第二十八章 広美、やくざに襲われ負傷する
ある日、広美はお座敷を終えて帰り道、竜神会の組員数人に襲われた。
高島が、「先日はよくも警察にチクッてくれたな!」と広美に刃物を向けた。
広美は緊急発信のスイッチを入れて、「通報されて困る事をしていたあなた方に問題があったのではないですか?」などと話し合っていた。
その頃京都府警捜査一課三係では、宿直の前田刑事が広美の緊急発信の信号に気付いて、緒方係長を始め、刑事達に緊急発信の場所を伝えた。
緒方係長は、「柔道の達人である高木主任が助けを求めるとは余程の事だ。至急全員に向かわせろ。俺も直に向かうが時間がかかる。最寄りの交番に連絡して、交番巡査に至急向かわせろ。」と指示した。
前田刑事が最寄りの交番に緊急連絡して、刑事達も発信場所に向かった。
広美が竜神会の組員数人と争っていると、最初に最寄りの交番巡査が到着した。
竜神会構成員の荒木が、「邪魔するな!」と交番巡査を銃で撃った。
広美は交番巡査に駆け寄り、「あなた何でこんな酷いことするの!」と荒木と話をしている間に、広美は交番巡査の銃を取り出していた。
高島は、広美がただの芸者だと思い、「芸者に銃が撃てるのか?引き金を引いても弾丸は出ないぜ。」と油断していた。
高島が荒木に、「刃物でなぶり殺しにしようとしたが、思ったより手強いので銃でなぶり殺せ!腕から出血しているから次は足だ。足を撃て。」と指示した。
荒木が、「右足か左足かすねか太ももか足首か?どこがいい?」と銃を構えた瞬間、広美は交番巡査の銃で荒木の肩を撃ちぬいた。
高島は、「鶴千代、お前いつの間に安全装置を外したんだ!何故銃の扱いに慣れているのだ!素人は引き金を引く時に躊躇うぞ。」と人気芸者が銃の取り扱いに慣れている事が信じられない様子でした。
広美は警察手帳を提示し、「京都府警捜査一課の高木です。」と高島を睨んだ。
高島は、「鶴千代、お前が鬼軍曹だったのか。」と鬼軍曹の意外な正体に驚いた。
そこへ広美の部下が到着した。
竜神会の構成員数名逮捕したが、高島は逃走した。
緒方係長の指示で駆け付けた警官隊が竜神会の組員を連行した。
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その後前田刑事が、「主任、腕から出血していますよ。」と広美が怪我をしている事に気付いた。
緒方係長が広美の怪我を見て、「出血が止まらない。病院に行こう。西田副主任、後をお願いします。」と現場の事は西田副主任に任せて、広美を警察病院に連れて行った。
緒方係長は覆面パトカーで移動中に隆と初美に事情を説明して今から警察病院に連れて行く事を伝えた。
緒方係長から知らせを聞いた隆と初美は、血が止まらないと聞いて、広美を心配して警察病院に駆け付けた。
広美は、「軽傷だから大丈夫よ。」と隆を安心させようとした。
診察室に一緒に入った初美が、「傷は結構深く、決して軽傷ではありませんので甘くみないで下さいと外科医が仰っていましたよ。」と広美に無理させたくなくて刑事達に診断結果を伝えた。
緒方係長は、「高島は逃走したので指名手配するが、高木主任、充分注意して下さい。念の為に、署に立ち寄り銃を携帯して帰宅して下さい。」と指示した。
広美は隆と署に立ち寄り、銃を携帯して帰宅した。
マンションで隆は、「広美、警察はお前の護衛をしないのか?」と不思議そうでした。
広美は、「平和なマンションで、警察官数名常駐すれば住民を不安にさせるので、護衛は私が断りました。私は大丈夫よ。それに護衛するといっても、いつまでするのよ。それより、その原因を排除したほうが確実でしょう?」と広美が護衛を断った理由を説明した。
生活安全課課長が部下に、「捜査一課の高木主任が襲われたそうだが、護衛は断ったらしい。高木主任らしいな。警察官も一般市民だ。高木主任が勤務時間外の時は、私達で護衛する。但し、高木主任には気付かれるな。怖い鬼軍曹から苦情がくるぞ。」と広美の事を心配して、隠密で護衛する指示をした。
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隆は納得したものの、広美が心配でしたので週刊誌に、“京都府警の鬼軍曹、竜神会に襲われる。”と掲載して、高島の顔写真も掲載して広く市民から情報収集して、高島逮捕に協力しようとしていた。
千里と芳江は井戸端会議で、「週刊誌に広美さんが襲われたと記述していましたが、大丈夫ですか?怪我しているけれども襲われた時に怪我したの?」と広美の事を心配していた。
広美は、「大丈夫よ。でもこんなにデカデカと掲載しなくてもいいのに。」と恥かしそうでした。
千里が、「記者名は高木隆と書いていますが、ひょっとして広美さんのご主人さまですか?」と確認した。
広美が、「ええ、そうよ。逃走した犯人の高島の顔写真を大きく掲載して、目撃情報を収集しようとしているらしいわよ。」と説明した。
芳江が、「解ったわ。この人を見かければ警察に通報するわ。」と犯人逮捕に協力しようとしていた。
広美は、「ありがとう。でも高島を発見すれば、通報する前にその場を離れてから通報してね。拳銃を携帯している可能性があり、通報している所を見つかれば危ないわよ。」と心配していた。
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広美が千里達と井戸端会議をしていると、近所の子どもが親に買ってもらった望遠鏡で、嬉しそうにマンションの中庭などを見ていた。
しばらくするとその子供は高島に気付いて、「あっ、週刊誌に載っていた人がいる。」と呟いた。
広美はまさかとは思いつつも、その子供に、「望遠鏡を少し貸してね。」と確認すると高島でした。
広美は望遠鏡を子供に返して、緒方係長にマンションで高島発見を報告して、三角巾を外して拳銃確認の上、千里達に、部屋に戻って施錠して出てこないように指示して、エレベーターで一階に降りて高島を捜した。
高島は、広美が京都府警の鬼軍曹だとも知らずに襲って後悔していたが、後の祭りでした。
エレベーターで降りようとしている事に気付いてやけくそになり、隠れて広美の背後から刃物で刺し殺そうとしていた。
隆はマンションの近くで高島の目撃情報がよせられた為に、同僚に警察へ通報するように依頼して急いでマンションに向かった。
マンションに到着した隆は、背後から広美が襲われようとしている事に気付いて、「広美、後ろ!」と叫んだ。
広美が振り返ると同時に高島が広美を襲った。
そこへ到着した渡辺刑事が、「主任!危ない!」と飛び出して腹部を刺された。
広美は、「渡辺君!」と抱えた右手に血がべっとり付着していた。
広美は血痕が付着している刃物を構えている高島を睨み、警棒を構えて、「刃物を捨てなさい!隆!救急車呼んで!」と叫び、渡辺刑事を救おうとしていた。
高島は、「死ね!」と襲いかかりましたが、広美が警棒で刃物を叩き落として、高島と取っ組み合いになった。
そこへ須藤刑事が警官隊を率いて到着して、高島を殺人未遂の現行犯で逮捕した。
高島は、「俺は格闘技には自信があり組員を力で抑えてきた。そんな俺と互角に戦えるとは、さすが鬼軍曹だな。」と広美は名実ともに鬼軍曹だと納得していた。
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高島が連行されると広美は渡辺刑事を心配していた。
「渡辺君、確りして。」と傷口を押さえて、出血を少しでも少なくしようとしていた。
渡辺刑事は意識が薄れゆく中、「主任、お役に立てて光栄です。」と広美に伝えて意識を失った。
その後、広美達刑事の呼びかけにも反応がありませんでした。
広美は、「渡辺君!死なないで。」と渡辺刑事を確りと抱きしめて泣いていた。
やがて救急車が到着して警察病院に搬送されたが、救急車の中で心肺停止状態になった。
執刀した外科医は、「一命は取り留めましたが、心停止時間が長く、後遺症が残る可能性は否定できません。後遺症によっては、今後刑事の仕事はできなくなる可能性もあります。」と宣告した。
渡辺刑事が目覚めると、左足に感覚がなく動きませんでした。
検査後主治医より、「残念ですが、検査結果を確認すると、脳細胞の一部が死んでいました。リハビリをしても快復は期待できません。」と宣告された。
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渡辺刑事は退院後総務に移動になり、欠員補充で滋賀県警から後藤正子刑事が赴任してくる事になった。
前田刑事が、「後藤刑事の歓迎会は、主任はどうされますか?主任として出席されますか?芸者として出席されますか?」と確認した。
広美は、「前田君、あなたは男性に対する態度と女性に対する態度が異なりますが、滋賀県警から来る女性刑事はどうなのかしら?刑事に対する態度と芸者に対する態度が異なるのかしら。その両方を確認できれば、その人の事が大体把握できるわ。可能であれば芸者として出席して、そのあたりを確認しておきたいわ。」と提案した。
須藤刑事が、「そうだな。芸者のほっぺにチュウしても、怖い鬼軍曹のほっぺにチュウしないだろう。前田君も刑事と芸者に対する態度が異なりますね。その件で、真面目だとばかり思っていた前田君が、女たらしだと判明したのですね。」と笑っていた。
緒方係長が、「解りました。滋賀県警から刑事が赴任してくれば、歓迎会は鶴千代指名で芸者を呼びます。高木主任、君なら芸者が来ても場違いではなく安い宴会場を知っているだろう。予約お願いします。」と依頼した。
次回投稿予定日は、9月17日を予定しています。