第21話〜記憶
¨怪人¨、記憶にて
¨怪人¨は一瞬でスヤマギの意識を乗っ取り、記憶に溶け込んでいった。
(……第一研究所…¨マリア¨……マグヌソン……)
記憶の層の中からキーワードを選んで¨思い出して¨いく。
そしてお目当ての記憶を見つけると¨再生¨していく。
(これは10年くらい前の記憶かしら?)
記憶はスヤマギの視点で再生されていく。
まばたきなどで映像が途切れるが、基本的に自分が体感しているように同調している。
記憶の中でスヤマギは第一研究所で実験をしていた。
目の前のベッドに固定されている少年に、何やら得体の知れない液体を注射している。
すると少年は狂ったように暴れ始めた。
拘束具が軋みを上げ、さらに研究員数名が抑えつけるが、見た目には有り得ないほどの力で暴れている。
そして見る間に体が変化していく。
末端から始まり、だんだん表皮が鱗に覆われていき…
(まさか、¨ツチノコ!?)
まだ少年と言っていい年頃の¨ツチノコ¨が、スヤマギの手で人外へと変貌させられていく。
それに¨怪人¨はどうしようもない気持ちになる。
隣のベッドには全身から骨が飛び出している少年がいる。
その隣には獣のような少女も…
¨怪人¨はやるせない気持ちでこの記憶を飛ばす。
そして場面は切り替わり、目の前にマグヌソンが現れた。
どうやら会議室のようだ。
その会議でスヤマギは第十二支部に転属させられる。
(行き過ぎたか…)
記憶を遡っていくと、気になる映像が現れた。
(これは…あの体の持ち主に関する記憶…?)
スヤマギは研究所の地下にある研究室にいた。
そしてその部屋の壁に隠された扉を見つけると、しばらく躊躇うように左右を確認するとそこに入ってしまった。
そこには数多くのディスクと写映機があった。
ディスクには一年とその月ごとの日付が記してあった。
スヤマギはそれらに触れることなく部屋の中を見て回った。
そして奥に扉があるのを見つける。
そしてその奥には…
(……!?)
第十二支部、支部長室にて
「……ッ!」
¨怪人¨はスヤマギに触れると、1分ほどで手を離し荒い息を吐いた。
「大丈夫かい、¨怪人¨?」
「…えぇ」
¨ドクター¨が声をかけると¨怪人¨は心ここに在らずといった様子で返事をした。
少し考え込むと、¨怪人¨は退却を促した。
「いったんあの喫茶店に戻りましょう。¨侍¨がもうすぐ来るわ」
そう言って立ち上がる。
¨ドクター¨は¨怪人¨の普段と違う様子な気がついたが、¨侍¨の怒りに触れることを避けるため¨怪人¨と共に立ち去った。
数分後、第十二支部、支部長室にて
「…ッ!」
スヤマギが目を覚ますと、秘書と共に支部長室の床に倒れていた。
「一体何が…」
スヤマギが体を起こすと同時に扉が音もなく細切れになる。
「な、何だ!?」
扉の向こうには前髪と仮面で顔を隠し、スーツの上に白い上着を着た男が立っていた。
「¨騎士¨…?」
そう呟いた次の瞬間、スヤマギの意識は永遠に途切れた。
第十二支部近くの喫茶店にて




