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第二十七章 マンション住民、芸者体験する

マンションの理事長が初美と交渉した結果、マンション共有部分のホールで、広美が鶴千代として踊りを披露する事になり、今後、芸者の体験も理事長に申し込めば可能になった。

ある日、千里の隣人の塩崎芳江さんが、「千里、先日事件に巻き込まれた時に、京都府警の鬼軍曹を紹介してもらったと聞いたのですが本当なの?」と確認した。

千里は、「ええ、本当ですが、何か事件に巻き込まれたの?」と芳江の事を心配していた。

芳江は、「実は、芸者の体験を申し込んで、喫茶店で友達とその話をしていると、高校時代の不良少女も偶然その喫茶店にいてその話を聞いて、“生意気そうに、何が芸者の体験だ!当日殴りこんで鶴千代共々リンチしてやる!”と脅されたのよ。私も怖いし、鶴千代さんに迷惑がかかるといけないので体験を辞退したほうがいいのかしら。」と悩みを打ち明けた。

千里は、「解ったわ。広美に相談してみるわ。」と携帯で京都府警に電話した。

芳江は携帯の呼び出し音がしている間に、「鬼軍曹の本名は広美さんですか?女性刑事だったのですか?」と確認していると広美が電話にでた。

千里は芳江の事を広美に相談した。

広美は、「大丈夫よ。何も心配しないで芸者の体験をしてと芳江さんに伝えて。」と千里を安心させた。

    **********

広美は芳江の芸者体験を京都府警捜査一課三係から鶴千代指名で予約が入った日にする事にした。

緒方係長と刑事達に芳江の事を伝え、「特別料金で対応しているのだから、そのくらいの事はしてね。」と不良少女が殴りこんでくる可能性がある事を伝えた。

西田副主任が、「当日は、鶴千代さんのほっぺにチュウした前田刑事が頑張ってくれると思いますよ。ね、前田君。」と前田刑事を睨んだ。

当日緒方係長は、「相手は不良少女だから拳銃は必要ないが、各自警棒は携帯して下さい。料亭は人目もある為に、移動途中に襲われる可能性は否定できません。高木主任、充分注意して下さい。前田君、念のために二人を護衛して下さい。」と指示した。

広美は芳江に、「今日は車で移動します。」とマンションまで迎えに行き、前田刑事の運転する覆面パトカーで置屋まで移動した。

芳江は、「この車は送迎専用車ですか?無線とかいろいろあるのですね。」とまさか警察車両だとは全く気付いていませんでした。

芸者姿になった芳江は再び覆面パトカーで料亭まで移動した。

料亭で芸者の体験をしている芳江は、「皆さん、アルコールは飲まれないのですか?」と不思議そうでした。

前田刑事が、「本当は飲みたいのですが、怖い鬼軍曹に止められていますので。」と広美をみた。

芳江は、「鬼軍曹に止められているって何故ですか?皆さん一体?」とお客様の事が解らなくなった。

緒方係長が、「不良少女の殴り込みの件、聞きました。私達は、たまに鶴千代さんをお座敷に呼んでいます。鶴千代さんが不良少女に絡まれているあなたの体験を、京都府警の刑事である私達のお座敷にセッティングしました。だから鬼軍曹からアルコールはきつく止められています。」と説明した。

芳江は、「京都府警の刑事さんだったのですか。私も噂で聞きましたが、鬼軍曹ってそんなに怖いのですか?」と興味本位で聞いた。

須藤刑事が、「そりゃ怖いですよ。こいつなんか丸で奴隷ですよ。」と前田刑事の肩を叩いて広美を横目でチラッと見た。

芳江は、「あっ、あなたは先程の送迎者の運転手さん?あなたも刑事さんだったのですか?」と確認した。

前田刑事が、「ええ、そうです。先程の車は送迎車ではなく覆面パトカーですよ。」と説明した。

    **********

何事もなく芸者の体験が終わり、帰る時に玄関で仲居さんが、「塩崎芳江さんはいらっしゃいますか?お電話が入っています。」と伝えた。

電話は芳江の母からでした。

「芳江、何度携帯に連絡しても連絡つかないから、料亭に直接電話しました。佳奈が塾から帰ってこないのよ。」と心配していた。

芳江は母に、「今、警察の人と一緒なので相談するわ。」と心配しないように伝えて電話を切り、先程刑事だと聞いたので緒方係長に娘の佳奈が塾から帰ってこないと相談した。

緒方係長は、「しまった、裏をかかれた。芳江さん、至急娘さんの友達に連絡して目撃者を捜して下さい。」と指示した。

電話を終えると芳江は、「複数の女の人に、お母さんが嵐山で怪我したので行きましょう。と車に乗せられて行ったそうです。」と緒方係長に伝えた。

緒方係長が、「解りました。西田君、対応して下さい。」と指示した。

西田副主任が、全ての刑事を嵐山に向かわせて手がかりを捜す事にした。

広美はため息をついて、「西田君、あなたはそうだから副主任止まりなのよ。私は当分主任を抜けらそうにないわね。これが誘拐でしたら、嵐山の地名を犯人が告げただけで、嵐山に行ったとは考えられないわ。これは私達を芳江さんから引き離す罠の可能性があるわよ。」と忠告した。

西田副主任は、「主任!何故そう思うのですか?」と広美の考えの根拠を知りたそうにしていた。

広美は、「予告までして何故襲ってこなかったの?何故娘を襲ったの?芳江さんに護衛がついていると気付かれたからでしょう。私もそこまでするとは思ってなかったので、隠密に護衛する指示をしてなかった私の油断もあったわ。」と反省していた。

西田副主任は驚いて、「主任、何故もっと早くそれを言ってくれなかったのですか?」とどうしようか困っていた。

広美は、「その時はその時よ。三人いれば、何とかなるわよ。」と落ち着いていた。

    **********

広美の思っていた通り、料亭から車で置屋に戻る途中、不良少女が運転する車数台に囲まれ、その一台に佳奈がいた。

佳奈は、「お母さん、助けて!」と助けを求めた。

不良少女は、「五月蠅い!黙っていろ。芳江、生意気そうに芸者の体験なんかしやがって!」と襲いかかって来たが、西田副主任と緒方係長に阻止された。

緒方係長と西田副主任と三人で対応し、緒方係長から連絡を受けた警官隊と刑事達が戻ってきて、誘拐の現行犯で不良少女数人を逮捕したが、主犯格の少女は佳奈を連れて逃亡した。

広美は芳江を覆面パトカーに乗せて、赤色回転灯を点灯させて、「こちら京都府警です。前の車、左によって停車しなさい。」とスピーカーで警告しながら追跡した。

人質が危険になる為、追い越しなど無理な追跡はせずに、スピーカーで警告を続けた。

止まる気配がなかった為に、付近を警ら中のパトカーに無線連絡して道路封鎖した。

不良少女は佳奈を人質にして車から降りて、「来るな!殺すぞ!」と佳奈に刃物を突き付けた。

広美が気付かれないように背後にまわり、ただの芸者として、現場を通りかかった芝居をして接近した。

不良少女は広美に気付いて、「鶴千代!芸者の体験だなんて、つまらない事をしやがって!」と刃物を佳奈から広美に向けた瞬間、広美は警棒で刃物を叩き落として佳奈を救い出した。

佳奈は、「お母さん!」と芳江に駆け寄った。

不良少女は広美に襲いかかったが柔道で簡単に倒された。

広美は警察手帳を提示し、「京都府警の高木です。誘拐の現行犯で逮捕します。」と手錠を掛けた。

    **********

芳江は広美の警察手帳を見て、「鶴千代さん、あなた千里と仲のいい高木広美さんだったのですか?千里は京都府警の鬼軍曹の事を広美と呼んでいましたが、まさか・・」と驚いていた。

西田副主任が、「そうです。彼女は私の上司の主任刑事で、京都府警の鬼軍曹です。」と広美の事を説明した。

芳江は予想外の鬼軍曹の正体を知り、「実は、私が芸者の体験を申し込んだのは、気分転換したかったのよ。主人がやくざに絡まれて困っています。助けて。」と相談した。

広美は、「今晩、ご主人は在宅していますか?着替えてから部下とお宅にお伺いしてもいいですか?」と困っている芳江の相談に乗ろうとした。

芳江は、「はい、在宅しています。ぜひお願いします。」と広美を頼りにしていた。

芳江は主人の携帯に電話して、京都府警の刑事さんが相談に乗ってくれる事を伝えた。

芳江の主人は、「早く来てくれ!数人のやくざが玄関のドアを叩いて、ドアを開けろ!と大声で怒鳴っている。」と怯えていた。

事情を聞いた広美は、「着替えている時間はなさそうね。全員で向かうわよ。」と不良少女の連行は警官隊に依頼して、至急全員で向かった。

マンションの芳江の部屋の階に到着した広美は、やくざの兄貴分に鶴千代として見覚えがあったので、緒方係長に説明して最初広美一人で向かった。

「あら、竜神会の高島さんじゃないですか?そんな大声を出すと他の住民に迷惑ですよ。」と話し掛けた。

高島は、「いや、ここの住民は話し合いもせずに閉じこもっているので、逃げられない事を強調する為にしているんだ。いくら鶴千代さんでも俺達のしている事に口をはさむとただでは済ませないぞ。」と広美を睨んだ。

広美は、「それは脅迫よ。」などと話し合っている間に緒方係長が芳江の主人に電話して事情を聞いていた。

高島は、「脅迫だ?いくら鶴千代さんでも許さないぞ!」と広美に殴りかかったが、広美に柔道で倒された。

他の組員が身構えたところへ緒方係長がきて警察手帳を提示し、「京都府警の緒方です。ここの住人に事情を聞きました。道を歩いていて肩が触れただけでこんな事をしなくてもいいだろう。今なら見逃してやる。ここから立ち去れ!今後ここの住民に手を出せば遠慮なく逮捕するぞ。」と睨んだ。

高島は、「鶴千代!警察にチクッたな。覚えているよ。」と広美を睨んで立ち去った。

芳江夫婦は、「ありがとうございました。助かりました。」と一時はどうなる事かと思っていたが、ホッとした様子で感謝していた。

広美は、「いまのやくざがまた絡んできたら、私に連絡してね。」と安心させて、やくざが立ち去った事を確認して広美達刑事も帰った。

翌日不良少女に、芸者の体験をしただけでなぜ誘拐までしたのか、その理由を問いただした。

その結果、不良少女のリーダー格の岸川茂子が芸者になろうとして置屋に行ったが断られたので、それ以来、芸者を恨んでいたとの事でした。

帰宅後、母に岸川茂子の事を確認すると覚えていた。

初美は、「確かに数年前、岸川茂子と名乗る少女が芸者になりたいとここに来ましたが、言葉使いは悪いし態度も悪いので、それを治してからもう一度来なさいと断ったわ。だって私の事をおまえと呼ぶのよ。それもタバコを吸いながらね。」と当時の資料を見ながら説明した。

翌日広美は岸川茂子に、「あなたが訪ねた置屋に確認しました。言葉使いや態度を刑務所でみっちり仕込んでもらいなさい。出所後、まだ芸者になる気だったら私のところへ来なさい。私が置屋の経営者に話をするわ。」と希望を持たせた。

帰宅後、母に岸川茂子の事を説明した。

初美は、「そんな無責任な事言わないでよ。本当に来たらどうするのよ。」と心配していた。

「芸者見習いとして採用すればいいじゃないの。」

「芸者の中に前科者がいると噂が広まればどうするのよ。他の芸者まで白い目で見られて疑われたらどうするのよ。」

「その時はその時よ。ここに来てから考えましょう。」

「ったく、無責任なんだから。この置屋を預かっている私の身にもなってよ。」と不愉快そうでした。


次回投稿予定日は、9月14日を予定しています。

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