しばらくグダグダすると、意を決して起き上がりました。どうやら散歩に行くようです。
いつも通り地面や道端のフェンスにマーキングをしながら、散歩します。
おっと、何やら地面をクンクンと嗅ぎ始めました。他の猫の匂いが付いているのかな?
通りの向こうを見ると住宅のカーポートに止めてある自動車の下に他の猫がいました。お友達のようです。
お友達の猫も、この暑さでとろとろに溶けています。日照りを避け、少しでもヒンヤリした場所を探して耐え忍んでいます。
夜になりようやく気温が下がってきました。
神社に戻ってきた『うたい』は、参道でゴロゴロと夕涼みです。
温度の下がった参道の石畳、少しでも冷たさを味わおうと身体を伸ばします。思いっきりのびのびしながら眠りにつく『うたい』でした。
秋、はらはらと落ち葉の舞う午後。
寒くなる冬に向けて、『うたい』も衣替えの季節のようです。身体を覆う被毛は、もこもこの冬毛に生え変わり始めています。
しとしとと雨が降ってきました。今日はお散歩は休みでしょうか。こんな日もあってもいいのかもしれません。
ただただ降り注ぐ雨を見ながら、縁の下でだらだらしている『うたい』は、いつの間にかお昼寝してしまいました。
夕暮れになり雨が止みました。『うたい』はここぞとばかりにパトロールに出発です。
脚が濡れないように、なるべく水溜まりを避けて歩きます。少し濡れたら、脚を上げてぶるぶると振り、水を切りながら歩きます。
喉が乾いたのか、水溜まりの水を飲み始めました。舌でペロペロと水を飲んでいます。
水溜まりのそばで、アマガエルがぴょこぴょこ跳ねています。手は出しません。興味がないようです。
夜になり神社に戻ると、スズムシの大合唱を聴きながら眠りにつく『うたい』でした。
冬、しんしんと雪が降り始めた頃。
寒さを凌ぐために、『うたい』はもこもこの冬毛に包まれて丸まっています。
この時期になると町中の猫たちが、この神社に集まります。
普段はバラバラに行動している彼らも、厳しい寒さの冬をやり過ごすために、互いに身を寄せ合い過ごします。
うっすらと雪が積もる境内、狛犬の頭にも少し雪が乗っています。
神社の縁の下で、団子になっていた猫たちもゴロゴロするのに飽きたのでしょうか。遊びたがって何匹かがじゃれ合い出します。
雪が止むのを見て、『うたい』は起き上がると、縁の下から出て境内を歩き始めました。散歩に行くのでしょうか。
うっすら積もった雪の上に肉球のスタンプがぽんぽんと押されます。
しかし、肉球が冷たくて堪らず引き返し、結局みんなとじゃれ合い始めます。
暖かい春がとっても待ち遠しい猫たちなのでした。
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