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誤解


「そうか、午後からダンスのレッスンがあったのか」


 まだ時間まで一時間はあると思って声を掛けたのだが、女性は支度に時間がかかるものだったなと納得する。


(ああ、ごめんなさいロイズ様。あなたの為なのです……! すきです)


 ソフィアは伝われ、この想い(すき!)を綺麗な退出の礼に込めた。


「失礼いたしますわ。またお声がけくださいませ」


「ああ、ありがとう」


 ロイズ王太子はしっかりと目に焼き付けた。


(やはり今日も可愛いな。好きだ、ソフィア)


 ロイズ王太子も伝われ、この想い(すきだ!)を目力に込めた。






 ソフィアが行ってしまったあとでロイズ王太子はチェス盤の下からチケットを取り出してその公演の日付を再確認した。


(明日か……)


 ソフィアが明日空いているのを事前に調べてはいるが、明日誘ったのではいくら何でも急すぎる。なんとかして今日中に、いち早く、自然に渡したいものだ。


(とはいっても私も午後からは帝王学の授業と剣の稽古が控えている)


 王太子は手ずから渡すことを断念した。とりあえず届けばいいのだ!!!!!


「すまない、チャールズ、このチケットをソフィアに渡しておいてくれないか」


 チェス盤を片付けにやってきた従者にロイズ王太子はチケットを一枚渡した。連番で購入したこれはロイズ王太子の持っているもう片方と隣同士の席配置のものだ。


うやうやしく受け取ってチャールズは確認をとった。


「ロイズ殿下からとお伝えしてもよろしいですか?」


「いや、いい」


ロイズ王太子は冷たく(見える物言いで)いい放った。


「単に渡してくれたらいい」


その蒼の瞳は冷たかった(ように見えた)。

ロイズ王太子は内心の自分への失望をその蒼い瞳に露わにしていたのだ。


チャールズは寒気がした。不仲説が流れているが、手渡しで渡すのも嫌なくらい二人の仲は冷え切っているようだった。




「そこでターン。綺麗ですわ素晴らしい」


 ダンスレッスンの講師が拍手しながら絶賛する。それもそのはず、ソフィア公爵令嬢はチェスの勉強の合間を縫って、全身鏡でフォームを確認しながらの自主レッスンでもう身体が自然に動くレベルで何度も通しでしていたのだ。軽く息を整えながらソフィアはタオルで汗をぬぐった。ダンスレッスン終了の鐘が鳴る。


 ダンスレッスンの部屋を出てすぐに、扉の前で待機していたチャールズに声を掛けられてソフィアの碧の瞳は丸くなった。


 彼女からすれば、茶髪に紫の瞳のなつっこい子犬のような青年が、城の白の規定服を着て突っ立っているようにしか見えなかったのだ。まるで熱心なファンかのように出待ちをしている。


「お疲れさまでした」


 唐突にチケットを差し出されてソフィアは困惑しながらそのチケットの内容に目を通した。うかつに受け取ってはならない。この魔境(城内)では何が起こるかわからないのだ。


(これは……観劇のペアチケット!?????)


 カップルシートを使うペア限定の入手困難な品だ。人気すぎて高額転売が相次ぐとかいう噂で社会問題にも発展し、ソフィアもニュースで聞いたことがある。


 ソフィアの背筋が凍った。これは受け取ったら不貞を疑われるに違いない。ハニートラップだ!!!!


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