第三十二章 広美、隆の護衛する
高速道路を京都に向かって走る車の中で隆は、「そろそろ子供作るか?」と子供が欲しそうに雑談を始めた。
広美は、「子供は天からの授かりものよ。避妊はしてないから、妊娠した時がその時よ。」と自然に任せる事にしていた。
隆は、「普通はもっと計画的に考えないか?丸でいきあたりばったりじゃないか。」と広美の無計画さに驚いていた。
広美は、「計画的だなんて、子供はおもちゃじゃないのよ。第一生まれて来た子供になんて説明するのよ。あなたは計画的に作られた私達の人形だとでも説明するの?」と広美はあくまでも自然に任せようとしていた。
隆は、「芸者らしい考え方だな。」と雑談していた。
京都に近づくと、車が渋滞してきた。
広美が、「車も動かなくなってきたので夕食にしない?」と大津のサービスエリアに入った。
車から降りると広美は、「あつ~一気に現実に戻ったわね。」などと雑談していた。
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広美と隆がレストランで食事していると、広美の携帯に緒方係長から着信があった。
緒方係長は、「軽井沢に避暑に行くと言っていたが、軽井沢はどうだった?もう京都に帰って来ましたか?」と雑談を始めた。
広美は、「ええ、軽井沢は涼しく気持ちよかったです。今、大津まで帰ってきて暑さで現実に戻りました。ところで何かあったのですか?時間外に残業までして、こんな事でわざわざ電話してくるとは思えないわ。」と携帯ではなく、京都府警の電話番号でしたので何かあったのだと判断して本題に入ろうとした。
緒方係長は、「長野県警から殺人事件の捜査協力の依頼がありました。容疑者を目撃した可能性のある人物がいる事が判明して捜査すると、どうやら高木君、君らしいです。口封じで犯人に襲われる可能性がある為、充分注意して下さい。捜査を担当した前田君と替わります。」と電話を前田刑事と替わった。
前田刑事は、「御苦労さまです。前田です。長野県のホテルの通路で若い女性の絞殺死体が発見されました。そのホテルはプライバシー保護の観点から宿泊者名簿もなく防犯カメラもありませんでした。」と説明を始めた。
広美は、「何、それ。そんな怪しいホテルに宿泊する客がいるの?」とまさか私が宿泊したラブホテル?その他に怪しいホテルには気付かなかったわ、と嫌な予感がした。
前田刑事は、「ただ、トラブルが発生した時の為に車のナンバーを控えているそうです。その車の持ち主を各都道府県に確認しているそうです。京都ナンバーの車もあり、持ち主を確認した所、高木隆の名前で登録されていました。調べると主任のご主人さまでした。怪しいホテルに宿泊した主任、軽井沢の“ラブホテル”はどうでしたか?」と笑いながら確認した。
広美は、「ラブホテルを強調しないでよ。軽井沢旅行は急に決まったので、予約なしで宿泊可能なのはラブホテルしかなかったのよ。夫婦だから問題ないわよ。」と不味い事を前田君に知られて噂にならないか心配していた。
前田刑事は、「ラブホテルには色々とHな仕掛けがあるのでしょう?主任にそんな変態趣味があったとは知りませんでした。」といつも虐められているのでここぞとばかり仕返しをしていた。
広美は、「それはセクハラ発言よ。後藤刑事に嫌われてチームワークが保てないでしょう。一課長に報告して処分の対象にするわよ。そんな事より事件の話がないのは何故?肝心な話をしなさいよ。」と本題に入ろうとした。
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前田刑事は、「申し訳御座いません。長野県警の説明では、被害者の女性は所持していた免許証から塩崎裕子さんと判明しました。現在、塩崎裕子さんの男性関係を洗っています。ただ、塩崎裕子さんの死亡推定時刻に主任の車がラブホテルに入ってきています。不信な人物に気付きませんでしたか?」と広美が何か見てないか期待した。
広美は、「ええ、男性が慌てて出て来たわよ。ラブホテルで一人だったので不信に感じたけれども、女性は既に車に乗っているのかな?と気にもしなかったわ。」と男性とすれ違った事を証言した。
前田刑事は、「ラブホテルで一人は充分不信人物じゃないですか。いつもの主任だったら決して見逃さないでしょう。不信人物より変態行為をする事で頭が一杯だったのですか。」と広美をからかった。
広美は、「何度も言わせないで!私は一課長秘書よ。捜査一課から追放されたいの!」と切れた。
前田刑事は、「ちょっとしたジョークですよ。主任、不審人物の顔は見ましたか?」と確認した。
広美は、「私は後姿しか見てないけれども、主人が顔を見ているかもしれないわ。ちょっと待ってね。」と携帯を通話状態で隆に確認した。
広美から事情を聞いた隆は、「えっ?あの男が殺人犯の可能性があるのか?顔は、はっきりと見たよ。モンタージュ写真作成に協力できるよ。」と広美に協力しようとしていた。
広美は前田刑事に伝えて、明日出勤時に、主人も同行する事を伝えた。
前田刑事は、「それでは明日お待ちしています。主任がついているのでめったな事はないと思いますが、犯人の顔を見たのであれば、くれぐれも犯人の襲撃には注意して下さい。」と広美の事を心配していた。
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食事を終えて、広美が支払いしている間に隆は先に車に向かって歩いていた。
広美が支払いを済ませて車に向かうと、怪しい男が、車に乗ろうとしていた隆に背後から迫っていた。
広美は、男が刃物を持っている事に気付いて、「隆!危ない、後ろ!」と叫んだ。
隆は広美が叫んだ為に男に気付いて、刺される瞬間に避けた為に致命傷は負いませんでしたが、左腕を刺された。
広美が駆け寄ると、男は再度隆を刺そうとしていた為に広美が、「やめなさい!」と油断したと反省していた。
周囲の人も事件に気付いて、隆も抵抗したので逃亡しようとした。
隆が、「待て!」と男の足を掴んだ。
男はナイフで刺した隆の左腕を蹴って、車で逃げようとしたが、他の客が犯人の車の前に自分の車を停車させて発進を阻止した。サービスエリア内だった為に、車を乗り捨てて、雑木林に逃げ込んだ。
隆は、「ラブホテルで見たのはあいつだ!俺の事はいいから、あいつを追え!」と腕利き刑事の広美が犯人を取り押さえてくれる事を期待した。
隆はタオルで腕を縛り出血を抑え、広美の職場に電話して事情を説明して、今、広美が犯人を追跡中だと伝えた。
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しばらくすれば、広美が駐車場に戻ってきて、「取り逃がしたわ。隆、大丈夫?でも、こんな場所で襲ったら、それこそ大勢に目撃されるとは考えなかったのかしら?」と不思議そうでした。
隆は、「今は、サングラスとマスクで顔を隠していただろう。襲われた時にサングラスとマスクを剝ぎ取ると、間違いなく、あいつだった。ラブホテルで人と会う事は滅多にないから、あの時は油断していたんだろう。」とここで襲われた理由を推理していた。
広美は緒方係長に連絡して、「主人が襲われました。私がついていながら申し訳ございませんでした。犯人は、主人が軽井沢のホテル駐車場で目撃した人物でした。顔を見られた主人の口を塞ごうとした可能性があります。出血が止まらないので、これから主人と病院に行き、それから京都に帰ります。主人を襲った犯人を私が逮捕します。」と報告した。
緒方係長は、「捜査のルールは知っているだろう。君をこの事件から外します。西田副主任に捜査の指揮を任せます。高木君、君の主人は犯人から狙われています。滋賀県警に緊急配備の依頼をしたが、犯人が逮捕されるまで、君には主人の護衛を命じます。一日中貼り付け。勿論寝室や風呂もだぞ。これは君にしかできない。自宅に帰る前に署に立ち寄り拳銃を携帯して下さい。」と指示した。
電話が終わると広美は、「お仕事よ。隆の護衛を命じられました。これから病院で応急手当して署に立ち寄り拳銃を携帯して帰宅するわ。署まで付き合って。」と隆に依頼した。
隆が、「お前が俺の護衛するのか?」と確認した。
広美は、「ええ、私だと他の刑事と違って、寝室や風呂場も護衛可能だから。それに、夫婦が一緒にいても不自然ではなく、刑事が護衛しているとは思わないでしょう?」と説明した。
隆は、「護衛に気付かれない?それは俺に囮になれという事か?俺を殺す気か!」と不満そうでした。
広美は、「私が一緒にいるから大丈夫よ。あなたに指一本触れさせないわ。」と笑顔で隆の肩を軽く叩いた。
隆は、「何が指一本だ!今でもナイフで刺されたじゃないか!」とトイレなど、一人で護衛するのは限界があると感じて、自分の身は自分で守るしかないと諦めた。
広美は、「今は急だったからよ。貼り込みなどの時は、のんきにレストランで食事なんてしないわ。おにぎりやパンなどで済ますわ。」と今後は大丈夫だと説明した。
隆は、「一緒にいるって、俺の職場にまで来るのか?」と迷惑そうでした。
広美は、「そうしないと護衛できないでしょう。嫌だったら、事情を職場に説明して仕事を休めば?私はどちらでもいいわよ。仕事だから、隆がどこへ行っても、ついていくわよ。」と説明した。
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翌日隆は京都府警でモンタージュ写真作成後、「モンタージュ写真を作ったので、もう俺の護衛は必要ないだろう。」と護衛を迷惑そうにしていた。
広美は、「それを犯人は知らないでしょう?何故私の護衛を嫌がるの?浮気相手と会う約束でもあるの?」と護衛はまだ必要だと告げた。
隆は、「俺についてくるのか?取材の邪魔はするなよ。」と職場に出勤した。
隆が取材中、少し離れて様子を見ていた広美は、モンタージュ写真の男が目だし帽を被ろうとしている事に気付いて、緒方係長にモンタージュ写真の男発見を報告した。
容疑者は、周囲に人がいない事を確認して、ここで襲おうとしている様子でした。
刑事達が到着する前に、容疑者が隆に近づいた。
刃物を確認した広美が容疑者の前に出て警察手帳を提示し、「京都府警の高木です。銃刀法違反の現行犯で逮捕します。」と告げた。
隆も広美の声で気付いて後ろ向いて、「お前!俺を殺す気か!」と怒鳴った。
犯人は警察手帳に驚いて逃げ出したが、そこへ覆面パトカーで到着した前田刑事と須藤刑事に広美は、「容疑者身柄確保!」と叫び、広美も駆け寄った。
犯人が刃物を振り回して抵抗していると、近くの路地から小学生の女児が出てきた。
犯人が女児を人質に取ろうとした為に広美は、「その子は関係ないでしょう!」と後先考えずに犯人に体当たりして女児を庇い、転倒した犯人を前田刑事が逮捕した。
広美は刃物で左腕を刺され女児も転倒して軽傷を負った。
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隆は、その一部始終を撮影していて、犯人が逮捕された事を確認した隆が、「広美!大丈夫か!」と駆け寄った。
広美は、「私の事を心配して駆け寄るより、何故写真が先なのよ。私より仕事の方が大事なの?」と隆の行動が納得できませんでした。
隆は、「広美の優しさを世間の人に解ってもらおうとしたんだ。」と説明した。
広美は隆に、「隆!この男に間違いないわね。」と確認した。
隆は、「ああ、間違いないよ。軽井沢では顔を隠すのが遅かったな。俺と目が合ってから顔を隠しても手遅れだ。逆に慌てて顔を隠したので、お前の顔は深く印象に残ったよ。」と認めた為に、広美は署に連行して長野県警に引き渡した。
週刊誌には、“京都府警の鬼軍曹、わが身を犠牲にして女児を救う”と広美が怪我している写真とともに、大きく取り上げられていた。
次回投稿予定日は、10月1日を予定しています。




