第5話〜スタングレネード
ミキズの街、とあるマンションにて
男は狙撃の成功を確認すると無線をとった。
「タカよりコンドルへ。狙撃は成功、¨怪人¨は死んだ。繰り返す。狙撃は成功、¨怪人¨は死んだ。」
一拍おいて無線機から返答がある。
『こちらコンドル。よくやった。¨鷹の目¨に恥じない成果だ。後はA班が処理する。早急にその場をあとにしろ。繰り返す。後はA班が処理する。早急にその場をあとにしろ。』
「こちらタカ。了解した。早急にこの場を離れる」
男は無線を切ると、銃を解体してバックに収納しようとする。
しかしスコープ越しにアパートの中で¨侍¨が無防備に立っている姿が見えた。
(これはチャンスか…。一気に能力者を2人殺ったとなれば中央にも…。)
男にふと沸いた考え。
普段冷静な男は、能力者の一人を殺した達成感から油断していた。
そしてそのまま狙いを定めると連続で2回引き金を引いた。
(…な、なんだと!?)
スコープ越しに信じらんない光景が映し出されていた。
全く動かずに2発の銃弾を両断する¨侍¨。
優れた動体視力をもつ男にはどうにか動きが見えたが、普通ならありえない動きだ。
(ば、化け物めっ…!)
ようやく己の失態に気づいた時にはすでに遅い。
スコープ越しに見えたのはこちらに向かって走り出した¨侍¨の姿だった。
男は急いで銃をしまい、部屋に証拠が残っていないか確認すると部屋を出ようとする。
瞬間。
ガシャン!
破壊音とともに後ろに気配が生じる。
「!?」
男が振り向くとそこには風通しのよくなった壁と、般若の面をつけ、スーツを着た男の姿があった。
「……。」
般若の面をつけた男は無言で佇んでいる。
「¨侍¨だと!?まさか、早過ぎる!」
男が狙撃に失敗して撤退に至るまで、まだ数分も経っていない。
(クソッ!こうなったら…!!)
正面からでは勝ち目はないと見た男は、手首から足元の鞄に伸びている紐を引っ張る。
(スタングレネードで不意をつくしかねぇ!)
しかし引いた紐に手応えはなく、閃光に備えて目を閉じてしまっていたため、逆に無防備な状態になってしまった。
そして男が最期に見たのは、途中で切断された紐と、¨侍¨の腕がブレ、一筋の白い光が自分の首を通り抜ける現実だった。
ミキズの街、B地点付近より




