結(ケツ)
痔は無事に弾けました。
ものすごく汚い話です。
痛みが常習化してしばらくしたある日。
僕の中で何かが弾けた。
いや、正確には「中で」では無い。外だ。
ついに僕のイボ痔が弾けたのだ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
人生で味わうことのない味わなくても良い痛みが肛門を襲う!
例えるなら腸の一部をペンチで挟んで捻り上げてるような痛みだ。
いや、一旦落ち着こう、落ち着いて冷静になろう。
今にも痛みで我を忘れそうになるが一旦冷静になろう。
まずは状況確認だ。現場はどのような状況になっているか確認するのが大事だ。
火事とは違って鎮火してから状況確認とはいかないが急いで公衆便所に駆け込み状況を確認する。
......事故現場は凄惨な状況だった。
パンツは血に塗れ、お漏らしと大差ない状態まで血が弾け散らしていた。
とりあえず応急処置としてアナルに八つ折りにしたティッシュをキュッと挟みパンツを履く。
先ほどまでは剣道のすり足のようにしか歩けなかったがティッシュのおかげで大分摩擦が軽減された。
今が外での仕事中でなかったのが唯一の幸いだ。
近所での買い物の最中だったので急いで電車に駆け込む。
急いで、と言っても実際には普通に歩くのにも手一杯なので杖をついたおじいちゃんよりも歩みは遅かっただろう。気持ちとしてはフルマラソンを全力で走るくらいに体力を使ったが。
電車でも迂闊に椅子には座れない。
椅子、服にシミを作るのではないか?それより座った時にケツや爆心地のポジションが悪ければ俺は生きていられるか分からないからだ。
1秒が1分に感じられる。とてもとても長い時間を電車で過ごし、焦りと不安と痛みを東京フレンドパーク並みの「まだよ、まだよ」で抑え込む。
死に物狂い、もといシリ物狂いで自宅に駆け込み人生最速で靴を脱ぐ。
正直うんこ漏らしそうな時より焦っている。
だが今回はうんこではない。痔だ。今回駆け込むのは風呂場だ。
急いでズボンを脱ぎたいがこういう時に限ってベルトが上手く解けない。
焦りでベルトを無駄にカチャカチャしてしまう。
脱げた!急いでパンツを下ろし風呂場で爆心地の血を洗い流す。
ティッシュは血に染まりしっとりとしていた。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あぁぁぁァァァ!!!!!!」
シャワーのお湯がアナルに当たる。
それと同時に僕からも悲鳴が出る。
都心で7畳1DK。築7年。中々に悪くないゆったりとした部屋。
そこに血まみれのケツ丸出しの男の悲鳴が響き渡りここは地獄と化していた。地獄でもここまで悲惨で醜いものは中々見られないだろう。
………
……
…
一通り洗い流し、一旦落ち着いた。痛みは落ち着いていないがやっと痛みにも向き合うことができるようになっていた。
ここでやらなくちゃいけないことがある。そう傷口の確認だ。
だがどうやって?人間は自分のアナルは見えないようにできている。
背中は他人に生き様を語るもの。見えはしない。
アナルは物理的に人間の最も汚いところ。見えてはいけないところ。
覚悟を決めた俺はアナルを鏡越しで見ようとしたが中々見れない。
ヤンキーみたいなうんこ座りでは風呂場だと光が届かず見れないのだ。
恥も感慨も捨ててアナルにiPhoneを近づけ写真を撮ることにした。
自分のアナルの写真なんか撮りたくないし、フォルダにも入れたくないが仕方ない。
パシャッー。
生まれて初めて見る自分のアナル。
そこにはパンパンで真っ赤に腫れて血の涙を流す人差し指の第一関節ほどある蚕豆さんがいた。
この後痛みに耐えながら治療する話になりますがそれはまた今度治療編として気が向いたら書きます。
もし見てる人がいればそんな感じです。
ケツは労りましょう。