第1話〜怪人
シボリン地方南部ミキズの街にて
落ち着いた雰囲気の街の中、アユーベの通りは活気に満ち溢れている。
買い物客で賑わうその通りで、通り過ぎて行く人々が振り向くほどに存在感を放つ女性がいた。
「おじさん、これとこれちょうだい。あとあの棚のも2つね」
透き通るような金髪。
耳に優しく染み込む柔らかい声。
まるで宝石のようにきらめくエメラルドグリーンの瞳。
すらりとした脚にくびれた胴、ボリュームのある胸。
全てのバランスがまるで黄金比のように整ったその姿は見る者全てを魅力した。
まるで細工師が長年かけて作り出した等身大の人形のようだ。
もし彼女が人形で、それを作り出した者がいたなら間違いなく世界でも屈指の腕前だろう。
そんな彼女に話しかけられた男は、見て分かるほどに顔を赤くして動揺している。
隣にいる恰幅のいい妻までも彼女に見とれているのだから当然だろう。
そんな調子で買い物を楽しんでいた彼女だが、ふいに周囲を見渡すとそのまま路地に入って姿を消した。
女性に見とれて動きを止めていた人々も買い物や仕事に戻り、しばらくするとアユーベの通りにはいつもの日常が戻ってきた。
とあるマンションより
「こちらスネーク。¨怪人¨を見失った。繰り返す。¨怪人¨を見失った。」
『こちらコンドル。¨怪人¨はタカが監視している。繰り返す、¨怪人¨はタカが監視している。スネークは待機、待機せよ。』
「こちらスネーク。了解した。待機に入る。」
ミキズの街、とあるアパートにて