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没落貴族だけど転生したら最強モンスター一家になっていたので世界を相手取ります  作者: ガラムマサラ
第二部 グリフォンブラッド家の野望 ―――廃地絶空戦線 編
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25



 ゾンビ(シグル)はニーヴェの空を、大急ぎで王宮に向かって飛んでいた。


(数分前から兄さんからのオスクロンの水玉の返信が途絶えている)


 いくらグランに呼びかけようとも、応答がない。

 未だかつて、このS+クラスのアイテムが機能不全に陥ることなど一度もなかった。

 つまりこれは明らかな異常事態だ。


(なにかが起こっている……!)


 今この国に残っている戦力で、列強種の兄をどうにかできる者など皆無だが、しかし少なからず、S+級の力を跳ね返すなにかはあるということだ。


(急いだほうがいい)





「せんぱい、どうしたんですか? そんな顔して」


 ふと声をかけてくるキョーカノコに、シグルはなんでもないよと返す。

 彼女は明らかに訝っていたが、そうですかととりあえず納得した。


 今、シグルたちはチゲの家に彼女を送り届けることに成功し、幼い姉妹の涙ながらの再会を見届けている最中であった。

 キョーカノコにとってこの手の無意味な善行は日常茶飯事であり、故にその再会を目の当たりにしても至極平然としていたが、意外なことにヴェロリカはひとり謎の感動で涙をボロボロと流して喘いでいた。


「宮殿の方、騒がしいですね……。グレイさんたち、無事追いつけたのでしょうか?」


「どうだろうな」


 とっくに死んでいるが、シグルは上の空を返した。

 そしてそうしながらも、彼はゾンビの操作を続けている。


 彼の扱う魔術触媒は『心象』であり、心の中にイメージを点すことで魔術を発動するという極めて特異な発動手段をとっている。

 思考のみで魔術を発動するというのは一見ものすごく強力であるようにも感じられるが、実のところかなりあくの強い扱いづらい性質といえる。

 というのも実際の行動とは異なり、頭の中だけで行う思考というものはどうしたって不安定であるからだ。

 魔術は極めて精密な技術であり、その不安定さは暴発と死に直結しかねない。

 故に、心象術者は、魔術を発動するために、そのイメージをどうしたって揺るぎようのない確固たるものに固める必要がある。


 しかしここで考えてみて欲しいのが、人間がいったいどの位のイメージの数を、確固たる揺るぎないものとして自身の中に持つことができるのだろうということだ。


 仮に今、あなたが最も近しい者の顔を心の中に思い浮かべたとして――

 その顔は間違いなく当人と等しいだろうか?

 鼻は? 目は? 口は? 表情は? ぼやけてはいないか? 子細たしかなビジョンとして思い浮かべているだろうか?

 もう一度やり直しても、それは毎回まったく同じものであろうか?

 きっと、答えは否だろう。

 極論を言えば、人間の脳ができる働きは記憶であり、記録ではない。

 故にたびたび顔を合わせる者の姿形ですら不定であり、恣意的であり、時に記号としての概念に留められてさえする。


 記憶すらもまともに再現できない人間の思考が、未経験の現象を明確に想像(ヴィジョン)できるはずもなく、仮に可能にできたとしても、その個人が持ち合わせられるヴィジョンの数はせいぜい――

 普通は一つ――多くても二つ――。


 使用できるまでのハードルが極めて高く、それで扱えるようになる魔術の数もごく僅か。

 しかしそれらを乗り越えてこの触媒で発動される魔術の性能は――


 ○範囲(魔術効果を及ぼせる広さ)     SS評価

 ○速度(魔術発動時のラグの少なさ)    SS評価

 ○持続(魔術効果の持続時間)       SS評価

 ○精密(複雑な構成の魔術を使用できるか) SS評価


 という、全ての項目を最高評価水準で取り扱われることになる。


 心象はそのような、ピーキーな性質の触媒である。


 シグルがこの触媒を選んだのには理由がある。

 つまり、ゾンビを操作する上で常に付きまとう、魔術師用範囲制限の問題だ。

 心象にはなんといっても、術者が『イメージできてさえいればどこまでも発動し続けられる』というずば抜けた利点がある。

 仮に彼の触媒が視線であったなら、ゾンビは彼の視界でしか活動は不可能だ。

 詠唱なら声の届く範囲。

 刻印は範囲が広大だがリアルタイム操作には骨が折れるし、本来無敵であるはずのゾンビに刻印という心臓部(弱点)を設ける必要がある。


 故に彼は心象を選んだ。

 おかげで外れ素性と言われる『精神干渉』しか扱うことはできなくなったが、おかげで能なしだとか陰口たたかれることにもなったが、しかし――


 関係ない。


 彼の悲願は最強の魔術師になることではないのだから。


 ――殺すこと。


 アスガルドの血族を、


 あの皇族どもを、


 皆殺しにすること。


 それこそが彼にとっての生きる意味。


 だから、その為に必要なゾンビを最大限活かすことだけに彼は精力を注いだ。



 全ては、我が愛すべき家族のため。




「急がないと」


「何がですか?」


 声に出てしまった呟きに、尚もキョーカノコが反応してくる。

 今度はそれに返事はせず、上辺の上の空の奥底で、国の空にいるゾンビにへと意識を集中させた。

先週末より突如として私のことを蝕みだした発熱性かぜ症候群ですが、もうほんっとうにたちが悪いです。強い、マジ強い。治んないですなんでか。すごい。もう。

皆様もどうか、お気を付けくださいまし。


今週末こそはしっかり寝て完治させたいところですが、書きたい衝動がすごいので書いちゃうぜえ。


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